第45話 月の間

【前回のあらすじ】

マイクは米粒に分裂したすしを追いかけ、物騒空間中を走り回っていた。

加えて、高橋と箱人間メイドはエリザベスを追いかけていた。ために。




高橋は音より少し遅い程度のスピードで走る事ができる靴を履いているので、なんとかエリザベスを目視できるほどの距離まで近づいていた。

箱人間メイドは普通のヒールで高橋よりも速いのだが。


そして肝心のエリザベスだが、物騒空間の廊下にいる人間たちをまるで当たり前かのように切り裂いて進んでいた。

彼は光よりも遥かに速いスピードで走っているため、切られた人は切られた事にすら気づかないだろう。


おかげで彼の後ろを走っている高橋と箱人間メイド2人には、返り血がついていた。


ブシャァァァァァァァ


「(また1人犠牲に……俺のせいだ……)」


彼は足を速く動かす!それに気づいた箱人間メイドも、スピードを上げた。




ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド









一方で すしも、エリザベスの元へ向かっていた。


「(ヤバい……侵入してきた人が多すぎる……全部1人で相手じゃまずい……!

今は敵が1人だからまだしも、応援が来たら負ける……)」


すし(シャリ)は物騒空間の螺旋階段を進んで行き、後ろから来るマイクから逃げていた。


「おぉぉい、待てーー!逃げるな卑怯寿司ーーー!!」

↑マイク


「(あの人だけなら僕でも倒せますが、やはり心配……早くエリザベスの元へ……!)」



ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…




ズドォォォン


マイクは米粒を20個ほど撃ち落としたッ!


ブシャァァァッ


「ふごっ⁉︎⁉︎……チッ」


すしは次々と階段を登った先にあった扉に、元の姿へ戻って入る。マイクも遅れて入った。


そしてエリザベスたちも、廊下の先にあった扉に入った!
















ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ



扉を抜けると、壁が宇宙空間の場所へ来た。

……いや、壁という表現は違うかもしれない。

壁が無い、本当に宇宙へ繋がっている場所だった。

エリザベスと米粒状態から元の姿へ戻ったすしは、向かい側の扉から出てくる。


「あ!」「お」


続いて、マイク、高橋と箱人間メイドが出てきた。


「……⁉︎……う、宇宙…?」


「は、箱人間メイドさん、ここは⁉︎」


つきでございます。

宇宙空間と物騒空間を直接繋げている部屋ですが、酸素はありますのでご安心ください」



エリザベスが口を開く。


「高橋……ここまで来たとはな」


「え、エリザベスさn」

「なら、会わせてやっても構わない」



彼は上を向いて、突然叫んだ!


「父上!!!」

「父上⁉︎⁉︎⁉︎」





すると、エリザベスの足元が突然光り出し、部屋の中央に巨大な鳥が現れた。

約200mの巨大な背丈、頭の上にはアンテナがついている。

尻尾は九尾の狐ような大きさと数を誇り、触り心地は想像できないほど。

手と足の爪は鋭く、輝いて見える。

そして顔には、長い嘴とつぶらな目がついていた。

その目にはどこか恐怖心があり、目と目が合うだけで頭がおかしくなりそうだ。


サァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ………


謎の光と音を出して、巨大な鳥はエリザベスを見下す。そして言った。



「………バカな鳥が」


低い威圧感しか感じられない声……。

エリザベスは頭を下げ、膝まずいた。


「父上…どうかお助けください。ただ今人間共に、物騒空間が侵略されております。

箱人間と現実が食い止めておりますが、そろそろ限界そうです。

箱人間ウサギには国会議事堂を襲撃させておりますが、今帰還させております。

ど、どうかお力を……」


「黙れ鳥。そこにいる人間共は誰だ?」


巨大な鳥は指を、高橋に向けた。エリザベスは頭を下げながら言う。


「えっと……その……」


「目の前の人間1匹すら倒せない無能は、人に頼るな」

「…………」



高橋は箱人間メイドに耳元で聞いた。


「誰ですか?あの鳥」


「エリザベス様のお父様、ペンギン様でございます。

この宇宙を作られたお方で、戦闘力はエリザベス様を遥かに上回ります」

「えぇ………」


見た目は明らかにペンギンでは無いが、名前はペンギンらしい。

彼は口を開くと、またエリザベスを罵った。


「お前は何か思い違いをしているな?

その日本人に特別な感情でも抱いているのか?

おい、エリザベス…エリザベス!!」


彼の指先が光ると同時に、エリザベスは吐血したッ!


「ブォォッ⁉︎⁉︎………グフッ。

め、滅相もございません……私はあの日本人の事なぞ、一切信用しておりません」


「では○せ、ここで」

「え……」


「すしの後ろにいるアメリカ人はどうなんだ?答えろ」


「え………し、信用しておりません」


エリザベスが答えると、マイクは呟いた。


「そりゃ敵だからな」


その薄い発言を、ペンギンは聞き捨てなかった。


「それは敵だから、だろう?日本人は箱人間メイドと一緒に来たらしいが、それは許可したのか?」


「え………」

↑エリザベス


「お前は矛盾している事は気づけ。どういう事かわかるか?

お前はか、覚えているのか?

方針を変えたのか?それとも道を踏み間違えたのか?」


ペンギンは足の爪で床を小刻みに叩きながら、汗をかいているエリザベスに静かに怒鳴った。

高橋も箱人間メイドもすしもマイクも緊張が解けない。







「エリザベス、答えろ」


「そ、それは……確か、アルビノの生物兵器を始めた理由は、憎き人間から身を守るため…でごさいます」


「日本人を○さないのか?なぜ?なぜ侵入を許可した?

お前は貴族に裏切られて、それから人間を信用しなくなったのでは無いのか?」




「………私は………」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る