14.会議室
医務室に行って、ベッドに座った。
起き上がった下っ端君の頭に手を置く。
「よく生きて帰ったね」
「……うす」
「すぐに義手を作らせる。代金に見合った働きをしてね」
「あい……!」
「よし、じゃあ状況説明を聞かせてくれるかな」
報告資料を確認し、眉を寄せる。
「トイトの過激化が著しい……これじゃあ来月には全面戦争に発展しかねないや」
「どうしましょうか」
「……まずは交渉かなぁ。スイハの動きは?」
「今は縮小されていますね」
「………………嵐の前の静けさか、様子伺いか」
「コンタクト取りますか」
「……だなぁ」
ため息をついて、色々と確認する。
爆撃戦、銃撃戦、裏の支配範囲拡大に加え、表への接触まで。一回の爆撃戦で何百人の一般人が被害にあったか。何十人が死んだか。
トイトの無作法で、こっちまで悪名が付くのはなぁ。
「……手紙を。二通」
ということで、始まった会談。
政府中央館第二応接間に、左手の甲が折れているピステル社長と秘書、護衛三人。スイハ管理人と副管理人、付き添い一人、護衛二人。
んで、片方の肩が折れている政府部
あと殺せるというハンデを埋める必要がある。まぁ殺されたら速攻取り締まるので牽制し合っているのが現状だが。
「ようこそ中央館へ。前置きなんて面倒臭いのでやりませんよ」
「それがいい。……
「何?」
「聞いてなさい」
「ん」
「……トワイライトが過激化しすぎてる。スイハは縮小してるようだけど」
「とりあえず様子見の予定。これ以上暴れるならピステル誘おうかと」
左の目を黒い仮面で隠したスイハの管理人は律を見た。律は視線を受け取ると、頬杖を突いて微かに目を伏せる。
「あまり大騒ぎはしたくないんだけど。代わった瞬間喧嘩なんかしたら僕の腕が疑われる」
「でもトワイライトを放置はできないしこれ以上不必要に手を出してくるようなら戦争する他ない。……我々がやればピステルも無関係ではいられないし、イノンダイや他地区の組織も動かざるを得ない」
「政府は対処どうしてんの?」
「銃撃戦を見付けた瞬間射殺とは言っていますが。政府的には真っ向勝負上等ですよ?」
「……それが得策、か」
管理人が小さく呟くと、管理長の後ろに座っていた幼女が顔を上げた。幼女、三、四歳ほどの。紫の長い髪に青い目の、なかなか綺麗な顔立ちをした子。
「叔父様、どうしてトワイライトのボスと交渉しないの?」
「……交渉、できる?」
「んー……まぁ、参界者だし聞く耳は……ある、んじゃ……ない、かな……?」
「前佚世君がトワイライトと協力体制を組んでた。つっても単発雇われだけど。……佚世君が組んでたなら余地はありって感じじゃない?」
「スイハは縮小しちゃったから対談はできないなぁ〜」
「それが目的か」
「え〜?」
縮小した側が対談を提案しても、構図としては『負けた』側と『勝った』側。スイハが不利になるのは一目瞭然。
んでコイツらはそれを狙ったと。動きを抑えるために自組織が損を被らないよう、他組織に擦り付けられるよう。
「対談は政府がやりましょう。こちらとしても今神迎を取られるわけにはいかない」
「じゃトイトとの対談と佚世君への通達はお願いね!」
「え?」
「佚世君にも伝えておかないとあの辺りで暴れたら瞬間粛清されるからな。それがいい」
「それはご友人たちで……」
「僕この前追い出されちゃってさ?」
まぁ放置されたの方が正しいけど。
「私たちは行って嫌われるわけにはいかないからね」
「どこまでも保身的だね〜」
「保身すればするだけいざと言う時使えるものが多い」
「どーかな」
「私、佚世君にめっちゃ警戒されてるんですが……」
「ほらこうならないでしょ?」
「たしかにね〜」
そう言いながらおもむろに立ち上がる管理人と社長に慌て、管理長も立ち上がった。
「で、では! トイト対談と佚世君説得は引き受けましたので佚世君への報酬はお願いしますね!」
「え?」
「よし決定終わり解散!
「強引すぎて目が点になってる」
「それは叔父さんも。対談するぐらいなら報酬払う方がマシだよ」
ま、報酬の内容は対談する人にかかってるんで別にいいけどな。
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