下層を突き進む

「そういや、下層って災害行進モンスターパレードを思い出すよなー」

「確かに。配信で初めて視聴者見返したんだからね」

「奏ちゃんの連れ、くらいの認識だった時ですねぇ」


 凪咲が一躍有名になったのは、配信で遭遇したモンスターの群れ相手にがんがん魔法叩き込んで殲滅したのがきっかけだった。

 それまでは異常な強さを誇る奏の友達、配信に繋ぎ止めてくれてる子って感じで。ダンジョン攻略も奏がどんどん攻略していくのをカメラ持って追いかけるだけだったから仕方ないだろうが。


 奏の友達が普通の探索者なわけないだろうに。


“雑談しながら激強モンスターを狩っておりますwww”

“とんでもないモンスターの群れ相手にするの慣れてて草”

“階を進む毎に強くなってるんです、本当なんです;;”

“化け物モンスターより化け物www”

“相手は強くなるけど、その分こっちも対処してるんだよなぁ”

“実力、技量は当然として、手札が多いのが強すぎるな”

“牙呂の速さ、奏の斬撃、凪咲の魔法、桃音のぱわーと回復、村正の鍛冶と即興鍛冶の幅広さ、ロアの料理洗濯風呂などなど”

“必要なモノを6人が高次元で揃えてるからこその余裕よな”

“実際、強みは↑の通りだけど、他のことができないわけじゃないのもある”

“それな”

“牙呂も攻撃力が低いわけじゃないし、奏ちゃんも遅いわけじゃないって感じで”

“全てが高次元な上に特化してるモノが世界屈指レベルなんだよなぁ”

“なんかあれ、世界レベルの探索者で最高のパーティ組んでみた、みたいな”

“わかるwww ぼくが考えた最強の探索者パーティって感じするわwww”


 下層は無事に第一階層を突破。続く第二でわかったが下層はこういうモンスターが大量に出てきて殲滅すると次の階層へ行けるという仕組みになっているようだ。

 同じような画面が続いてしまって視聴者を退屈させてしまうかと思ったが、出てくるモンスターも多種多様だったのでそんなことはなかったようだ。


 あと雑談してて余裕そうというコメントがあったが、別に余裕ではない。結構ギリギリで戦い抜いている。まぁここにいるのは大体が戦いを楽しめる人種なので、色んなヤツと戦えて嬉しいっていう気持ちの方が強いかもしれない。

 俺も色んな素材が手に入って嬉しいし。


 ただ、一階層毎に全力戦闘を強いられるというのは非常に疲弊する。


 一階層毎きちんと休息を取って挑んではいるものの、各階層で消耗した分が全て回復しているわけではない。だから俺が隙を見ては鍛冶をすると言って回復に努めてもらっている。実際武器の消耗も激しい。第二階層で奏のオリハルコンの剣が折れてしまっていた。


 とはいえ時間をかけつつも第十階層まで順当に突破することができた。


「ってことでしばらく休んで、万全の状態で下層のボスに挑んでくぜ。日程は次の配信で発表するから、数日かかると思ってくれ」


 5人で話し合った結果を牙呂が視聴者に向けて伝える。


 鍛冶をするので数日は絶対にかかるというのと、疲労が蓄積しているというのと、勢いはいいので一旦落ち着いて慎重になろうというのと。

 色々と真面目に話し合った結果だ。こういう話し合いを配信に乗せても面白いかもしれないが、あくまでエンタメ。いつか裏話として出せるかもということでロアに録画はしてもらっているが。


「下層のボス、なにが来ると思う?」

「もうわかんないよね。下層はモンスター出すぎ。というかこのダンジョン規則性ないじゃん」

「いっぱい出てきそう」

「あるかもしれないですねぇ。これまでボスは単体でしたしぃ」


“マサの鍛冶をBGMに雑談してて草”

“雑談ってか結構大事な話よな”

“って言っても全然予想つかん”


「人類初の到達だし、なにが出てくるかわからん状態だ。雑談って感じで気軽に出していってくれ」

「これまでのボスがエンマシュラ、人型でしょ。あと白の純色竜の上位種、ドラゴン。他に出てきそうな強いボスっていうと……」

「いすぎてわかんねぇなぁ」

「ボスではなく部屋にギミックがあるパターンもありますよねぇ」

「魔法禁止だけはやめて欲しかったわ……」


“ギミックはマジ勘弁”

“魔法禁止のボス戦はガチでひやっとしたからな”

“牙呂が駆けつけてくれて良かった”


 配信で凪咲がソロ攻略した最奥のボス部屋が、魔法禁止のギミックのある部屋だった。そのせいで凪咲の命が危ぶまれた時があったのだ。ボス戦は加勢ができるので、最速で駆けつけた牙呂が寸でのところで助けるということがあった。

 今でも屈指の神回として語られる配信ではあるが、同時に未攻略のダンジョンをソロ攻略することの危険性を知らしめた配信でもある。


 それ以来、奏と凪咲はソロ攻略時にもカメラ担当ということでもう1人がついていくことにしていた。


 そのままああでもないこうでもないと、過去のボス戦を語り合いながら雑談を繰り広げるのだった。

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