第2話 あきらめていた

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【この物語の主人公は「僕」=西田智也、24歳です】

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 その日は朝から灯火とうかのことが心配でならなかった。

 前日のコンサートでは、途中から声が出なくなりそうだったから……


 しかしながらその数日前までの僕はと言えば、あの灯火が二〇〇〇年の夏以来六年ぶりに全国ツアーを行っていることだけは知っていたが、まさか八月十七、十八と二日続きで『さいたまスーパーアリーナ』へ出掛ける事になろうとはこれっぽっちも思っていなかった。


 もちろん毎日の様に灯火の歌を聴いていたし、彼女のCDならシングルは一々買っていなかったとしても、アメリカで"Light"の名前で出した全編英語のアルバム『エキゾチック』も含めて、五つ全てのCDアルバムをそろえているし、PVのDVDだって持っている。

 その外にも、あの日本人アーティストでは初と言われる、MTV(全米音楽専門ケーブルTVチャンネル)の看板番組『MTVアンプラグド』出演の様子を収録したDVD『LIGHT UNPLUGGED』も買ったし、インターネットでオンエアーされた、ライヴストリーミングを完全収録したDVD『十代にアディオス!』までコレクションしているのはちょっとした自慢だ。

 一方で六年前のファーストツアーライヴのDVDはなけなしの大枚たいまい六千円をはたいてまで買ったくせに、二年前に五日間連続で行われた武道館ライヴの時には、その金が惜しくてレンタルDVDで済ませてしまったことが口惜しくてならない。


 六年前の僕はコンサートまで行こうとは思わなかったし、二年前の時はEプラスでチケットを申し込んではみたものの、予想通り抽選に外れた。

 そんな訳で今回の全国ツアーは鼻から諦めていた。そう僕は諦めていた。所が……

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