3話 学校での再会

「秀樹おはよ~」


「文香おはよーさん」


昨日の放課後、九条さんと話してある程度の道が見えた俺はお礼を伝えて家に帰った


朝になって文香と顔を合わせることになったが、自分が思っていたよりも落ち着いている


「秀樹ごめんね。なんか、気まずいよね」


「まあ、まったくないと言ったら嘘になるけど思ったよりも落ち着いてるんだ」


「そうなの?」


「うん、昨日帰りにあった人と話して考え方を変えたんだ」


「それ、怪しい人じゃないの?」


「大丈夫だよ。うちの高校の生徒だし」


流石に九条さんの名前を出すわけにはいかないけど、怪しい人ではないことは伝えないといけないな


「そうなんだ。で、どう変わったの?」


「昨日までは2人に挟まれるのが気まずかったんだけど、今はなんというか普通に接して楽しもうかなって」


「それ、秀樹は辛くない?」


「大丈夫だよ。逆に気を使われる方が多分辛いと思う。俺は幼馴染みとも友達とも仲良くしていたいからね。だから、僕のことは気にせずに健吾にアタックしなよ」


「秀樹が辛くないのならわかったわ」


「あ、流石に2人を引っ付けるような行動はしないからな」


「そこは大丈夫よ。ちゃんと自分でなんとかする」


「そっか…」


こうやって文香と話していても辛いとはあまり感じなかった


むしろ、文香には幸せになって欲しいと感じたほどだ


九条さんのおかげで、お互い気まずい雰囲気になることなく過ごせた俺達は今までと変わらない登校時間を過ごすことが出来た


「健吾おはよー」


「おう、秀樹に文香おはよー!秀樹宿題やってきたか?」


「やってるけど、まさか健吾、終わってないのか?」


「おうとも!という事で見せてく「やだ」」


「早いよ!そんでなんでだよ!」


「自分の力で解けバカ。テストで痛い目見るぞ」


「そこをなんとかぁ~」


「無理、見せるのは無理だけど、解き方くらいは教えてやるから頑張れ」


「ありがとうございます!秀樹様!」


「やめんか」


そんな、どうしようもないやり取りをしていると


「フフ、相変わらず二人は仲がいいわね」


「あたぼうよ!俺たちは助け合いの関係だからな!」


文香と健吾で会話を始めた


「なぜか俺が忘れてるときは秀樹がやってるし、秀樹が忘れてるときは俺がやってたりするからな!」


「ということは、この前の体育のレポートは健吾がやってるのかしら?秀樹はやってないっぽいけど?」


「体育のレポート?あ!忘れてた!って秀樹も・・・?」


「おう、俺も終わってないぞ?何を書けばいいかさっぱりで」


「あらら、じゃあ2人そろってお説教コースかしらね?」


「まじかよ~」


2人の会話の中に俺の名前も出てきたから少し会話に加わる


俺たち3人の関係性はだいたいこうで、文香が俺達二人の監視役のような立ち位置になっている


それは学力でも一緒で、俺と健吾は平均程だが、文香の成績は学年でTOP3に入るほどだ


「あ!九条さんだ!」


教室で誰かがそう叫んだ時、少しビクッとしてしまった


「ん?秀樹どうかしたのか?」


「いや、いきなり大きな声が聞こえたから驚いただけだ」


「秀樹はビビりだもんねw」


「うるせーな。そういう文香だってホラー系は苦手だろ」


「しかたないじゃない・・・怖い物は怖いんだもの」


「二人とも怖がるのかわいらしいなぁ」


「「うるさい高所恐怖症」」


「うっ・・・」


俺は大きな音が苦手で、文香はホラーが苦手、健吾は高所恐怖症と3人それぞれが苦手としている物がある


互いに知っているからこそ、互いに対して突っ込める


「まぁいいや。ちょっとのどか湧いたから飲み物買ってくる」


「また野菜ジュース?」


「いいだろ?うまいんだから」


俺は教室をあとにし、自動販売機が売っている場所に向かう


「ふぅ、ここの自販機に野菜ジュースがあることが救いやわ」


「あれ?佐藤君?」


「ん?九条さん?どうしたの?」


「いえ、飲み物を買いに来たら佐藤さんがいたので」


「あ、なるほど、九条さん何飲みますか?」


「え?いやいやいいですよ」


「昨日のお礼だと思っておごられてください」


「う~ん。わかりました。では、野菜ジュースで」


「お、九条さんも野菜ジュース好きなの?」


あまり周りに野菜ジュース好きな人がいないので興味本位で聞いてみる


「そうですね。ここの自動販売機に来たのも野菜ジュースを買うためですし」


「わかります。この高校で野菜ジュース売ってるのここだけですもんね」


「ということは佐藤君も野菜ジュースを買いに来たんですか?」


「そうですよ。野菜ジュースが好きなんで」


「野菜ジュースが好きな人に初めて会いました。あ、あと敬語じゃなくてもいいですよ」


「そうか、じゃあそうさせてもらおうかな。はい、どうぞ」


「ありがとうございます」


「そっちも敬語じゃなくてもいいよ?」


「いえ、私の敬語は癖なので気にしないでください」


「あ、そうなの?了解。じゃあ俺は教室戻るから」


「わかりました。野菜ジュースありがとうございます。では、また」


「うん、じゃあまたね」


お互いに用事も終わったので、互いの教室にそれぞれ戻っていく


予期しない再会だったが、なんだか少し、距離を近くできた気がした時間だった

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