第5話 収納に鑑定

 ソリスは、コロコロ草を砕き巧みに組み上げ火打ち石で着火、焚き火で大トカゲの肉を炙ってる。

「ソリスって王女なのに炊事が出来るんだな」

「料理は得意じゃ無いです、でもこの位は出来ないと生きて行けないよ」

「ふーん、偉いね」

「裸王様って変、こんなの出来て当たり前、ちっとも偉く無いです」


 コロコロ草の枝に刺した肉は、焚き火の火から随分離れた位置の地面に刺されている。

 バルス世界は日本の常識では生きて行けないって事か…焚き火で肉を炙るのも、技術が必要なんだな。


 肉が焼けたようだ、旨そうな匂いがして来る。

「裸王様、どうぞ」

 ソリスが焼き肉を串ごと差し出して来た。

 恐る恐るチビリ一口食べてみた。「あっ!本当に旨いな」


 大トカゲの焼き肉は、鶏肉とも豚肉とも違った独特の食感の肉で、程好い脂肪分の肉汁で旨味の素か味の素を振り掛けた様な旨くて柔らかい肉だった。

 ジョップが拳位の四角いパンの様な物を持って来た。

「裸王様、粕を練り込んだ携帯食です」

 四角い携帯食はシットリ柔かで、蒸しパンとは違った癖の無いチーズケーキと言った感じ、食べ易いが味わった事の無い食べ物だった。

「粕とは?酒粕の事か?」

「コメ酒の溜まり粕です」


 一斗缶サイズの材質不明の容器から、コップに飲み物が注がれた。

「これがコメ酒です」

 濁った得体の知れない飲み物だが、喉の乾きに我慢出来ず一口飲んでみた。

 僅かな甘味と酸味、酒気は弱く2~3%のアルコール分が含まれているようだ。

「これって濁酒どぶろく?軽くてゴクゴク飲める、旨いな!!」


 蒸し米をこうじで甘酒にし、それを寝かせて濁酒どぶろくにしたと信じよう…生米をコリコリクチャクチャぺっして壺に溜めた原始的酒造じゃ決して無い!!

(こう言う時は鑑定だ!出来るはず)

「鑑定!」

【米から酒造した酒】酒造方法、生米を緑色人女性がコリコリ噛んで酒造したもの。

(ぎゃぁ!!最悪!最も原始的酒造方法の酒だ!!)


 こんな赤錆の砂漠、湧き水のオアシスが在っても金け水で飲用に適さない、食わないでも水さえ有れば10日位は生きられるが、水が飲めなければ3日持たない。

 飲み水は、コリコリぺっの濁酒しか無い、脱水症で死ぬか気色悪い酒を飲むか…究極の2たく……気にせず飲むしか無いか。

「今更か!!もっと濃厚なコリコリぺっ、の粕パン完食してたよ!!…とほほ」


 トカゲとは言え唯一まともな食べ物、食べきれず殆ど原形の大トカゲを収納し、飲食物が多難なバルス世界の第一日目が終った。

収納魔法が珍しいようで「ら裸王様?赤トカゲが消えました!」

ソリスが不思議そうに聞いてきた。

「物を異次元空間に取り込む【収納魔法】見たこと無い?」

「シュウノウマホウ?ですか?見たことも聞いた事も無いです」

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