8話 呼び方

「最近文香の事が気になってて」


「うん?」


突然の告白に驚きすぎて思考が止まってしまった


「えーっと?それは異性としてってこと?」


「お、おう。だからアピールしようと誘ってみたんだ」


「な、るほどねぇ」


「ごめん!秀樹と文香が付き合っているの知っていながらこれは最低だよな!」


健吾は俺と文香が付き合っていた事は知っているので素直に謝ってくる


なんというか、正直すぎて憎めない


「いや、別にそれは良いんだけど。というか、それでいったら俺からも伝えとくか」


俺は、昨日の放課後に文香と話し合った内容を健吾に伝える


というか昨日離しておいてよかった


「え!?秀樹と文香は付き合っているふりをしていただけ!?」


「ばっか、声でかい!」


「あ、ごめん・・・」


「というか、なんで付き合ってるふりなんてしていたんだ?」


「それは、ほら、文香って顔は良いだろ?それで中学の時から面倒ごとが多かったんだ。で、幼馴染でもある俺が彼氏のふりをすることで、文香によってくる馬鹿どもを退けていたんだよ」


聞かれるとは思っていたから用意していた通り解答する


実際に文香は学年で九条さんにならび、1,2を争うほどの容姿であり、中学時代の話も嘘ではない


「なるほどなぁ。確かに、文香は可愛いもんなぁ。けど、秀樹は文香のこと気にならないのか?」


「うん?ああ、大丈夫。健吾はなんで俺と文香が九条さんをグループに誘ったと思ってるんだ?」


ここで九条さんの名前を出すのは申し訳ない気もするけれど、自然になるように伝える


「そういうことなのか?じゃあ、文香にアプローチしてもいいのかな?」


「俺に気にする必要はないぞ。文香には健吾に俺達の関係を話したって伝えておくから、文香も気にすること無いだろうし」


ここで、。これで断言してしまうと、それはそれで九条さんに迷惑をかける事になる


「さて、じゃあ俺達も飲み物買えたし教室に戻るか」


これでひと段落という風に、健吾に伝える


「そうだな、あんまり遅くなっても悪いしな」


そうして、俺と健吾は飲み物を手に自分の教室に戻る


教室に戻ると文香と九条さんは楽しそうに会話をしていた


「確かにそうよね」


「何がそうなんだ?」


2人の会話に臆することなく介入していく鈴木健吾。漢である


「あら、二人ともお帰り」


「ただいま。はい、九条さん。野菜ジュースで良かった?」


「ええ!ありがとうございます!」


「ほ、ほんとに九条さんは野菜ジュースが好きだったんだ」


俺が実際に九条さんにジュースを渡しているのを見て、驚く健吾


「あ、そうだ。ほれ文香、イチゴオレ」


「ありがとう。やっぱりこれよね!」


文香は甘党なので、甘い飲み物ならなんでも好きだが、特にイチゴオレが大好物である


ちなみに健吾はカフェオレ、そんで、カフェオレを飲むと高確率で次の授業中に腹を壊す


「で、なにがそうだったんだ?」


飲み物を渡し終えたので気になっていたことを二人に聞くと、文香が答えてくれた


「いや、私達って咲以外名前で呼び合うじゃない?なんか咲だけ苗字だなぁって」


「うっ、それは、なんというか」


俺も健吾もまさかそんなことを言われると思ってなかったので焦る


「いや、俺は文香以外は基本的に苗字呼びだろ?」


俺は、基本的に苗字呼びが多いので言い訳っぽくなるが答える


「だ、だな」


遅れて健吾も言うが


「幼馴染の秀樹はともかく、健吾君だって私の事名前で呼ぶじゃない」


「「いや、なんというか文香って男っぽい性格してるし」」


健吾だけで良かったのに俺も反射で答えちゃった


「・・・どういうこと?」


やっべ、めっちゃ笑顔なのに、目が暗い


アニメで言う所の目のハイライトが消えた状態だ


「あなたたち、覚悟はいいわね?」


どうしよう!?ガチギレだ!文香がキレるとそれは怖い!


なんせ、暴力でなく言葉で刺しに来るのだ


「そ、それよりも呼び方じゃなかった!?九条さんは何て呼ばれたい?」


「逃げたわね?」


「ナンノコトダカ・・・」


「あとで覚えておきなさい」


なんとしても逃げきらないと、せめて金曜日まで。次の日が休みなら家で寝込める!


「えっとなんと呼ばれたいか、ですか?」


「う、うん」


「でしたらやはり名前で呼ばれたいです。なんだか、私だけ仲間外れみたいな感じがしますし」


「わかった。じゃあこれからは”咲さん”って呼ぶよ。健吾もそれでいい?」


「おう、いいぞ。ということで、咲さんも俺達の事は名前でいいぞ」


「でしたら、秀樹君、健吾君とこれから呼びますね!」


「「了解。これからもよろしく」」


健吾と返事が被ってしまった


「あら、こんなことを話していたら昼休みが終わりそうね」


「ほんとだ。だったら放課後に一緒に遊びに行かない?みんなが大丈夫ならだけど」


「大丈夫よ」


「今日は予定はありません」


「いけるよー」


「よし、じゃあ放課後にまたここで集まって遊びに行こう!ということで解散!」


それから、解散した俺達は午後の授業をそれぞれ過ごした


俺はというと、放課後に遊びに行く事が楽しみで仕方がなかった

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