巫女JKと平凡少年

あちゅ

1話 別れと出会い

「ごめん秀樹、別れて欲しいの」


ある日の放課後、俺こと佐藤秀樹さとうひできは幼馴染であり彼女である三好文香みよしふみかから突然別れを告げられた


「え?文香?なんで?冗談?」


「ごめんね、秀樹。冗談じゃないの。私、秀樹の友達の健吾君の事を好きになっちゃったの」


健吾というのは俺の親友でもある鈴木健吾すずきけんごの事だ


俺と健吾は互いの距離感がちょうどよく、休み時間に一緒に過ごすことが多かった。その時には文香も一緒にいる事も多かった


「え、健吾を?」


「そうなの、健吾君は秀樹の友達だし仲が良かったのは知ってるけど、好きになっちゃたの。今すぐに健吾君に告白をするわけでは無いんだけど、この事を秀樹に伝えないのは違うかなって思って」


「そっか・・・健吾を好きになっちゃったのか・・・」


「ごめんね秀樹。多分秀樹は今辛いよね・・・」


「そうだね。ただ、どちらかというと驚きの方が大きいかな。ちなみに、いつ好きになったの?」


「惹かれ始めたのは1か月前からかな。健吾君の気遣いや、笑顔に惹かれちゃって。秀樹と付き合っていたから、ずっと考えていたんだけど、少しでも近づけるなら近づきたくて」


「そっか」


正直、ひとめぼれの方が嬉しかったかもしれない


1か月前からずっと考えて出した答えなら、俺がその気持ちを否定するのも違う気がする


文香は優しい性格だから、軽い気持ちで健吾の事を好きになって俺に別れを告げているわけじゃないことは幼馴染でもある俺が一番わかっている


「わかったよ文香。別れよう」


「ごめんね健吾。こんなわがまま」


「いいよ、1か月も悩んで出してくれた答えなんだし。相談なんだけど、これからどう接したらいい?」


「今までどうりでいいよ。恋仲じゃなくなっても幼馴染ではあるんだし、いまさらよそよそしくするほうが周りから見たら違和感しかないと思うから」


「わかった。じゃあ明日からはとして文香に接するね」


「ごめんね。ありがとう」


「じゃあ私帰るね。また明日」


「うん。また明日」


話終わると文香は教室を出ていく。俺はその後ろ姿をずっと見ていた


「はぁ、文香が健吾をねぇ」


幼馴染で元カノが好きになったのが、高校での親友


その事実に困惑しながら、少し教室で時間を過ごした


もし、今教室を出ていくと駅で文香に出会ってしまう


流石に今別れたばかりの幼馴染に合うには気まずすぎる


教室で自分の席に座りながらこれからどうするかを考える事にした


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30分間考えても、これからどうするべきか分からなかった


ひとまず変える事にした俺は駅に向かい電車に乗る


俺が住んでいる街は学校から特急で1時間ほど離れた場所で、特にこれといった特徴のない街だ



ふと気が付くと、周りの景色に違和感を感じる


「あれ、ここどこだ?」


『次はー△△ー△△ー』


「え!?隣町やん!気づかんかった!」


どうやらいつの間にか普段降りる駅を通り越していたらしい


「まじかぁー思ったよりも傷ついてるんやなぁ」


今まで、寝ていても起きれていたのに気づかなかったという事は余程俺は傷ついていたらしい


「せっかくやし、ちょっと散歩して帰ろうかな」


傷ついているなら気分転換が必要だ。そのためにも少し新しい環境を歩いてみるのもいいだろう


隣町の駅に着くと電車を降り、改札を抜ける。基本的に定期圏内なら無料で過ごせるのだが、今回は圏外なので余剰分の電車賃がかかる


「また家に帰ったらお母さんに電車賃の事報告しなきゃなぁ」


俺が電車に乗る際に使っているのは、後払い式のICカードなので、電車賃の支払いは親がしてくれている。なので、手持ちがなくても電車に乗ることは出来る


「さて、この駅で降りたのは良いけど、どこ歩こうかな?」


この街には来ることがあまりないので、どこに何があるのかは知らない


「とりあえず、こっちいってみるか・・・」


どこに行くか悩んでいた俺は、自分の気分に任せて歩くことにした


しばらく歩くと、鳥居が見えてきた


「神社かぁ、街中に神社があると、そこだけ世界が違うみたいで良いよなぁ」


しばらく歩ていると、小さな町にあるような神社が見えてきた。そこまで都会ではないけれど、住宅街にいきなり神社が現れると、何とも言えないような空間のように感じる


「ちょ!危ない!」


「へ?」


鳥居の前を歩いていると、いきなり鳥居の方から声が聞こえた


と思ったら、横からそれなりの衝撃が俺の体を襲う


「いっつ。なんだ?」


衝撃のした方を見てみると、巫女服の少女が倒れていた


「え、大丈夫ですか?」


「あいたた。大丈夫です!ぶつかってしまってごめんなさい!」


「いえいえ大丈夫です・・・よ?」


「あの?どうかしましたか?」


自分の安全を相手に伝えようとする途中で俺の言葉はつまってしまった


「あの、九条さんですよね?」


「え、あの、どなたですか?」


なんとなしに散歩している時に出会ったのは、俺の通っている霜月高校の1年生で一番かわいいと言われている九条咲くじょうさきさんだった


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