2話 相談
「あの、どなたですか?」
俺こと佐藤秀樹は、隣町を散歩中に何故か巫女服を着ている学年1の美少女、九条咲に出会った
「あ、すみません!俺は霜月高校1年の佐藤秀樹って言います。えっと、九条さんですよね?」
「ええ、まあ、私は九条咲です。ところで、なぜ私の名前を?」
「えっと、九条さん1年生の間でかわいいって話題ですから」
「え、そうなんですね。知りませんでした」
「ところで、俺からも質問なんですけど、どうして九条さんは巫女服を着ているんですか?」
俺は九条さんに出会ってからずっと疑問に感じていた事を本人に聞いてみる
「えっと、実はこの神社、私の実家なんです。それで、私も実家の手伝いとして巫女服を着て簡単なことを手伝っているんです」
「な、なるほど。実家が神社って珍しいですね?」
「そうですね、比較的珍しいと思います。ところで、佐藤君はどうしてここに?この辺で佐藤君の事を見た事ないと思うんですけど」
「えーっと、電車降り過ごしちゃったので気分転換がてら散歩しようと思いまして。普段はここの隣町の○○駅で降りてるんですよ」
「なるほど、そうだったんですね。あの、もしかして何かお悩みですか」
「え?」
「なんというか、悩んでいるように見えたので」
言葉には出していなかったはずなのだが、まさか顔を見るだけでそこまで当ててくるとは思わなかった
「えっと、まあ悩んではいますけど、人に言うようなことでもないというか・・・」
「もし良ければ悩みを吐き出しませんか?人に話すことで答えが見えることもあると思いますし」
「え、いいんですかね?」
「ぜひ吐き出してください!ただ、ここではなんですので、社務所で聞きましょうか。とりあえず境内に入りましょう」
「すみません。ちょっとご厚意に甘えさせてください」
「気にしないでください。私が申し出た事なので」
それから、九条さんと共に社務所に入り、九条さんに対して、今日あった事と今悩んでいることを伝えた
話している間、九条さんは特に、会話を遮ることなく、聞く事に専念してくれた。たまに、相槌をうってくれたりもするので、話している側としてはとても助かった
「――という事なんです」
「なるほど、それは辛いですね」
「そうですね、親友とも縁を切りたくないですが、どうしても幼馴染との関係で気を使ってしまうような気もして・・・」
「そうですね、私から言えることはかなり少ないですね」
「そうですよね・・・」
「ただ、佐藤さんは『中今の精神』という言葉は知っていますか?」
「中今の精神?いや、知らないです」
「簡単に言うと『中今の精神』とは、今目の前にある事を大切にし、楽しみながら丁寧に過ごすことを言うんです」
「はあ、」
「今佐藤さんに必要なのは、もしかするとこういったように、今目の前にある事を楽しむことも必要だと思うんです」
「楽しむ?」
「ええ、佐藤さんはその幼馴染と親友さんに恨みがあるわけでは無いんですよね?」
「そうですね、親友は悪くないですし、幼馴染に関しても、1か月も考えてくれた上での答えだったので、恨みはないです」
そう、別に文香の事も健吾の事も恨んではいない。ただ、俺が二人にどう接したらいいのかがわからないだけだ
「でしたら、あなたはこれから、二人と楽しく過ごせるように過ごしたらどうでしょう?」
「楽しく過ごす?」
「そうです。あなたがそのまま悩んでいると、恐らく2人もその感情に気づくと思います。そうなると、どうしても気を使ってしまい、逆にあなたたちの関係が壊れてしまうかもしれません。でしたら、あなたがその状況を楽しみながら、丁寧にお二人に接する事を心がけるだけでも3人の中がこじれることはないんじゃないでしょか?」
「なるほど、楽しむですか・・・」
「ただ、無理にテンションをあげてしまうと、それはそれで気を使わせてしまうので、丁寧に相手と関わる事が大事ですけど」
「難しいですね、けど、少し道が見えたような気がします」
「そうですか!それは良かったです!」
九条さんが言っていたようなことを俺が出来るかは分からないけど、確かにその考えが一番いいような気もする
「九条さん、ありがとうございます!」
「いえいえ、この考え方は元々、神社神道で大切とされていた考えなので、私の考えではないですよ」
「けれど、それを教えてくれたのは九条さんですし、そのおかげで、道が見えてきたのは変わりないので、お礼を伝える相手は九条さんですよ」
「そ、そうですか。ありがとうございます」
九条さんの顔を見ると少し顔を赤くしていた。どうやらあまり、褒められ慣れていないらしい
「ハハ、どうして九条さんがお礼を言うんですかwお礼を言うのは俺ですよ!」
「そうですね、どうしてお礼を言ったんでしょう?」
偶々かもしれないが、九条さんに出会えて、相談できて本当に良かった
九条さんのおかげで明日からの悩みが収まった気がする
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