第16話 隣の席が眩しすぎる

 多少の不安を抱えながらも、漸くやって来た十二分発の電車に乗り込んだ。


 幸いグリーン車両の二階席はいており、とは反対側の進行方向右側シートを選んだ。


 昨日は、高橋さんの言葉や父のことを考えていて気がつかなかったが、グリーン車の様子が以前とは変わったようだ。


 制服姿の遠目に綺麗な女性が、飲み物やお菓子をセットしたバスケットを片手に抱えて螺旋らせん階段を上がって来た。

 みているとグリーン券のチェックも同時に行っているようだ。


 JR東日本の株式はどうだろうかと考えながら、忘れていたスイカをかざすと、シート真上の小さな赤いインジケーターが青に変わった。


 近付いてくるキャビンアテンダントは、僕の年齢とそうは離れていないだろう。

 缶ビールを二つ、間近まぢかで見ても綺麗だった人に注文した。


 男女関係を意識すると、スマートに行動できない僕でも、客と店員などの関係なら気軽に声を掛けることができる。


 サービスを受ける側と云う立場になって、初めて女性と安心して話ができるのは、男としての自信が無いせいだ。

 JRのCAと会話した後で、いつもの様にそう思った。


 間も無く電車は津田沼駅に停まり、先ほどCAが上がって来た短い螺旋階段を、明菜ちゃんが、視線を左右に走らせながら上がって来た。


 僕は手を挙げて小さく振ってみせる。

 ぱっと咲いた笑顔を見た瞬間、僕の中で明菜株あきなかぶ一分足いっぷんあしチャートは大きな陽線ようせんを記録した。


 固くなると思っていたのに、僕にも自然な笑顔ができたみたいだ。


 窓側に座ってもらった明菜ちゃんの左横顔は、缶ビール効果でほんのりと紅く染まりなかなか良い感じだ。


 今日の明菜ちゃんの装いは、トップスが淡いピンクのタンクトップ。

 ボトムスは、あちこちの縫い目に少しずつひらひらの付いたブルージーンズをはいていた。


 木目細きめこまかい地肌と綺麗なカーブを持つ左肩。

 三色に織り上げられたブラの見せ紐。

 見過ぎないようにしないとなw


 ミディアムレングスの髪を、巻きつけるようにまとめているせいで、全てさらし出されている白い襟足えりあし

 どれも目にまぶし過ぎる。


 僕は、右を見たい気持ちに逆らいながら、前だけを向いていた。

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