第34話 もしかして隠れハーレム主人公属性だったの?
「では、本日二回目の緊急招集ボタン発動!」
「反省会って言ってもね。もうさっきの話でだいたい終わってない?」
「桜ー! ノリ悪いー! 会議しようよー!」
獅子王さんがエアボタンを押した体勢のまま
「いやでもさ。マジでなくない? 兎野の事情も聞いたけどさ」
虎雅さんが俺を見て一呼吸おく。
すぐには口開かず、言葉を選んでくれているのが分かった。
昼食の時に軽く事情を説明したことが影響しているんだろう。
さすがに獅子王さんに話したほど踏み込んだ内容は伝えていない。
人の目を見て話すのが苦手、クラスのみんなと打ち解けたい、ということで獅子王さんに協力してもらっていると伝えた。
「まあ、レオナはともかく。あたしらとも普通に話せるし。あとはみんなの慣れと時間と……そうだね。タイミングじゃね?」
「うむぅ。何ごとも
虎雅さんの意見に、
「んんー……確かに。兎野君も同じこと言ってたし。桜やシズぽよともいい感じにふつーに話せてたし。兎野君、そこんところどう思った?」
そうだね、と獅子王さんに話を振られ、考える。
「二人と話しても息苦しさや緊張は感じられなくなってきたかな」
挨拶からほんの少し接していたし、獅子王さんの協力がなによりも大きい。居心地の悪さは消えている。
その違いの原因。
今までの俺の人生を振り返ってみると。
「母さんの……仕事の関係で女性の人と接することが多かったからかな。男性よりも女性の方が慣れているというか」
母さんのアシスタントさんは全員女性。
リモートで別々の場所で仕事をしているけど、月に必ず一度は俺の家で親睦を深めるという名目で飲み会が行われている。
中には高校時代からの後輩や、今は独立したけど同級生もいた。
そのせいもあって昔から可愛がられてたというか、からかわれていたというか……あれ? むしろ、追いかけ回されてたような記憶が……?
考えてみると
「兎野君ってもしかして隠れハーレム主人公属性だったの?」
むむむ、と獅子王さんが腕を組んでじっと俺を見つめてきた。
「違うけど……女性と話す機会が男性よりはるかに多いのは事実かな。話しやすいのは間違いないと思う」
近しい人と色々な面が似ていると、やっぱり最初の一歩が踏み出しやすくなる。
獅子王さんは……獅子王さん?
明るく快活な女の子とはあまり接してこなかった。これまた白雪と……一応母さんくらいだ。
「そのセリフ。男子が一生に一度は言ってみたいやつじゃね?」
「言う人によって感じが凄い変わりそうだけどね」
「兎野君の場合、女難の相が見える気が」
「それはできるのなら見えない方がいいかな……」
獅子王さんの意見に、
〈GoF〉でも一緒だったし、気がつけばリアルでも当たり前に、自然体で話せるようになった。
「うん。それも」
虎雅さんが俺たちに向かって指さした。
「とりまレオナも辛いだろうけど、あんまり兎野にべったりはやめときなよ?」
「え? なんで?」
「んー……まあ、いいか。陽と陰の極みがいきなり一緒にいたらさ。他の奴、特に男子は会話に入りづらいでしょ」
「なるほどっ。私と兎野君が一緒にいるとビッグバンにスーパーノヴァが生まれちゃうわけだねっ」
力説する獅子王さんに、虎雅さんが眉をひそめた。
「……なんて? 静子、翻訳」
「磁石のN極とS極がガッチリかみ合ってくっついて離れず、他の磁石が付け入る隙が生まれないマグネッツパワー的な感じかのう」
「ちょ!? 直球すぎる訳!」
「サクちゃむーそんなご
理不尽な一言に困り顔の豹堂院さん。
こほん、と虎雅さんは顔を赤くしたまま咳払いをした。
「まあ、だから、とにかく。兎野のことを思うなら適度な距離で、見守ることも重要だよ」
「なるほどっ! 前方彼氏面より、後方彼女面しろってことだねっ!」
「あーまあ……うん。そうだね。そんな感じ」
なんだか面倒な感じを隠さなくなった虎雅さんが俺を見る。
「もちろん、一番気をつけるべきは兎野だけど」
「そうだね。俺が当事者だし。気をつけるよ」
男子、女子、と区別したいわけじゃないけど、人間関係は俺が思っている以上に複雑で甘くない。
「まあ、別にずっと離れてろって言うわけじゃないし。話したい時は話せばいいし。しばらくの間だけ、ほどほどにってやつだよ」
「うん、分かった! しばらくは我慢してほどほどにするっ!」
獅子王さんが大きく頷く。
ならよし、と虎雅さんも頷いて俺に近づき、豹堂院さんも揃って距離をつめてきた。
急にどうしたんだろう?
「で、兎野。レオナになんか弱み握られたりしてないよね?」
「大丈夫ー? 悩みなら聞くよー? シズぽよ&サクちゃむの部屋オープンナウするよー?」
一転して二人とも凄い心配そうな顔で見つめてきた。
「え? 獅子王さんに弱みなんて握られてないけど……?」
「マジで? レオナってあれだし」
「これだしのう」
「ちょ! あれとかこれって言うなし!」
獅子王さんが二人の背後で両手を挙げて抗議し。
「じゃあ、オープンオタクで
「ごめんなさい。あれとかこれでいいです」
すぐにシュンと縮こまってしまった。
虎雅さんが気を取り直して俺の方に向き直る。
「あたしが今まで見てきた人の中でも、レオナって見た目だけは一番だからさ。初等部から内外問わず告られまくってたし。中三が一番大変だったかな。高等部から乗り込んできた人もいたし」
「ちょ、桜! 今その話する!?」
「今だからこそしておくべきでしょ。兎野に迷惑かけたいの?」
「うぐ。それは嫌だけど」
獅子王さんが本格的に背を丸めて縮こまる。借りてきた猫のようだ。
「俺は知っておきたいかな。獅子王さんがいいなら、だけど」
「うん。兎野君が知りたいなら。続けていいよ。どぞっ」
ありがとう、と獅子王さんに言うと、虎雅さんが話を再開する。
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