いざ下層へ
鍛治を終えて眠っていた俺を待っていてくれたらしい。武器紹介もあるので配信で色々と話すようだ。
「おーっす。村正のヤツが目ぇ覚ましたんで配信始めるぞー」
「悪いな、待ってもらって」
「オレの武器造ってもらってんだから当たり前だろ。じゃあ、とりあえずお前の造った武器を紹介、オレにくれ。金は言い値で払う」
ということだったので、カメラの前で造った武器を発表する。今回も二刀だ。
「まずこちら。純色竜を素材にして造った剣。時間操作を一部可能とした剣だ。斬ったとこの時間を遅延、停止、加速させられる。あとは使用者自身の加速だな。攻撃力ってよりサポート寄りかね」
「おおう……。なんとなく予想してたが、時間操作と来たか」
牙呂に純白の剣を渡す。
“時間操作きちゃ!”
“普通に強くて草”
“時間操作できる武器ってあったっけ?”
“有名なのは時空断裂魔剣クロノスフィアだな”
“時間と空間を切り裂く伝説の魔剣じゃねぇかw”
「で、もう片方。時間の相方ってなんだろうなーって思いついたのが空間だったから、色んな素材掻き集めて空間操作の剣にした。つっても空間ごと切り裂くってだけだな。防御無視攻撃ができると思ってくれ。魔力のぶつかり合いで防がれるけどな」
「なんとなくわかってはいたが、伝説の魔剣参考にしてんじゃねぇか!」
「それしかぱっと思いつかなかったんだから仕方がない」
“双剣版クロノスフィアってこと!?”
“ここに伝説の魔剣レベルの武器造る鍛冶師がいまーすw”
“思いついても造れねぇんだよな、普通は”
「時刻断剣クロノスタシスと空虚裂剣スフィアエルム。名前までクロノスフィアから持ってきてるが、名前負けはない性能だな」
「わかってるよ」
“マサ君笑顔で伝説の魔剣に負けてない言うてるわwww”
“実際能力聞くとそのレベルw”
“自信満々だなぁ”
コメントで流れてきた魔剣にも負けない性能の武器が造れたと思う。
「あ、で奏にも予備の武器追加な」
「ん。ありがと」
「白竜剣イルキュラス。いつも通り切れ味と頑丈さだけの剣だ」
「ん。いつもありがと、マサ」
“あれ、牙呂君だけじゃなかったんかw”
“3本造ったってのか、1週間でwww”
“化け物鍛冶師じゃねぇか”
日付は気にしていなかったが、どうやら1週間くらいだったようだ。1ヶ月は経ってるかと思ってたが。それだけ気合いが入ってたってことか。
「よし。じゃあ新しい武器も手に入れたし、下層に行くぞ!!」
“きちゃあああああああ”
“ようやくか”
“人類未踏の地へいざ”
“期待しちゃう”
牙呂の宣言にコメントが盛り上がっている。俺達の方は事前に確認していたので驚きはない。
そして俺達は、富士山のダンジョン下層へと足を踏み入れた。
「あん? これは……」
階段を降りて目の前に広がる光景を怪訝に思う。
幅も高さもある大きな通路が真っ直ぐに伸びていたのだ。しかも奥には次の階層へ続く階段がある。
「ゴール見えてるじゃん」
「モンスターいない」
「あらぁ?」
「どういう場所なんだろな」
“なにもない階層ってこと?”
“それはない、と思う”
“拍子抜け”
“罠か?”
なにかが起こると確信して先へ進もうとする。次の瞬間、通路奥の床全体に無数の魔方陣が描かれた。
「なんだ!?」
「あれ魔法じゃない、召喚の!」
「いっぱい出てきた」
「なるほどぉ、そういう階層なんですねぇ」
魔方陣からモンスターが大量に出現してくる。しかも1体1体が強大で、見たことがないヤツもいた。
“モンスターの群れが出現した!?”
“おいおいおいおい”
“純色竜いね?”
“化け物が勢揃いしてらw”
“見たことないヤツばっかなんだが”
“ひいぃぃぃ”
“これ流石にヤバくない?”
“逃げて逃げて超逃げて”
中層でボスとして戦った白の純色竜らしきヤツが普通に2体。というか純色竜各種の上位種が2体ずついないか?
「やっば。流石にキツそうじゃね?」
「腕が鳴るってもんよ」
「斬るだけ」
「私の出番もありそうで良かったですぅ」
「どの武器から試そっかな」
俺達は5人横に並ぶように前へ出た。考えることは一緒のようだ。
“なんだこの背中”
“頼もしすぎるwww”
“絶望感あるのに絶望してない”
“最強の5人感ヤバい”
「5人全員全力で殲滅! 作戦は以上だ! 異論反論は?」
「「「「なし」」」」
「よっしゃ! やってやろうぜてめえら!!!」
牙呂の合図でそれぞれが動き出した。もちろん相手も黙ってはいない。
純色竜の上位種達が飛び、前に出て一斉にブレスを放とうとしていた。牙呂と奏は既に接近しに行っている。
「そのブレス、俺が貰うな」
俺はブレスが来る正面に待ち構えた。
「マスター、危険です」
ロアが警告してくる。確かに1体であれだけ苦戦した相手と同等のドラゴンが8体。厳しいと思うのも当然だ。
「大丈夫だ、ロア。一切通さねぇから」
「はい、マスター」
“マサかっけぇ”
“とぅんく”
“マサがロアちゃん口説いてら”
“奏ちゃん離れてて良かったなw”
“でも実際いけんのか?”
