Chapter.27 改めて、災厄の四人
それから。地下シェルター。
夜、その日の収穫を報告する場で、僕は日記と置き手紙を差し出す。
解読出来ない置き手紙の方は、神様に尋ねていた。
『先代のものか?』
「なぜ分かったんですか?」
『東雲と書かれている。そうさな、これは宿の主人へ向けた手紙だ。感謝と謝罪が綴られている。そして、決意だ』
「決意?」
『ふん。手遅れだがな、愚かしい』
「……なんて書いてあったんですか?」
『……………責任を取ると。汚染が始まったあとだろう、既に終末を迎えている時点での決意の言葉だ』
……なるほど、と思った。
合点はいく。宿屋の状況を見ても、あの部屋以外は悲惨な状態。東雲悠人は、懺悔のつもりでこれを書き残したのだろうか。
日本語で書かれた、誰にも読めるはずのない日記を共に残して。
「この世界には、何があったんですか」
神様はすぐに答えなかった。
いつも以上に間を置いて、重々しくも『うむ』と頷く。
『間違いなく、人災である。カルト的な悪魔宗教による、神にすら見過ごせぬ冒涜が、この世界にはあったのだ』
「カルト的な、悪魔宗教……」
それが引き起こした人災。世界を絶やすほどの汚染。
かつて、およそ二十年前、この国はそうして崩壊した。
毒も、魔物も、あの女の子の黒い血も。全ての原因は、人によるもの?
『先代は、それを阻止しなかった』
……思わず息を詰める。そうだ、だけど僕らは、今日この日まで先代というものを勘違いしていた。勘違いしていた分、神様の言葉と日記の中身に、僕らは一つの安堵さえ感じてしまう。
だって、
「……災厄の四人って、お母さんたちのことだと思ってました」
日記を取り出す。東雲さんの心配そうな顔、北斗さんの興味津々な顔、西條くんの仏頂面が、見せつけた手帳に注がれる。
「日記、先に読ませてもらったんだけどね」
二十年前のその景色。
今まで聞かされていた、神様の尺度で図られたものじゃなく、当時の彼らの視点の景色を。
「――みんなも見てほしいんだ」
いまここで、共有しておきたいと思う。
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