4話 助け合い
九条さんにジュースをおごってから、別段変わったことも無く一日を過ごしていた
文香と健吾とも違和感なく会話をすることも出来た、というか健吾は文香と俺が別れたのを知らないし、その原因が健吾にあることも知らない
健吾の中では俺と文香はまだ付き合っている状態なのだ
放課後になり、俺は文香を呼び止め、教室で会話をしていた
「で、俺達が別れた事健吾に伝えるか?」
「そうよね、伝えないといけないわね」
文香の表情を見る限り、少しその事を健吾に伝えるのは怖いらしい
「まあ、別に喧嘩別れをしたわけでもないから普通に伝えて大丈夫だと思うぞ?」
「それもそうなんだけど、次に好きになった相手が健吾君っていう事がやっぱり意識しちゃって」
「まあ確かに、別れて健吾が好きですって言っても、尻軽女って思われたら終わりだもんな」
「それを言わないでよ・・・」
「ごめんよ・・・」
そう、別に別れた事を伝えるのは簡単なのだが、その原因が健吾にあるという事を知られるわけにはいかない
「最悪、俺に好きな人が出来たからって言うか?」
「それはだめよ!そこじゃ秀樹が悪者になるじゃない!?」
「確かになぁ、なら少し嘘を交えて伝えるか」
俺がそう提案をすると、何を言いたいのか分からないという表情をされた
「どういうこと?」
「文香って美人だろ?」
「それを認めるのは嫌だけど、まあそうね」
「そこで、文香の男除けのために俺達は付き合っているふりをしていたということにすればいいんじゃない?」
「・・・あなた、それ本気?」
文香から怒りの表情を向けられる
「そう怒るなよ、それで、互いに好きな人が出来たから解消したっていうことにすれば、別にどっちも悪者にならずにすむ」
「つまり、あなたは私と付き合っていたのは演技だったという事にすること?」
文香からは変わらず怒りの感情を向けられている
「勘違いしないで欲しいんだが、付き合っている時のデートはちゃんと好きでやっていたからな?文香に対する愛情も嘘をついたことは無い」
「それは知ってるけど、あなたはその思い出を演技という嘘で塗り固めていいの?」
「別に第3者に伝える分には良いと思う。楽しかった記憶は俺達が知っていれば問題ない」
「・・・わかったわ、その案で行きましょう。ただ、無理はしない事。それで辛い思いをしちゃったら元も子もないわ」
「流石に分かってるよ」
俺と文香との関係性に関する話し合いが終わった時
「あれ?佐藤君じゃないですか」
「ん?九条さん?なんでここに?」
教室のドアから九条さんが現れた
「私は先生に頼まれて、残っている生徒がいないか巡回していたんです。そしたら、この教室から声がしたので、様子を確認しに来ました」
「なるほど、先生に頼まれるとは流石九条さんだね」
「い、いえ、それほどでも。ところで何をしていたんですか?どうやら三好さんと会話をしていたらしいですけど」
「ちょ、ちょっと待ってね九条さん。秀樹、いつ九条さんと知り合ったの?」
九条さんと話していたら状況についてこれていない文香が説明を求めてきた
「えーっと、昨日うちの高校の生徒と話したって言ってただろ?その相手が九条さんだったんだよ」
「え?そうなの?」
「ところで、話の感じからすると、佐藤君が言っていた幼馴染は三好さんの事だったんですか?」
「え、うんそうだね。というか、二人は知り合いだったの?」
俺は文香と九条さんが知り合いだったことに驚き、二人の関係について尋ねと九条さんが答えてくれた
「えっと、そうですね。私たちは少し前に成績優秀者として生徒会に勧誘されたので、その時に知り合って、まれに会話をする関係ですね」
「はぁー、成績優秀者同士の関わりかぁ」
九条さんは成績優秀という噂を聞いたことはあったがそれほどとは恐れ入る
「話を戻しますけど、お二人で何を話し合われていたのですか?」
「えっと、昨日言っていた親友に対して俺達の関係をどう説明しようかって相談を」
「なるほど、確かに説明は大事ですもんね」
「ちょっと秀樹、伝えて良かったの?」
「別に九条さんになら大丈夫だよ。野菜ジュース同盟も結んでいるし」
「はぁ?なにそれ?」
「私も佐藤君も野菜ジュースが好きなんですよ。ですので同盟です」
文香が疑問に思っていたことに対して、九条さんが説明をしてくれた
というか、咄嗟に同盟とか言ったけど合わせてくれるとは、もしかして九条さんノリが良い?
「まあ、秀樹が信用できるならいいけど・・・」
「お二人の関係も悪くなっていないようで安心しました」
「昨日はありがとうね九条さん。九条さんのおかげで、文香とも親友とも気兼ねなく会話を楽しめるようになったよ」
「いえいえ、昨日も言いましたが、あれは先人の考えですので私の考えではありませんよ」
「なんか、除け者にされてるの気に食わないんだけど・・・」
「そんなつもりはなかったんだがな、そうだ!九条さん見回り終わった後、俺達と一緒に帰らない?方向一緒だし」
「いいんですか?ではお言葉に甘えますね」
「じゃあ、さっさと終わらしてしまおう!ほら文香も手伝ってね」
「なんで私まで、まぁいいわ早く帰りたいし」
こうして、俺達3人は一緒に帰る事が決まった
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