5話 将来
「えっ!?九条さんの家って神社なの!?」
「そうですよ。△△駅の近くにある小さな神社ですけど・・・」
「いや、それでも驚いたわ。という事は、九条さんは将来神社を継ぐのかしら?」
駅に向かっている途中で、九条さんの家の話題になり、文香は九条さんに色々聞いていく
「ええ、私としては神社を継ぎたいと思っています」
文香の質問に対して、九条さんは平然と答える
「ただ、女性が神主になっている例というのが少なくて、なれるかどうか・・・」
九条さんの答えを聞いて、俺と文香はどちらも「なるほどぉ」と声に出す
「確かに、神社によっては女人禁制の土地があるって動画で言ってるのを聞いたことがあるね」
「そうね、それに神社で女性と言ったら巫女さんってイメージが強いし・・・」
俺が知っている限りでも女性の神主って聞いたことが無い
「そうなんですよ、神事によってはやはり女性が憚れることもあって、女性の神主は難しいと親からも言われているんです」
「なんというか、社会では男女平等って言われているけど、歴史が長い職だからこそ難しいのかな?」
「佐藤君の言う通りで、やはり長い間ある職業にもなりますので、これまでの風習とは違う動きというのはあまり受け入れられないんです」
「そっか、けど私は九条さんの夢応援するわよ?」
「俺も応援するよ!」
俺達には、神社の事とかで難しい事は分からないけれど、九条さんには夢をあきらめてほしくない
なにより、恩人の夢なのだから叶って欲しいと思う
「ありがとうございます。自分の夢を応援されるのは照れ臭いですね」
九条さんは少し顔を赤くしながらもお礼の言葉を言った
「九条さんの両親からは何て言われてるの?」
中々に攻めた質問を文香が放つ
「一応私の両親はこの夢を認めてくれていますよ。ただ、やはり父としては複雑な思いだそうで、もしダメだった時の案も考えておきなさいと」
「確かに、親からしたら不安だよなぁ」
俺が父親の立場なら夢を諦めさせる動きをしていてもおかしくないと思う
そう考えると九条さんは親にも恵まれているんだな
「ちなみに、何か他の案は考えているんですか?」
「はい!もし神主が駄目でも、巫女として奉仕しようと考えているんです!この夢は両親ともに認めてもらっています!」
九条さんは嬉しそうに教えてくれた
「へ~本当に神社が好きなんだね」
文香が感心したように言葉を発す
「そうですね。なんといいますか、今の私がいるのも神道の知識を使っていたりするんですよ」
「そうなんだ、じゃあ九条さんにとっては支えみたいなものなのか」
「そうですね、それに巫女服ってかわいくないですか?あの服が着れるうちは私はずっと着ていたいんですよ!」
「そ、そうなんだ。巫女服が好きなんだね」
俺は、これまで以上にテンションが高い九条さんを見て少し驚いてしまった
隣を見ると、文香も目を丸くしていたので、彼女からしても今の九条さんのテンションは意外らしい
「私が初めて神社に興味を持ったのが、伊勢神宮で見た巫女の神楽ですからね。あれ以来巫女は私の理想です!」
「お、おう。そうなんだ。ってあれ?俺のスマホどこいった?」
「え?知らないわよ。教室で私と話している時は持っていたじゃない」
「だよな、もしかしたら教室に忘れてきたかも。ちょっと取りに帰るから、先に帰っといて良いぞ。ここからだと時間かかるだろうし」
俺のスマホが無い事に気づいたのは駅と学校の中間時点なので、これからダッシュで取りに帰っても往復で20分はかかるだろう
「わかったわ。じゃあ先に帰るわね」
「うん、じゃあまた明日。九条さんもまた明日!」
「え、ええ。また明日。さようなら」
九条さんはいきなりの話だったので状況を飲み込めていないが、別れの挨拶は出来た
俺は2人から離れて学校へと走る
教室で自分のスマホを見つけ再び帰宅ルートを歩いていると、前に一人美少女が立っていた
「スマホは見つかりましたか?佐藤君」
「あれ?九条さん先に帰ってなかったの?」
そう、てっきり先に帰ったと思っていた九条さんが、さっき別れた場所でまだ待っていた
「ええ。少し相談したいこともありましたし」
「相談?どうかしたの?」
「佐藤君、私も明日からあなた達との会話に参加しても良いですか?」
「・・・え?」
・・・え?
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