第33話 恋愛リアリティ 1
『ど、どうしたらいいでしょうか』
と、アマリがリスナーに問う。
ついに織星ハヤトと甘梨リンの仲が進展した――かもしれない――ということにリスナーたちがお祭り騒ぎだ。
どいつもこいつも『フレンドになっちゃえ』『織星くんならリンちゃんを幸せにしてくれるよ!』『連絡先交換するといいよ!』と押せ押せである。
『え〜〜〜〜〜〜……フレンドになっても大丈夫、かなぁ。みんなが大丈夫っていうのなら……。じゃあ、今から連絡してみます』
なんて言うから、チャット欄は『ドンドンパフパフー!』『いけー!』『マジで!?』『がんばれ!』『頑張れ〜!!!』『!!???』『今!?』『うおおおおおお!!!』とコメントがすごい速さで流れていく。
漫画本を枕元に置いて、スマホの方に注視する。
アマリが緊張の面持ちでPCの方からディスコで連絡をしてみるらしい。
なにかメッセージを送ったらしくアマリが聞いたことのないような声で『ひぃー!』と叫ぶ。
『送っちゃった、送っちゃった。……え? えっとねぇ、初めまして、先ほどはコラボありがとうございました! またいつかコラボしてください、って送った。変なこと言ってないと思うんだけど……どうかな。……そ、そうだよね? 変じゃないよね、どこも。雑談配信中に返事返ってくるかな。……えー? 返事返ってきたり教えてって? でも勝手に返事読み上げたら織星くんに怒られない? さすがに許可もなくそれはできないと思うけど……うん、返信の時はみんなの力を借りたいな』
と、返信後はテンション高めに珍しく早口。
雑談枠なのでトークを続けていく。
そのトーク力は、アマリが「ライバーになりたい」と言った頃からいろんな大手ライバーの雑談枠を見ながら研究・勉強して一人で練習して習得したものだ。
その涙ぐましい努力が今、報われている……!
あんなに、俺一人としか話さなかったアマリが、こんなに長い時間コメントを拾いながら喋るなんて本当に成長したな!!
『ひゃっ! へ、へへへへ、返事返ってきた……』
と、アマリが叫ぶとチャット欄は『キターーーー!』『うおおおおおお!』『なんで返ってきたの!?』『きちゃーー!』『織星くんからの返信!?』『キタキター!』と再度お祭り騒ぎ。
アマリがあわあわしながら『えっと、定型文みたいな感じの返事』と言う。
ちゃんと許可もなく公開するようなこともなく、あっさりとした内容、と告げる。偉い。
『あ、待って。最後に“配信で公開しても大丈夫です”って書いてある』
と驚く。
あ、あー……織星、アマリの配信観てるんだろうなぁ。
俺もアマリの配信は出来る限りリアタイで観ようと思ってるし、アーカイブで必ず観るし。
織星もリアタイできなくてもアーカイブで絶対観てるし、なんなら織星の配信観てると『甘梨さんと配信時間被らなくてよかった〜! 今日はリアタイできる!』って言ってるし。
コラボ終わりで織星も配信してないし、作業なり飯食いながらなり、アマリの雑談をリアタイしているに違いない。
やべぇな。
織星観ながら返信したのか。
『も、もしかして織星くん、リアタイしてるのかな?』
観てると思うヨ……。
しかし、アマリの配信を観ていてもコメントしないあたりマナーがいいというか、
『えっと、織星くんから公開OKが出たので読み上げますね。甘梨リン様、こちらこそコラボありがとうございました。ディスコのフレンド登録もありがとうございます! またコラボしてください! あの、もしよかったら今度マスヲカートやりませんか? パーティーゲームだと俺たちだけじゃ寂しいので、ヒナタも一緒に。ご検討ください――だって』
はい、チャット欄のコメントが『うおおおおおおおお』『おおおおおおおおお!!!!』『コラボお誘い!』『きちゃーーーーーーーー!!!』『コラボきちゃーーーー!』『リアタイできる幸せー!』ともうフェス最高潮じゃん。
コラボのお誘いに、アマリがまた『ど、どどどどうしよう』と声を震わせている。
そんなこと言ってもチャット欄は『いけいけー!』『受けちゃえ受けちゃえー!』『コラボしてー!』『Starsとコラボ!』『がんばれがんばれ!』と押せ押せコメントしかない。
ふと、視聴者数を見ると1,000人超えてる。
アマリのチャンネル登録者数より多いぞ!?
これは織星のチャンネル登録者やツブヤキッターあたりから流れてきているのか?
ツブヤキッターを覗くと、案の定織星のリスナーがツブヤキッターで『やばい』『甘梨ちゃんに織星くんが凸した』『甘梨ちゃんに織星くんの連絡先ががががが』『いやー! キタコレ!』『え、これコラボ? 甘梨ちゃんと織星くんコラボ!?』とツブヤキッターでもフェス状態。
うちみたいな弱小Vtuber事務所でこんなに話題になってくれるなんて、あんまり気は進まなかったけれど……Vtuber同士の恋愛リアリティがエンターテイメントとしてこれほど強いとは……。
『ど、どうしよう……あ、でも明星さんも一緒なら……いい、かな?』
と、もじもじ考えてから、『文面って、えっとお返事ありがとうございます。マスヲカートのコラボ、ぜひよろしくお願いします――っていう感じでいいのかな?』とリスナーに問う。
チャット欄は『コラボ日時も決めちゃえ』という助言。
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