ロアのダンジョンソロ攻略配信①
「皆様、こんにちは」
村正のチャンネルで、まさかのタイトルの配信が始まった。ただ視聴者数は普段よりも多い。予告の段階から、間違いなく神力のお披露目だと見込んだ人が多かった結果、大勢の視聴者が待機することになっていた。
画面には珍しく、ロアと村正が揃って映っている。
“きちゃ”
“待ってた”
“遂にお披露目だな”
“ロアちゃんメイン回!”
コメント欄も盛り上がっていた。ロアは基本カメラ役に回ることが多く、こうして配信に映ることが少ないからだろう。
「今回の配信は、僭越ながら私がダンジョンの攻略をさせていただきます。今回訪れたダンジョンは渋谷のダンジョン。富士山とまでは言いませんが、中が広くモンスターの数が多く、比較的難易度の高いダンジョンとなっていますね」
ロアはカメラに向かい淡々と説明する。
“渋谷かぁ”
“めっさ近いな”
“都会だなぁ”
“今いる”
“挑戦中ニキは集中してもろて”
“命に関わるからなw”
「私達がいるのは深層になりますが、道中他の階層にはたくさんの方がいらっしゃいましたね。広いので擦れ違ってもわかりづらいかと思います。それはそうと、探索中に配信を観るのは如何なモノかと思いますよ」
ロアはコメント欄に反応しつつ、きちんと“ながら探索”の注意もした。
「皆様もなんとなくわかっているでしょうが、今回は私が授かった加護『デウス・エクス・マキナ』をお見せしたいと思います」
「俺はただの付き添いですね。ロアも今回のことがあって探索者の資格を取ったんですが、アンドロイドが探索者になるケースが初だったので、ダンジョンに挑む時は所有者同伴でって言われちゃったので」
「ご足労をおかけします、マスター。撮影はドローンで行います」
“世界初の探索者アンドロイドか”
“随分昔に、機械でダンジョン攻略できないかって試みあったな”
“魔法が使えない機械じゃ歯が立たないっていう結論になったヤツな”
“所有者同伴は責任問題のためかな?”
“特例に重なる特例”
“こいつら特例ばっかだなw”
配信の内容について説明して、カメラに背を向ける。村正もカメラの画角外に出て、ドローンの横に並んだ。
「では参りましょう」
歩き出すロアの背中を映し出して、配信の本題に入る。
ロアが向かう先は開けた場所。渋谷のダンジョン内装は道があまりなく、だだっ広い。大きな広場があって、その中にモンスターが屯している。
1つの階層毎にいるモンスターの数は変わらないが、広場に集まっているため非常に多く見えるのだ。
しかも1度戦闘を開始してしまえば騒ぎを聞きつけた他のモンスターが加勢してくるため、対多数戦を強いられる。
大量のモンスター相手に無双する絵を作れることから配信者にも人気のダンジョンとはなっているが、逆に言えばそれができなければ攻略が難しい。
村正以外の4人は当然のようにソロ攻略しているが。
“渋谷で見せるってことは殲滅タイプなのか?”
“あの凪咲ちゃんが同じくらいって言ってたから楽しみ”
“でも『デウス・エクス・マキナ』って機械仕かけの神とは言われてるけど実際には神じゃないんだよなぁ”
“簡単に言えば超展開の意”
モンスターが見えてくると、ロアは足を止めた。
「それでは始めましょう。――『デウス・エクス・マキナ』」
全身が淡く発光し、青い静脈のようなラインが入り明滅する。
“光ってる!”
“やっぱ変身っぽいのはあるのね”
“ロアちゃんの神機能”
“神々しい”
「『デウス・エクス・マキナ』の能力は、私のAVADAとしての基本性能の向上。あらゆる機械の構造を読み取ることができるようになり、変形によって新たな機械武器を創造、異次元収納より出現させることができます。実際にお見せしましょう」
ロアは先に能力について説明してから、
「
彼女の掌から0と1が溢れ出し、剣のような形を構築する。弾けるように散ると機械の剣が現れた。ロアが握ると刀身にバチバチと青白い電撃が迸る。
“近接武器!?”
“雷の剣か”
“でも扱えるの?”
“カッコいい”
戦いに慣れていないロアが近接武器を使うとは思っていなかったのだろう。
「
呟いてから、困惑するコメント欄に答えるかのように駆け出す。あっという間にモンスターとの距離を詰めていた。
“うおっ、速っ”
“戦闘ができるように身体能力を上げられるのかな”
“戦闘力の向上って意味だと一番なのかも”
ロアの走る速度は深層に挑む探索者と比較しても遜色ないほどで、モンスターが彼女の接近に気づいた時には剣を振り被っていた。なにか反応を起こすより早く振り抜かれた刃は、モンスターの身体を焼き切る。更には斬られた身体に電撃が炸裂していた。
“えっぐw”
“深層のモンスターを一刀両断か”
“ロアの膂力も武器の性能も深層で問題なく通用するほどってことか”
その後もロアは3体固まっていたモンスターを容易く殲滅する。周囲のモンスターに気づかれてしまったが、ロアは村正のいるところまで戻ってきた。
「身体能力の向上については見ていただいた通りです。次は武器について、更にお見せします」
ロアの存在に気づいたモンスターの1体が咆哮する。威嚇ではなく伝令。敵がいるぞという合図だ。
これをされると難易度が一気に跳ね上がり、階層にいるモンスターが一斉に襲いかかってくる。
“呑気に話してる場合じゃないって”
“余裕そうだけど群れで来てるよ?”
“いよいよ殲滅力が見られるのか”
カメラの奥からモンスターが群れとなって向かってきている様は、視聴者にとっては恐ろしい光景に見える。
ただ対処できるからこそ咆哮を阻害しなかったのだろうとも思っていた。
「
ロアが呟くと、周囲の虚空が歪み機械の砲口が顔を覗かせた。
“おいおいおいおい”
“嘘だろw”
“異次元から出現ってこういうことだったの?”
魔法とも違う新たな戦法にコメント欄も盛り上がっている。
「殲滅開始」
ロアの言葉と共に砲口へと光が集束していき、一斉に砲撃が放たれた。
着弾するとダンジョンを揺るがすほどの衝撃が巻き起こり、モンスターの群れが爆散していく。
“すげー威力”
“何十体もいたモンスターが消し飛んだぞw”
“これは殲滅タイプですわ”
ロアの得た火力を目の当たりにして、コメント欄も強さに納得する。
「殲滅完了。マスター、次の階層へ行きましょう」
「ああ」
そうしてロアは様々な武器を披露しながらあっさりと深層を攻略していった。
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