第3話 バルスの滑空車

 緑色人も、見慣れると化け物には見えなくなった。

 ただ皮膚が鮮やかな緑色で、腕が4本あるだけの普通の人達だ…人と言うより昆虫が進化した者?充分化け物だった。


(化け物達の裸の王様は嫌だぞ)


 緑色人男女の見分けは出来る、が個別の見分けが全く出来ん、困った事に皆同じ顔に見える。

「お前の名は?」

 側近か護衛か僕の世話焼き人か不明だが、常に僕の近くに居る緑色人に話し掛けた。


「裸王様!自分はアットと申します」

「アット、私の不在時はお前が王代理を勤めよ!」

「はっ!裸王様!光栄で在ります!王代理任命謹んでお受けいたします!!」

(よっしゃ!これで訳の分からん面倒事から逃れられた)

 人の姿をしている緑色人だが卵生と聞くとやはり昆虫人と言うか人とは違う気がする、そんな者達に何を指示すれば良いのか、国の統治なんて何をどうすれば良いのか考えられん。

 完璧に人に間違いないソリス王女を、送り届ける名目で赤色人の国に行くのが得策に思えた。



 どうせ徒歩の旅になるだろうが、ダメ元でソリス王女を赤色人の国に送り届ける方法をアットに相談した。

 裸で暮らす野蛮人とあなどって居たが予想外で、移動用滑空車が準備された。


 横開きの引き戸から四角い箱に入る、何かの革を張った座席は意外に座り心地が良い。

 モジャー▪ソリス王女が隣に座り、滑空車は滑る様に発進した。

 緑色人の集落を出ると辺りは荒涼とした砂漠だった。


 何故この箱が滑空するのか、運転手に原理を聞くと。

「バルス世界に充満するエナジーの内、第二エナジーを利用して居ります」

 と、言った意味不明の回答だった。

 意味不明でも実際地上1メートルを音も無く滑空してる、このまま何も無ければ赤色人の国に着けるはず。

 魔法の一種と思って置こう……そう言えば僕は魔法が使えるはず。

「モジャー▪ソリス王女、魔法の使い方知ってる?」

「カリヤ▪ラオ裸王様、魔法とは何ですか?」

「僕の事はラオと呼んで」

「裸王様、では私はソリスとお呼び下さい」


 絶世の美女ソリスと名前で呼び会う仲になれたが(呼ばれる意味が違う事に気付いて居ない羅恩ラオだった)、魔法を知らないソリスには実際魔法を見せる必要がある。


 ※羅恩らおの意味は羅漢らかん(人の身体のまま神仏に一番近付いた者)であり決して裸の王では無い。


「僕はドーテイ30歳魔法使えるはず」

 子供の頃からの思い込み【苔の一念岩をも通す】魔法はイメージが大切ライターをカチッとで火が灯り、水道の蛇口を捻るイメージで水がチョロチョロ、扇風機送風のイメージで風がソヨソヨ。

「ドーテイ魔法出来た!!」

「凄いです!裸王様、エナジーを思念で操作する方法、学者が理論上可能なはずって言ってたけど、出来る人見たこと有りませんでした!裸王様はお出来になられた!画期的な事ですわ!!」


 赤色人には学者も居るのか、エナジーと言うのが分からんが魔素と思えば良いだろう。

 滑空車は装置として発動する魔法と言うか魔道具と理解して間違い無さそうだ。

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