両手を前に出してブレスを受ける準備をする。魔力を集中させた。そして8体からブレスが発射される。ほぼ同時、有り難いことだ。
俺はそれらを魔力で受け止めると、素材として利用する。
その間に凪咲は魔法の詠唱を開始していた。俺が受けられるとわかってのことだろう。
「材質――ブレス。形状――大剣」
“マジで受け止めてる!?”
“全部純色竜の上位個体だろうにwww”
“バカげてるなwww”
「構築完了――純色大剣」
ブレスを素材にして、8色の大剣を引き抜き構築を完了する。俺はそれを思い切り振り抜いた。
「お返しだ!」
剣から8色のブレスを統合したような斬撃のビームが迸り、飛翔していた厄介な方のモンスターを一掃する。
“いったあああああああ”
“おおうw”
“ドラゴンやら飛んでたヤツが一気に減ったぞw”
“まさあああああああ”
地上の方がモンスターは多い。だが後に控えたヤツのことを考えれば空中にいるモンスターが邪魔になる。
「お膳立てご苦労様! いくよ、最大最強!! ――
凪咲の魔法が完成した。群れの中央でヒビが入ったかと思うと、それが一気に広がっていく。やがて全体に広がり、盛大な破砕音を響かせて砕け散った。と同時にそこにいたモンスター達も砕け散る。
大規模空間破壊魔法と言われるモノだ。凪咲は空間魔法を極めた魔法使いでもあった。
“一気にいったああああああ”
“半数逝ったなwww”
“魔法最強! 魔法最強!”
“空間が壊れる、相手は死ぬ そんな理不尽な魔法だってのに半数が生き残ってることが異常”
俺は凪咲の魔法の最中に復活しようとしていた白竜の片割れの魔方陣を時間を素材にして造った矢で破壊しておいた。もう1体も殺られたようなので魔方陣を破壊しておく。ただ他の純色竜も異なる方法で復活しているようだ。厄介なのは変わらないな。
“中層ボスさん、瞬殺;;”
“いやむしろ復活ありで考えたら他のドラゴンがヤバいんじゃないか?”
“仕組み解くとこから始めないとだしな”
“減らしはしたけど、厳しい戦いには変わりないのか”
復活の仕方から倒す方法を考えることも必要だが、先に相手の攻撃だ。
“うぇ!?”
“あれってまさか……”
“隕石!?”
“凪咲ちゃんのヤツじゃん!”
“こっちに来るってなるとマジで怖すぎ”
相手側に魔法使いのモンスターがいたらしく、魔法が完成した。数が多いとどんなモンスターがいるかもわからなくなるからな。
しかも使ってきたのが隕石を降らせる魔法。多分デストロイ・メテオだ。
「凪咲ちゃん、お願いできるぅ?」
「うん、いいよ。いってらっしゃい」
桃音が言って、凪咲が無詠唱でテレポートの魔法を使用する。桃音は一瞬にして隕石の前に転移した。
「えーいっ」
隕石に向かってメイスを振り下ろす。その衝撃で隕石が砕け散り、砂と化して地上に降り注いだ。
“流石のぱわー”
“砂の弾丸!?”
“うわえぐ”
魔法への対処と敵への攻撃を同時に行っていた。流石だ。桃音は群れの近くに転移していたが、落ちる時もメイスを振り下ろして追加の被害を出していた。
「牙呂、ちゃんと使いこなしてるな」
群れの状況を見て思ったが、一部の時間が停止しているらしく固まっている。
「――斬る」
奏も到着して早々に魔力を込めた斬撃を放っていた。他のヤツのそうだが一気に数を減らして厄介なヤツを炙り出すのが目的だろう。
奏の斬撃で面白いように斬れていくが、斬れても倒れない、復活するヤツが何体かいた。そういうのが俺や凪咲、桃音の倒すべき相手だ。
というか桃音は倒すべき相手を見つけたから接近したんだろうな。今も迫る敵をメイスで撲殺しながら突き進んでいる。
しかし、牙呂の案はいいな。動きを止められるヤツは時間停止で止めておき、厄介そうなヤツからスフィアエルムで切り裂いていくと。
それなら俺も、時間遅延の武器を造って振り回せばいいんじゃないだろうか。
俺はそう思って時間を素材に大剣を造り、時間遅延効果のある斬撃を全体に放った。見事に動きが遅くなる。
「おぉ、こういう使い方もできるな」
“とんでもねぇことしてるんだがwww”
“時間を素材に触れた敵を遅延する斬撃放つ武器造ったってことで合ってる?”
“敵全体の動きを緩やかにするデバッファーか”
“強すぎナーフ案件”
“草”
“1発限りとはいえ時間なんて常に流れてるんだから、実質無限回使えるってことじゃん?”
“なんなんだこいつw”
“群れなのが裏目に出てるなwww”
そうしてがんがん敵の数が削れていった。
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