第33話 コンサートレポートと、ブログタイトルの変更

 そんな約束をしたっけ……

確かにした覚えがある。


 昨日は色々とあり過ぎてすっかり忘れていた。

 幸いなことに、今日はフリーな土曜日で、悲しいことだが、明日の日曜日も特別な予定が無い。

 書いて書けない事はないし、灯火ちゃんの為にも、あの大逆襲劇を僕の手で書いてやりたいと思った。

 暫く休んでいた、長文の感触も取り戻したいし。


 こうして僕は、土曜日の午後から、コンサートレポートの執筆を開始しようと決意した。


 コンサートレポートを書く前に、ブログタイトルを変更することを思い付いた。


「株式投資日記」と云う、まるで個性の無いタイトル。

 このままでは良い記事が絶対書けないような気がした。

 仮にも作家を目指す者として、創作力の片鱗へんりんすら感じさせないネーミングじゃないか。

 

 これも実は、自信の無さの現われだった。

 確かに株式投資の時間帯を、どのように過ごすかと云う目的から、ブログを始めたことは間違いない。

 しかし、行く行くは自分の作品を掲載して行こうと、片隅で考えていた筈なのだ。

 その証拠に「自作小説のコーナー」と云う書庫は、ブログ開設時からあったし、ずうずうしくも、自分宛のメールまで掲載していた。


 目的は口にするのも恥ずかしいが、自分の作品に目を止めた、出版社からの連絡用なのだ。


 だいそれた野望とは裏腹に、小説の書庫へ、新しい作品が追加される予定は今の所立っていない。

 それでも僕は、何かを変えたいと思うようになっていた。

 昨日のデートもその一つだ。


 夢中になってブログタイトルを考えた……

 僕の好きな言葉、

「脳の中の宇宙は、本物の宇宙の様に無限大」

 誰が言ったのか、全く覚えてないが、小さい頃からそう信じて来た。


 思い付いたタイトルは

「ブレイン・スペース・ウオーカー」


 スターウォーズのアナキン・スカイウオーカーみたいで、格好良く思えた。

 後になってからまた、恥ずかしく思う可能性もあるが、ハンドルネームのトモヤンみたいなことはないだろう。


 タイトルを変更し、あわせてブログデザインも変えた。

 今までのブログよりしゃれた感じになった。

 創作意欲が、こんこんと湧いて来る気がする。


 新しい入れ物が出来て、初めて中に入れるものが、灯火のコンサート記事だと思うと下手へたなものは書けない。

 幸いなことに、コンサートの余韻も色濃く残っている。

 キャベジンさん程の熱血記事が書けるかと言えば、自信は全く無かったが、自分なりの書き方をすれば良いだけなのだ。

 灯火のことを、彼ほど知り尽くしてないとしても、構えずに書いてみよう。


 長いブランクで文章は錆び付いていたが、

灯火のコンサートへ突如行きたくなった事情から書き始め、

チケットを手に入れる経路から、

普段の株式投資の模様なども交え、

まるで小説でも書くような感じで

 実際にはキーボードによるタイプだったが、古臭い表現には味わいがある。


 会場に向う途中の、落雷事故の事情などを記して行くと、我ながら臨場感を再現できたように思う。

 客観的なコンサート記事としては全くの失格だろうが、僕の記事には、長いブランクのリハビリの意味合いが含まれていた。

 もしこれを読む人が居たら、読者にはご容赦いただきたい。


 灯火の埼玉初日のコンサート記事は、

一記事五千字制限で、

パート3までの大作になり、土曜日と日曜日で三回に分けて掲載することにした。


 コメントが幾つか付いて、僕は気を良くした。

 灯火にとって辛い所が一部分あったとしても、全体で見れば好意的な記事になったと思う。


 長文の勘を取り戻して、乗って来た僕は、

月曜日もブログの株式記事などそっちのけで、

今も新日鉄に八千株も投資していると言うのに、

株式ボードで株価をじっくりと追う事も無く、

埼玉二日目の記事を書き続けた。


 書き上げると、初日以上に長文で熱血記事になった。

 記事の始めには、灯火の公式サイトから拝借したツアー写真をコピーして、無断で幾つか貼り付けた。

 読み返してみても、初日と較べて良い文章になった筈だ。


 書いてみて分った。

 僕が本当に書きたかったのは、株式投資日記なんかじゃなくて創作的な文章だ。


 思い起せば、数年前に書いた沖縄旅行記は、写真よりも生々しく記憶を呼び覚ます力があった。

 ペンは写真よりも強しなどと、バカなことを言うつもりは無いが、

「ペンは剣よりも強し」とは、偉大なる福澤諭吉ふくざわゆきち先生もうまいことを言ったものだ。

 あの言葉は果たして彼のオリジナルなのだろうか、それとも西洋の偉人が言った言葉を知っていて使ったのだろうか。

 今は、そんなどうでも良いことを、僕は考えてみた。


 東京市場の終了間際だけは、株式ボードに集中してみた。

 僕は端くれに過ぎないが投資家なのだ。

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