Chapter.34 決戦前夜
……――そんな決意もあり、それから。
今日一日は、休息日とすることにした。
みんな疲れているのもあるし、来たる明日は作戦決行日。
今日一日、王城の地図と睨めっこして、アイデアを出し合って、「これならいける」と満場一致で頷いた作戦で、僕らは攻略することにする。
「うううー怖いなあ……!」
大役を任された北斗さんが丸くなりながら呻いていた。西條くんは地下シェルターの廊下で素振りに勤しんでおり、僕はかつてないほどにドキドキとしながら、東雲さんはちょっと手持ち無沙汰そうにしているところ。
「あ、あの、やっぱり私もなにか……」
「ううん。大丈夫だよ。東雲さんは、ここで神様とクゥリと……トルハちゃんを守ってあげてほしい」
西條くんの口ぶりだと、神様がこの王都にいることもあちらにバレてしまっている。そうなるとあっちは神様を探そうともするはずで、その危険をクゥリに押し付けることは出来ない。
それと、耳打ちするように僕は東雲さんに顔を寄せる。
「悪魔って聞いてから、神様の様子が変な気がするんだ」
たぶん、何か理由があるんだろう。悪魔宗教の引き起こした汚染、そしていまこの場にいるのが悪魔(推定)なのだから、神様としては侮辱にも近いのかもしれない。
明確な敵が現れてしまったのだ。
もしもの場合にも備えて、やはり東雲さんには待機してもらいたいと考える。
僕はとりあえずあと地図の読み込みかな。聖水の位置までの最短ルートだったりを、しっかり把握して頑張らないと。
話の流れもあるし、配役の都合上結局落ち着いてしまったけれど、班長ということもあり、僕が一番大きな責任を持つこととなった。
胃がキリキリしそうだ。負けず、頑張らないと。
「頑張って、頑張って、みんななら、出来るよ」
「……ありがとう、クゥリ」
にかっと笑ってくれるクゥリに勇気付けられて、綻ぶ笑みのままに頭を撫でてあげる。
暗い顔をしてばっかりじゃダメだな。
「よし、決めた!」
バッと立ち上がった。隣にいた東雲さんが僕を見上げ、大の字に寝転がっていた北斗さんがビクッとしながら僕を見て、ちょうど素振りを終えて帰ってきた西條くんと目が合う。
「トランプで遊ぼう!」
しーんとした静寂に恥ずかしくなりつつ。
北斗さんが、すぐにおー! と僕に賛同した。東雲さんは戸惑いながらも優しく笑ってくれて、「じゃあトランプ持ってくるね」と言う。クゥリはトランプがなんだか分からないだろうに、ワクワクしたようにぴょんぴょんと跳ねて。
「……おう」
西條くんは、照れたように後頭部を掻きながら座ってくれる。
みんなで囲うように、円を作って座りながら。
「ババ抜きと七並べと大富豪。どれにする?」
「ババ抜きにしよ!」
「いいね。クゥリもやろう、大人数でやると楽しいゲームだから」
「うん、うん!」
カードをシャッフルする。五人分に配っていく。
「トルハが元気になったら、みんなでやりたい」
「うん、そうだね」
二枚合わせで切っていく。ジャンケンをする。時計回りに引いていく。
カードを一枚飛び出させてみたり、目線を読まれないように隠したり、ニヤリと笑って嘘をついたり。それはもう、大富豪を楽しんだ。
初心は忘れないでいたい。ついつい忘れてしまうけれど、僕らはこの通りただの高校生で、世界を背負うにはまだ早い。
「わ、イチ上がりだ!」
「あ、クソっ」
「おお、東雲さん強い!」
「もー! いっつも最後まで残るんですけど!」
「にひひ、レナ、すごく、分かりやすい」
時間は惜しいけど、希望がある。だからこそいまはこうやって、養うことに意味がある。
なかなか、初日に襲撃を受けてから、僕らの旅路は楽しいものではなく過酷なものへとなってしまったからね。
楽しもう。うん。僕らにだって、それくらいの自由はあるはずだ。
いっぱい遊んで、いっぱい寝て。
いっぱい英気を養ったら。
―――――僕らが世界を救うのだ。
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