パワフル鍛冶師
防具に続いて武器の紹介も行い、性能を見せていく。
「と、いう感じで虎徹ちゃんは鍛冶師として一流です。特に重装備を使った防具が得意ではありますが、軽装備も凄いんですよ。器用でもあるので、抜かりはありません」
「えへへー」
“かわいい”
“村正に褒められてる時ずっと嬉しそうで草”
“ローブも防具”
“おっきいけど手先器用なんか”
“意外に思えるけど鎧とか盾の装飾もかなり細かいからな”
重装備はゴツゴツとしたデザインになるのだが、衣装デザインの幅広さも凄い。装飾はセンスなので俺も学んではいるが、彼女の方が上手と言う他ないだろう。武器なら負けんが。
「武器についても一流の探索者が問題なく使える代物になってることがわかったと思います。そしたら……虎徹ちゃんの戦闘力か」
武器防具の性能は見せられた。彼女の腕は証明されたも同然だが、最後に戦闘力を見せておかなければならない。
「はいっ。戦うのは苦手ですけど頑張ります」
「ただどうやって見せるかなんだけど」
考えてきた案はある。だが本格的な戦闘はしづらい。
「まずは素振りでもいいかな。見ればわかると思うし」
「はいっ」
虎徹ちゃんには自分用の武器、ハンマーを持ってもらう。
285センチの虎徹ちゃんが持っても身の丈もある長さ、大きさだ。真っ直ぐに延びた白い柄の先に横になった円柱のような先端部分がついている。長さ約3メートル。虎徹ちゃん専用の武器だ。
「あぁ、最初は片手でね。普段は盾持ちながら振ることになるだろうし」
「わかりましたっ」
念を押しておく。虎徹ちゃんの戦闘スタイルは桃音と似た部分があり、盾や鎧で受けて反撃する。なので必ず片手は塞がった状態になるのだ。桃音は回復で無理矢理に受けるので、両手が空くのだが。
“ホントに桃音ちゃん以上のパワーがあるのかどうか……”
“片手なら届かないと思いたい”
“楽しみ”
「いきます!」
虎徹ちゃんが右手でハンマーを持ち上げて、振り被る。ぴたりと止めたところから、ぐわんと前へ振るった。
長い柄がしなり、振る力としなりが戻る力が合わさって正面の虚空を叩く。
空気を叩いたはずなのに、音が聞こえてくるかと思うほどの衝撃波が放たれる。床が抉れて壁まで衝撃が飛び激突して轟音を響かせた。
“うおおおぉぉぉぉぉぉ”
“とんでもねぇ威力w”
“マジでパワー凄ぇ”
“これ片手ってマ?”
“さっきの村正の武器と遜色ないんだが”
流石の豪腕。コメント欄も騒然としている。
「ど、どうでしたか!?」
「ばっちり。皆凄いって言ってるよ」
「えへへ〜」
“かわいい”
“でも強い”
“体格に見合う以上のパワーがある”
“頼もしい鍛冶師やで”
“そうだった、これで鍛冶師なんだったw”
「盾を手放せば両手でもっと強く振れるし、戦闘力としても充分だと思います」
「足を引っ張らないように頑張ります!」
「というわけで、虎徹ちゃんを富士山のダンジョン攻略パーティに入れたい人はお早めに。先着順になりますので、既に申し込まれているパーティが1つありますし、今回のことで取り下げがなければその人達かな」
“期待!”
“いよいよか”
“どこの置いてかれた双璧なんだ……?”
“ほぼ言ってて草”
「なので次の配信は顔合わせと盾砕きの試験をやることになりますかね」
「よろしくお願いしますっ」
パーティメンバーは既に貰っているが、なかなかにいい面子だと思う。虎徹ちゃんが欲しい理由もはっきりしている。メンバーの情報、人となりについては凪咲と牙呂に確認を取っているので問題ないだろう。協会も協力してくれていることだし。
「さて、配信はこんなところで終わりかな」
「はいっ、ありがとうございます」
「で、さっき盾試す時に一番いい盾壊しちゃったでしょ? お詫びと言ってはなんだけど、一緒に盾造ろうか?」
「っ!」
“片目だけでめっちゃ嬉しそうなのわかるw”
“なにそれ見たい”
“配信しないの?”
「はいっ! 是非お願いしたいです! まだオリハルコンの多重構造はできてなくて、マサさんみたいに魔力を緻密にコントロールできればいいんですけど……」
「その辺は経験だろうし、これからだよ。折角だからオリハルコンの多重構造盾、造ってみようか」
「はいっ!!」
“化け物盾出来そうで草”
“虎徹ちゃんワクワクしてるなぁ”
“いつかは自分で造りたいんだろうけど、それよりもマサと一緒にできることが嬉しそうw”
“おっきいのになんだこの小動物感”
「じゃあ、配信は終わりでーす」
「お疲れ様でした」
“乙”
“お疲れ”
“いい面子で挑めることを祈ってる”
というわけで配信は終える。それから虎徹ちゃんの家に行って工房を借りてオリハルコン多重構造の盾を造ってみた。と言っても俺はオリハルコンに魔力を込める手伝いだけで、主導は虎徹ちゃんだ。
オリハルコンと5トン金槌の間で餅を捏ねる役目をしているような気分だったが。
虎徹ちゃんが最近造った武器など色々なモノを見せてもらい、大いに盛り上がった。やっぱり同じ鍛冶師だからか話が合う。
久し振りに親父さんとも会ったが、相変わらず厳つくてでかい。いや、虎徹ちゃんの方が大きいんだけど。
夕飯をご馳走になったが、親子3人が大きくて家具もそれに合わせているので、なんだか巨人の家に来たような感覚だった。
毎回のことなんだけどな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます