100億円の武器造ってみた
「はいどうも、村正です」
「画面外からマスターを映す、ロアです」
“きちゃ”
“待ってた”
“タイトルのインパクトよwww”
“一体どんな素材使うんだ……?”
今回は我がチャンネルで、配信での鍛冶を実際にやっていく。
「今回はタイトルとサムネイルの通りなんですが、100億円の武器を造っていこうと思います」
“いぇーい”
“説明求む”
「マスター含めた5名で富士山のダンジョンへ挑む準備の一環となります。4名の方々にそれぞれ予備で2本武器を造る必要がございまして、その内の1つをこれから造っていきます」
「どうせなら思い切り素材突っ込んだ最高傑作でも造ろうかと思いまして。あ、因みに100億円ってのは素材なんかの合計金額で、利益を出すと超えますが些細な問題ですね」
“ひぇ”
“つまりこれから100億超えの武器が出来上がるってわけかwww”
“わくわくっ”
「今回造っていく武器は、牙呂用の二刀です」
“牙呂の戦場:頼んだ!”
“ご本人登場w”
“ってことは牙呂君これ買うんかwww”
“儲けてまんな”
「おう、牙呂。まぁゆっくりしてけ。ということで、予めどういう武器を造ろうかは考えてあるので、素材がこちらになります」
俺の差した方をロアが見てカメラに映す。
“色々あるな”
“牙呂君の二刀は対になるモノが多いし、今回もそんな感じなのかな?”
“ヤバい素材並びすぎだろwww”
“見たことない素材ばっか”
「それじゃ、長丁場になると思うんで早速始めちゃいますね」
「マスターは作業中、集中しますのでコメントを拾うことができません。私ロアの方で読ませていただきます。解説を交えていきますので、質問があればどうぞ」
“ロアちゃんよろしくー”
“鍛冶の工程とか詳しくないから助かる”
鍛冶をしているところを配信してくれ、という声も実は多かった。まぁそっちが本業だしな。実際、トップレベルの鍛冶師は動画撮影などしない。良くも悪くも職人気質な人が多く、俺も色々なければずっと裏方で終わっていたと思う。
ただ鍛冶の最中は集中して周りの音が入ってこないし人がいても気づかない。コメントを拾うこともできないので、誰かがいないと配信が成り立たないと思っていたのだ。
そこで、ロアの参戦により問題点が色々と改善されて実施できるようになったと。試作品の鍛造もやってはいたが、あれは動画撮影後に編集して削ってのモノだった。そうでないと配信にならないのだ。喋りながら別作業とかできるわけないだろ。
「さっき言ってる人もいましたが、牙呂の二刀は夫婦剣。つまり2本で1つの剣なんです。そういうコンセプトで造ってるので、今回もそんな感じでいきます。因みにもう造ってある剣は風と雷なので、今使ってる炎と氷以外がいいかなと思って。他の属性でもいいんですけど、今回は決めてきました」
「どのような剣になさるのですか?」
「腐蝕と浄化」
“えっ”
“ふしょくとじょうか?”
“理解できない単語並んでて草”
“実際訳わからん”
「腐蝕とは……モンスターで言うところのアシッドドラゴンのような、あらゆるモノを溶解する効果のことでしょうか?」
「そう、それ」
「では浄化は、それらの異常を排除する効果でしょうか」
「正解」
“アシッドドラゴンって確か、その腐蝕効果に自分が溶けながら生きてるヤツだよな”
“ドロドロの見た目したヤツだな”
“それを武器にするってなに?”
“浄化の剣で効果相殺するとか?”
「マスター。浅慮な私に教えてください。腐蝕効果を剣に宿すと剣が徐々に腐蝕されていってしまいます。いくら浄化の剣を造ったとしても、寿命の短い剣になってしまうのではありませんか?」
「いや、当然の質問だよ。ただ考えてみれば簡単な話だ。腐蝕しない素材を使えばいい」
「それは……オリハルコンですか?」
手袋を嵌めた手で素材の1つを掲げて見せる。
“オリハルコン!?!?!?”
“伝説の鉱石か”
“納得はいくけど、そもそも加工が難しいって話じゃなかったか?”
“1キロ20億はするエグい鉱石使うんかw”
“はえー実物初めて見た”
「そう、オリハルコン。コメントでもありますが、1キロ当たり20億円くらいですね。魔力を持つ鉱石の中では最上級の代物で、ほとんど市場に出回っていません。ホントなら全部オリハルコン使った武器にしたいくらいですが、材料が足りないので一部に使うくらいしかできませんね」
“全部オリハルコン武器とかエグw”
“出回ってる総量が少なすぎて幻の素材だしな、仕方ない”
「マスター。オリハルコンが加工可能という情報は出ておらず、鉱石マニアが飾るために欲しているという情報しかございませんが……」
「表に出てないだけだな。加工方法を発明した鍛冶師にも回すが、優秀な鍛冶師には協会もより良い武器の開発のために回してるだろうし。ま、そもそも形変えられないって話が出てるんだからなに試したって無駄になる可能性高いんだけど、触りたくない気持ちもわかる」
「今回オリハルコンを使うということは、マスターは加工できるのですか?」
「ああ。まぁ俺のやり方だから、他にオリハルコン加工する鍛冶師がいても、これから見せる方法とは違うかもだけど」
“あっさり肯定してて草”
“オリハルコンの公開加工とか歴史に残る瞬間だろこれw”
“そら協会も重宝しますわ”
「じゃあそろそろ始めるか。オリハルコンの加工は時間かかるので早速始めまーす。ロア、後は頼んだ」
「かしこまりました。では皆さん、私と一緒にマスターの雄姿を眺めましょう」
“早速いくのかw”
“ヤバい、ドキドキしてきた”
“壊れない鉱石つってもダメになることはあるんだよな? 怖い”
“叩いても熱しても形変わらない鉱石をどう調理するんだ?”
後のことをロアに任せて、俺はオリハルコンを手に鍛冶に取りかかる。
オリハルコンを金床に置き、左手のペンチで挟み込んで固定する。それから右手のハンマーを振り上げて集中する。両手から道具に思い切り魔力を込めていく。ペンチ越しに魔力が注入されたオリハルコンが光り輝き始めた。
俺はその動きを見逃さないよう目を見開きながら、ハンマーを振り下ろしてオリハルコンに叩きつける。
カーン、と澄んだ音が響く。オリハルコンの叩いた時の音はどんな鉱石よりも綺麗で澄んでいる。叩いた瞬間、魔力と魔力がぶつかり合って波紋が散る。それから、何度もハンマーで、一定間隔で叩いていく。
まだ下準備の段階。だが最初のここで間違えれば全て終わり。
鍛冶師としての本領発揮だ。
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