第6話 食いたいって言って無いだろ

「…さま…らおう…裸王様!」

 良い気持ちで寝ている所、ガクガク揺さぶられ起こされた。

 尋常で無い様子のジョップの顔がアップになった。

 緑色人の顔はなまじ人に近いだけに少し不気味だ!起き抜けにアップは心臓に悪い。

「ジョップ何だ?」

「裸王様!睡眠中失礼します!この滑空車が襲われて居り、危険な状態で有ります!」

「襲撃者は何者だ?」

「赤サソリ2匹に襲われて居ります」

「大トカゲのように滑空車で跳ね殺す事は出来ないか?」

「はい、試してみましたが効果あまり無かったです」

「取り合えず一匹に攻撃集中させ、ガンガンぶつけてみて」

「滑空車が破損しない程度やってみます、雨でも降れば…」

「ジョップ、赤サソリは水が苦手なのか?」

「砂漠では生死を分ける貴重な水ですが、ぶっかけると呼吸出来なくなるようで逃げて行きます」


「水が弱点か…ならば魔法で水のぶっかけやるぞ!」

 うまい具合に2匹纏まって居る。

「植木に散水イメージ!」

 強力水鉄砲が発射された。

❰キッシャー❱

「おう!効いてる」

 後退は苦手なようで退けず、かと言って進む事も出来ず2匹の赤サソリが苦しんで足掻いてる。


 散水魔法でびしょ濡れになりながら、ジョップが素早く赤サソリの毒尻尾を斬り飛ばして行く。


 5分程水をぶっかけ続けると赤サソリは振り上げた両爪を降ろし、倒れそうな体のつっかい棒のようにして何とか踏ん張ってる。

 控えて居たジョップが順にサソリの頭を斬り落とし、赤サソリはドット倒れ込んだ。


「ジョップ!見事な剣技だった!!」

「いえ、裸王様の散水魔法が素晴らしかったです!弱った赤サソリを倒すのは楽でした」

「ジョップ、この大サソリどうする?」

甲殻こうかくを特種な機具で切り取らないと、身を取り出せません、申し訳御座いませんが赤トカゲのように収納魔法ですか?保存お願いします!バルスムにも切断機具は有ります!到着すれば直ぐに食べられるように解体しますので、しばらくのご辛抱お願いします」

「分かった、収納しておく」


(食いたいと言って無いだろ!バルス世界には、ろくな食い物が無いな、トカゲはまだ我慢して食える、コリコリペッの酒も、もう気にせず飲める…が!何が嬉しくてサソリを喰う?)

 気持ち悪い食い物を不覚にも美味しく感じた自分に、少しいら立って居る。


 巨大ロブスターと思えば抵抗無いな、おぅ!旨い!と言って大サソリをむさぼり喰うのはもう少し先の話、今は「虫など何があっても食うものか」と思う羅恩だった。

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