Chapter.13 見つかった?
理解するまでに時間が掛かった。
魔物に襲われるなんて勘弁だと思いながら僕らはすぐに一階へ降りる。
「東雲さんまずい! 移動する準備して!」
階段をせっせと降りながら一階にいるであろう東雲さんに声を掛ける。西條くんはどこまで行ったんだ、急いで合流を図らないと。
北斗さんが言うには、こっちに向かってきている気がすると言うのだ。
「どうすんの!?」
「それ僕に訊く!?」
ドタバタと。
そんな急いで階段を降ろうとするから、登る途中には気付けていた、一段底の抜けてる足場に――見事片足を取られてしまい、世界がスローモーションに――……。
「へぶっ」
「ちょっ、きゃあ!?」
待って。なんでこんなことに。
死にそう……。
「北斗さんお尻デカイって……」
階段を転び、受け身は取ってなんとか立て直せるつもりだったのに、さらに上から降ってきた北斗さんのお尻に頭が地べたとサンドされ、潰されそうになりながら僕は遺言を残そうとする。
と、そそくさと立ち上がった北斗さんが顔を真っ赤にしながらその短いスカートを抑えて「キッッッッッモ!」とゲシゲシ僕の身体を蹴ってきた。
待って、ごめん。許して。本当に死んじゃう。少なくとも階段で転んだ人間にする仕打ちじゃない。ごめん。待って。残機なくなっちゃう。
「南田嫌い!」
本当にすみません。でもそれどころじゃないです。わりといま動けないです。
骨折れてない……? 大丈夫……?
僕死なない……???
ゆっくりとした動きで慎重に起き上がる。若干痛いけど、なんとか動けそうだ。階段の段差に取られた右足の脛がジンジンとして、二つの意味で胸が痛い。鼻血は垂れそうだけど必死に抑えて我慢する。
転落には気をつけましょう。
「は、早く、移動しようか……」
北斗さんの視線が痛い。僕は被害者のはずなのに……。
というかこんなことをしている場合じゃないんだって。
僕たちのドタバタに、慌てるように駆けつけてくれた東雲さんにも軽く説明をして、建物からは飛び出すように森の中へ移動した。
神様は東雲さんに抱えられていた。
「西條くんはどこまで行ったんだ」
頭上に注意を配りながらもそそくさと分担行動を始めた地点から、西條くんが歩いて行った方向へと向かう。
あの魔物がなんなのかなんて分からないけど、とりあえず見つからないに越したことはない。今朝の襲撃があった手前、魔物とは本当に関わらない方がいい。
「あ、そっか……」
ついついスマホを頼りそうになるよね。独りごちて、スマホを上着のポケットへとしまう北斗さんに理解を示しながら。
しばらく歩くと、西條くんの後ろ姿があった。
「西條くん!」
「………」
近寄ると、西條くんは振り向いてくれたが僕らに返事はしなかった。
その態度にちょっとした違和感を覚え、続いて視線を誘導させてくる彼のジェスチャーに僕らは応じて覗き込む。
――西條くんの目の前には、使い古されたような麻布を外套のように羽織っている、細身の少年の姿があった。
「……!」
顔はよく見えない。大きな布をそのまま頭にかけて、包まっているような服装だったが、その隙間からは痩せ細った体が伺える。ボサボサな髪も麻布から飛び出し、霊鬼のような、そんな儚げな少年は、手元に見覚えのある禍々しい果物をいくつも抱えていたけれど。
西條くんは何をしてるんだ……?
僕には西條くんの意図が分からず、待つ余裕もないのに突如として現れた少年のせいで僕らも窺う姿勢しか取れない。
ただ、ゆっくりと西條くんに近付いた。
そして、その少年は俯いていた顔を目一杯上げて、僕ら四人のことを見上げる。
金色の目をした少年だった。
すると、彼はまるで僕らを歓迎するように、ゆっくりと八重歯の生えた口元を覗かせる。
「き、ひひ、人、いっぱい。すごい。楽しい」
――それは。
ニカっとした、とても愛らしい笑みだった。
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