第3話「プリンセス、サラ」

〇登場人物紹介〇

サラ=黒蝶=ブラックフィールド 15歳

病弱な黒蝶の妹。育ちの良い雰囲気だが…


イメージイラスト・AIアプリ

https://kakuyomu.jp/users/ca8000k/news/16817330659536001725

🌛・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・🌛


木製の白い扉の前に着く黒蝶は、二回ノックをして中に呼びかけた。

「俺だ、サラ。帰ってきたよ」

「まあ、レオン王子様とご友人の方ですね。 さあさ、こちらへ。サラ姫様がお待ちです」

ドアが開き、女性の看護師が現れて、黒蝶と姫菜を部屋の中へ招いた。



◇ ◇ ◇


部屋は女の子の部屋らしくぬいぐるみや可愛い小物が多く、レースとフリルがあしらわれた豪華なダブルベッドには、可愛らしい金髪の少女がナイトドレス姿で座っていた。


「お兄様、お帰りなさいませ。お帰りをずっと、お待ちしておりました!」


「ああ、サラ。ただいま! 長く帰って来られなくてごめんな。」


黒蝶とサラは手を握り合った後、姫菜に向き直った。


「こちらが、朱井姫菜さんですのね。お母様からメールがありましたわ。」


「はじめまして、サラ姫様。私が姫菜です。」


姫菜が緊張して挨拶すると、サラがふわりと柔らかく微笑み


「そんなに緊張をなさらないで? サラで良いですよ。わたくしも、姫菜ちゃんって呼びたいです。できれば敬語もなしで」


「ありがとう。サラちゃん!」姫菜は緊張の糸が解けて、ふにゃりと笑う。


姫菜とサラは、すっかり打ち解けて話をし始めた。

黒蝶とサラを交互に見ながらフムフムと、改めて観察する姫菜。

「びっくり、双子なんだね! レオとサラちゃんは。」


メイドが紅茶を入れているのを黒蝶も、手伝いながら話す。


「そうなんだ。サラは未熟児でさ……。幼いころから病弱で、良く俺も母さんと看病したなぁ」


「今も心配かけてばかりで、ごめんね。お兄様」サラの瞳が涙でうるむ。

黒蝶は、そんなサラに近づいて彼女の肩を抱き、涙をハンカチでふいた。


「兄妹じゃないか、そんなことは気にするなよ。たった一人の可愛い妹なんだからさ」


「うふふ、ありがとう。お兄様」サラは泣きながら笑っている。


(レオってやっぱ、優しいな!)


姫菜はそう思いながら、ふたりをにこにこと見ている。

お茶の用意が終わり、紅茶とコーヒー。黒蝶特製マドレーヌ、姫菜の持ってきたお菓子がテーブルの上に並べられた。テーブルの上には、黒蝶がサラにおみやげに持ってきた可愛いキーホルダーも置かれている。


「う~ん。やっぱりおいし~い! レオまた、腕上げたね。」


「久しぶりに、お兄様のお菓子を食べましたわ。おいしくっていくつでも食べられますね。」


「そうか? サンキューな! 姫菜、サラ」


あっという間に楽しい時間は、過ぎ去り黒蝶と姫菜が元の世界へ帰る時間が来た。


「お兄様も姫菜ちゃんもふたり共、今日は泊まらないのですか?」


「ごめんな、明日は学校なんだよ。また来るからな」


「ごめんね、サラちゃん。また来るね」


「きっと、ですよ……」


サラは、部屋の出口まで行って黒蝶達を送っていたが、顔色が突然、すうっと青白くなり

そのまま、前のめりに倒れかかって来た。慌てて看護師やメイドが支える。


「サラ!」


「サラちゃん!」


サラはベッドに寝かされて、王室付きの医師の診察を受けている。

しばらくして姫菜、黒蝶、王妃達が部屋の中へ呼ばれた。

「サラ様は王子様が帰って来られて、ご無理をなされていたようですね…薬を打ちましたので、大丈夫だとは思いますが……。私では」


「そうだ、あの人ならサラの病気だって!」


黒蝶は、渋い表情をしていたが、突然思い立ち姫菜に相談した。

黒蝶の話しでは、狂い咲きの森と呼ばれる場所に、医学と魔法を得意とする、森の魔女が住んでいるという。その人なら、サラの病気を治せるかもしれない。


黒蝶と姫菜は、看護師と王妃にサラを任せて空に浮かぶ島に存在する。狂い咲きの森に行くことになった。

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