第42話 日本の寿司
【前回のあらすじ】
マイクは、現実くんの分裂体の1人に吹き飛ばされ、別の場所で1人、遭難していた。
「Where am I!?︎
……そうだ、俺は吹き飛ばされたんだ。
ロッキーは大丈夫か?……まぁあいつの事だし大丈夫かぁ」
起き上がったマイクは辺りを見渡した。
ドーム型の殺風景な大きな部屋で、東京ドームの比じゃなさそうだ。
床や壁が全て白いパネルでできており、寒い風が吹く。
周りに誰もいなさそうだ。
「俺1人だけここに飛ばされたのかぁ。とにかく、戻るぞぉ」
銃を構えながらも、誰もいない事を知ると彼は、リラックスしながら歩き始めた。
ドームと言っても、天井は満天の星空で、プラネタリウムに近かった。
観客席は無いものの、こうやって床に座ったり、寝転がったりして、ここで過ごしたいものだ。
「……少し休むかぁ、皆んなには悪いが」
そしてマイクも床に座ろうとしたその時!!
ガチャーーーーーーーン!!
いきなり皿が飛んできて、床にぶつかり、割れた!
「うおっ⁉︎」
慌ててそちらの方を向くと、目がついた寿司がいた。
赤いマグロのネタを帽子のように被っている。
「⁉︎……寿司⁉︎」
「おや、まさかアメリカ人だとは……!
失礼しました、僕、すしと言います。
あ、日本の寿司は食べてみましたか?」
すしはペラペラと英語で話し始める。
マイクは困惑した。
「(寿司って日本食なのに英語話せんの⁉︎)」
「驚いている様子ですね。
まぁ寿司がいきなり英語で話してきたら、そりゃ困惑するでしょう。
僕は英語なら少しだけ話せますよ。
本の虫さんは26個くらいの言葉を話せますが。僕もまだまだ勉強しなきゃですねぇ。
そうだ 木彫りのイスとタブレット、ムムムと書かれたボール、雪だるま、サイコロを見ませんでした?
合流しようと思っているんですけど、全然見当たらなくて……」
「え、いや、見てない。
(こいつも倒すか捕まえた方が良いかな?敵対はしてなさそうだし、今のうちに!)」
マイクは目で追いつけないほどの速さで、銃を構えると、すしに向かって撃った!!!
ズバァァァァァァァァァァァァン
「⁉︎⁉︎⁉︎」
「ここですよ、アメリカ人さん」
目の前にすしはいない。
マイクは見上げると、タコの足を被ったすしが、天井にへばりついているではないか!
「⁉︎⁉︎⁉︎……Octopus⁉︎⁉︎」
「驚きました?僕、頭に被ったネタによって、いろんな能力が使えるんですよ。
今はタコを被ってるので、タコのように吸盤で張り付く事ができます。楽しいですよ〜。
今度はこれにしますか」
すしの頭に、黄色いネタが乗った。
マイクは寿司にあまり詳しくは無いので、わからない。
「おや、逃げなくて良いんですか〜?」
「お前みたいな日本食に、誰が逃げるかよぉ?」
マイクは強気で言う。少し怖かったが。
「ふ、後悔しないでくださいねっ!
アワビーむ!!!!!!」
床へ降りてきたすしの頭のネタから、黄色いビームが放たれた!!!
ズバァァァァァァァァァァァァン
「ぐわっ⁉︎⁉︎」
シュウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥ………
マイクは避けきれず、左腕を大火傷してしまった。
「くっ、熱い!!日本の夏よりも熱い!」
「でしょう?どうです、アワビーむの力は。高熱で焼かれる気分は」
マイクは右腕だけで銃を撃ったが、やはり躱された!
その後、すぐにすしは皿を発射する!
パキーーーーーン!パキーーーーーン!パキーーーーーン!パキーーーーーン!
彼の体から次々と生え、飛んでくる皿を避け、マイクは銃を撃つ!
すでに火傷し、麻痺した左腕は、力無く揺れていた。
すしが煽る。
「なんか左腕がヤバくないですか?楽にさせてあげますよ!」
スパッ!!!
「⁉︎⁉︎⁉︎」
ブシャァァァァァァァ
突然飛んできた皿が横切った直後、左腕が切断された!
「⁉︎⁉︎⁉︎……(え⁉︎⁉︎な、なんで⁉︎⁉︎いつ⁉︎⁉︎
いつ切られた⁉︎⁉︎俺は反応できなかった⁉︎⁉︎
皿の軌道を自由に操れるのか⁉︎そんなん避けられるか!」
バタン
膝を床につけ、切れた左腕を押さえるマイクに、すしがさらに言う。
「もう戦闘不能ですか、早い……。では、さよなら」
ズドォォォン
シャリとネタの間から、粘り気のある水が出てきて、巨大なボールのような形になると、マイクを包んだ。
ジャボッッ
「⁉︎⁉︎…ふぐっ⁉︎⁉︎」
彼は水の中でもがき苦しむ。すしは笑いながら言った。
「ここ、物騒空間に来るのは、生物にとって最も重大な罪。
あなた方は罪を犯したのです。だから、幽閉され、窒息しても仕方ありませんね?
そもそも、人の所有地に勝手に上がり込むのが悪いんです。
大人しく反省してください」
「ほがっ⁉︎⁉︎あっあっあっ⁉︎」
「苦しいようですね、では」
すしは冷たい目でマイクを見ながら、ドームから出ていこうと歩いていった。
マイクは残り少ない息で、水を突き破ろうと試みるが、水が柔らかすぎて、なかなか破れない。
「その水の檻は柔らかいので、壊す事はできませんよ」
「ふごーーー⁉︎⁉︎」
腕や足を振っても、なかなか壊れない。
このドームに、水の檻とマイクは置きざりとなった。
ただ檻の中で漂う彼の心は、放心状態となっていた。
「(結局俺、何もできずに終わったな。
ヒーローになりたくてこのチームに入ったのに、何も結果を残す事なく、幕を閉じるようだ。
ロッキー、最後に会いたかったよ。
終わる時は一緒に終わりたかったよ)」
力の出ない腕を前に出したが、やはり何も起こらず。
星空の下の海から見える景色は、こんな感じなのだろうか?
「諦めんのかぁー⁉︎そこで!」
どこからか声がした!仲間か⁉︎
「……!……………(いや、来ていないな。空耳か)」
諦めんのかぁー⁉︎そこで!
「⁉︎⁉︎……(今度はしっかり聞こえた……。
なんなんだよ、誰だよ!どこかで聞いた事のある声……)」
諦めんのかぁー⁉︎そこで!
「(ロッキーだ!ロッキーの声だ!
でも近くに誰もいないぞ⁉︎なんなんだよ………。
もしかして、俺の心の声?)」
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