第14話 『和戸尊の孤独』


 和戸尊は、養老渓谷の粟又の滝付近で、長らく動けなくなっていた。


 足や腕の骨折、肋骨の骨折。


 あちこちの、破損。


 付近で庵を結んでいた、謎の老師に助けられたが、この人は、かつては医師をしていたらしい。


 このあたりは、完璧に陸の孤島になり、外部との通信も、行き来も出来なくなっていた。


 赤血がいる辺りとは、距離自体はそれほどではなかったが、国の機能が無くなっている以上、宇宙に孤立しているようなものだ。


 食べられるものは、なんでも、料理したが、老師は実にザバイバルな人であった。


 

 『たんていなおもて


     おうじょうす


       いわんや


         あいぼうをや。』



 和戸尊は、赤血の生存の可能性は、ないと思っていた。


 しかし、その老師は、そういうことには、極めて無頓着に見えた。



 『養老の原野


    伊豆の島かけて、


      漕ぎ出でぬ


        人にも告げぬ


         粟又の釣り船』



 

 『妻もあらばとりてたげまし


    養老の山の


      嫁菜、食べ過ぎ。』



 和戸尊は、独身であった。


 あまりに、孤独だったのである。




 『地球滅ぼして


     なんの領土か


       くいものか。』

 



        🌍️

 


 


 

 


 

 

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