第六話 王都潜入作戦

Chapter.17 開門に向けて

 聖水。それは、浄化魔法の影響を色濃く受けた、ただの水が変質したもの。


 よって、王都内での聖水というものは、噴水や大衆浴場跡から、水溜りレベルにまでその可能性は存在する。


「とりあえず、王都の中に入ろう」


 現地協力者としてのクゥリを迎え、スマホで確認して午後の二時。

 まだ動く余裕は全然ある時間帯に、クゥリから貰った果物で軽すぎる食事を済ませた僕らは、行動を再開することにした。


「クゥリ、門がどこにあるかは分かる?」


 探索の途中だったこともあるけど、今のところ、ぐるりと王都を囲っていると思われる城壁の途切れ目や門の情報はまるで集められていない。そのあたり、クゥリに情報を求められたらかなりの時短になると思うし、そうでなくても時間のあるうちに王都の中には入りたい。


 もう、あの空を飛んでいた魔物もいなくなっている頃だろう。


「知ってる。でも、門は、危ない。魔物が張り込んでるから。入れない」


 手強い……。

 思わず顎に手を当てて、ふむ、と方法を考えてみる。

 と、挙手をしながら北斗さん。


「あ、あのさァ、入ってきた梯子みたいに地下から内側に出る道はないの?」


 確かに地下通路への入り口のようなものが王都のなかに繋がっていれば、それが一番早いだろうか。クゥリのほうへ尋ねるように振り向いてみると、彼はうんと頷いてくれたものの少し難しそうな顔をした。


「ある。でも、開けた時に見つからないか、心配。クゥリ、そっちの扉は使わないから」


 それもそうだ。僕らはお客としてここに招いてもらっているけれど、だからといってここを危険に晒すような真似は出来ない。


 病気の女の子もいるわけだしね、それは僕らがしっかりしなきゃいけないことだ。


 じゃないと、親切にしてくれているクゥリに示しが付かない。


「外側から、開けて、とりあえず入口さえ確保出来れば……」

「門を一度だけ越える必要はあるけど、今後が楽になるかもしれない」


 東雲さんが、僕の思考を引き継ぐように言葉にしてくれた。

 僕はついつい笑顔になって、彼女に対して大きな肯定を見せる。


「なら門を越えるなら、最小人数がいい。リスクを取って残機が残っている人にしたいから、僕は入れなくて申し訳ないんだけど……」


 北斗さんが気まずそうに、頬を掻きながら目を逸らした。

 僕はそんな北斗さんの様子をじっと見つめてから、一つの作戦を立案する。


「うん。必要なのは、扉を開けられるような力がある人と、それと魔物を引き付けられる足の速い人」

 ピク、と西條くんが反応する。北斗さんは、ハッと僕の言っている内容に気付き、待ったを掛けようとしてくるけれど。


「西條くん! 北斗さん! ごめん、お願い出来ますか!」


 非力じゃダメだ。足が遅くてもうまく出来ない。だから、この場合最適なのは、運動能力のある二人となってしまうことに正直とても申し訳ないし、やるせないと思っている。


 誠心誠意頼み込めば、西條くんは何も答えないが立ち上がる。北斗さんは、何かを言いたそうに口をパクパクとしていたけれど、頭を下げる僕の姿を見て溜飲が下がったようにため息を吐いてくれる。


「……いいわよ。やればいいんでしょ」


 西條くんは静かに頷く。

 本当に、頼もしい二人だった。

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