第32話 ブログ仲間とレポートの催促
そんな事を言われた事は初めてだ。
こそばゆい気がしたが、僕はとり澄ましていた。
「そういう人は自分の身近に居ないから」
明菜ちゃんは、そう付け加えた。
明菜ちゃんの目の中に、孤独らしきものを感じた。
総武線の車中で、夜道だから送ろうかと云う、僕からの申し出はあっさりと断られ、
二人は午後十一時半頃、津田沼駅で別れた。
稲毛の最終バスに間に合わなかった僕は、タクシー乗り場の行列に五分ほど並び、千円で銅貨二枚のお釣りが来るメーター料金に、ほっとしながら家に辿り着いた。
もうだいぶ酔いが回っているし、面倒臭いとは思ったが、習慣的に僕はパソコンを立ち上げた。
そして、キャベジンさんのブログ、
『灯火の間』へと繋ぎ、灯火のコンサートの様子について簡単に書き込んだ。
翌朝、ニューヨーク
習慣化している事なのに、この日に限っては
続いて、昨日の日経平均、および個別チャート三銘柄の日足・週足チャートをダウンロードした。
それらのデータを元に、僕のブログの週末特集として、
「今週のチャート分析と次週の予測」
と題する記事を
普通なら、この位の記事は一時間もあれば書けるのに、たっぷり二倍以上の時間がかかった。
どうしてだろう。
何かが心に引っ掛かっている。
いつものように記事を自分のブログへ掲載してみた。
しかしながら、手を掛けて書き上げた労作記事を、定期的に読んでくれている人は少ない。
コメントとか訪問者数から推定する限り、三人か四人程度だろう。
ブログの「株式投資日記」記事はもともと、毎日の株式投資が単調にならないように、他人の目に
そんな目的で書いてきた。
結局は、投資パフォーマンスを向上させる為、つまりは己自身の為に書いているのである。
それ故、読者数が増えないことなど問題ではなかった筈だ。
それでもこの日の僕は、少数の読者の為に、何故毎朝毎夕と書き続けなければならないのか。
そんな見当違いも
その一方で、もう一つの
「自作小説のコーナー」には、
ブログなんてやめてしまおう。
そう思うことはあるが、僕は身に染み付いた習慣から容易には抜け出せない。
今日も、コメントを交換する為、知人友人のブログを回遊する。
株式のデイトレードに取組んでいる、シュン君のブログタイトルは凄まじい。
なんと「死亡遊戯」だ。
プライバシーがあるから、詳しくは話せないが、本業を休職してまでやっているのだから、文字通りなのかも知れない。
僕は、彼を勝手に同志だと思っている。
株で身を立てようとしていることは同じだから、同志で間違い無い筈だ。
彼の投資手法は、僕とはまるで違っている。
新興市場の銘柄を、毎日多数取引していて、その殆どは僕の知らない会社だった。
それでも彼が儲けているのを見ると、自分の成功も近いと、信じることができて嬉しいのだ。
シュン君の昨日の投資成績も悪くない。
僕は一つコメントを入れてみた。
読書好きな女の人がやっているブログを最近見つけた。
そこへも遊びに行くようになった。
彼女は小さな子供を二人持つ若い主婦で、読書幅が広く片寄りがないので、レビューはかなり参考になる。
小説家を志している癖に、僕はあまり本を読みたくない。
だから巧くならないのかも知れないが、時間を割いて読み進めた結果、読むに値しない作品だと分った時、僕は
『大事な時間を返してくれ!』
と叫びたくなる。
最近、彼女のお勧めを一つ読んでみたが、かなりおもしろかった。
これからは時間の無駄が、少し減らせそうな気がする。
彼女のネットネームは小夜子と言う。
今は気恥ずかしいので、変えたい気持ちもあるが、この名前で始めて、ずっとコミュニケーションしてきたネットフレンズが何人か居る。
だからそう簡単に変える訳には行かない。
ナースさんがやっているブログへもよく行く。
彼女の記事を読んで、いつか病院もの小説を書いてやろうかと云う野望も持っているが、その時は彼女から得た情報だと分らないように十分注意したい。
写真モデルをしている、美人さんの日記ブログもある。
彼女は最近、タレント活動への道を開きつつあるようだが、ブログで夢を実現しようとする過程を見るのは実に楽しい。
僕も夢を実現したい。
四つのブログを回遊してから、最後に
『灯火の間』へ行ってみると、ゆうべのコメントに対し返事があった。
返事のコメントの最後には、
『埼玉初日と二日目のコンサートレポート期待してますね!』
と云う一文が付いていた。
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