第34話 軍事利用

【前回のあらすじ】

ロシア兵士たちが、本の虫の気を逸らしてくれたおかげで、なんとか討伐に成功した黒木。

その様子を、タブレットは使い魔を通じて見ていた。




「ヤ、ヤバイ!エ、エリザベス様ニ報告シナケレバー!

サイコロ……心配スルナヨ!

……イス、ムムムサン、すし……待ッテテ!」


彼は必死にエリザベスを探し、物騒空間中を飛び回った。





やっと見つけた!

エリザベスは、アメリカ人たちを一掃していた。

血や肉片が辺り一面に飛び散っている。


「ア、エリザベス様!

本の虫様ガヤラレテシマイマシタ!

加エテ、ロシア兵ガ侵入シテキマシタ!」


「チッ、結局かよ。ったく、何してんだあのミミズ!

おい高橋は逃げたよなぁ?」


「YES……多分」


「………もう知らん。お前はリストキャットを守ってろ。

俺の部屋にいるから、早く!」


タブレットはエリザベスの部屋へ向かった。







エリザベスは1人とり残されると、自身で切り刻んだ○体にかぶりつく。


「長い時間生きていると、食い物が美味いという感覚も無くなってくるが、かつえていた今の食事は実に美味だった……」


すると、エレベーターが近くに上がってきた。

エリザベスは振り返る。



そのエレベーターには、箱人間メイドと、高橋がいた!


「……⁉︎」


「……!……エリザb………ス?」


高橋は一瞬戸惑った。

目の前にいるエリザベスは、人を食べていた。

返り血を浴びて、右の翼が拳のような形状になり、人の頭を持っていた。


高橋は気味悪そうに、辺りを見渡す。

ここで倒れている人たちは全て、エリザベスが○した人たちだ。


侵入してきたのは彼らとは言え、その元凶は自身にあると、高橋は考えていた。


「……高橋……お前……」


エリザベスが突然叫ぶ!!


「早く逃げろ!なんで戻ってきた!

俺らが片付けるから、お前は会社で仕事しろ!」


「いや、社長には許可を得ています。

それより、あの、人を食べてました?」


「は?なんか悪いか。俺は雑食だぞ!

お前も牛や豚の肉を食うだろ」


「そうですけどぉ……。

そういえば、さっき知ったんですが、ロシアが軍事利用を目的として、エリザベスさんたちを攫おうとしているそうですよ」


「それはさっきタブレットから聞いた。

なるほど、侵攻中だから、か」


「おそらく」


「箱人間メイド、こいつを守れよ」


「はい」


箱人間メイドは礼儀よくお辞儀した。

高橋も返事する。


「さて、俺はちょっと用事があるから、ここでさらばだ」


「え、あの、ちょっとまd」


そう言った直後、エリザベスは消えた。

風が少し遅れて、2人にかかる。

高橋は驚いた。



「え⁉︎消えた⁉︎」


「いえ、光よりも速いスピードで走っていかれただけです」


「何あの人………鳥……。

と、とにかく追いかけて、謝らないと!」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



ロシア軍は戦車ごと物騒空間に持ってきたようだ。

彼らは明らかに個人ではない。国が指示して来ている。


そして、空間内の長い廊下を、戦車が並んで動いていた。



「......Стоп!(……止まれ!)」


角に差し掛かる前で、1人の兵士が叫ぶ!戦車は止まった。


すると、角から白い巨大な手が出てきた。

兵士たちは見上げると、は姿を現す。



それは、頭が四面体の、白い巨人だった!

3mは軽く超えるほどの大きな体は、全身白い。

巨人は太く、重みのある声で、兵士たちに話しかける。



「お、異国の人間だ。初めて見た。

ちょうど腹が減っていたんだ。きっと美味いぞ」


「Враг найден! Стреляй в меня!!(敵発見!撃てーーーー!)」


戦車は大砲で撃つ!


ズドカァァァァァァァァァァァァァァン



弾は巨人の頭を吹き飛ばしたが、すぐに再生した。


「お前ら、なかなかやるな。

俺は四面体箱人間しめんたいはこにんげん。そんじょそこらの奴らとは違ってt」


ズドカァァァァァァァァァァァァァァン


彼の上半身が、砲撃によって消し飛んだ!

同時に、心臓が破壊されたようだ。


彼の足が煙や塵のように崩れて、消えていく。

それを見たロシア兵士は、兵士全員に叫んだ。


「Если они уничтожат сердце, оно исчезнет! Никогда не уничтожайте только сердце!

(奴らは心臓を破壊すると消滅する!決して心臓だけは破壊するなよ!)」


「Понятно! Понятно!(了解!)」



四面体箱人間が崩れていく様子を、上の廊下から、スマホの虫は眺めていた。

本の虫が、頭に本を掲げていたのに対して、彼はスマホを掲げていた。


「(あの四面体箱人間がやられた⁉︎ヤバいヤバいヤバい!

マジかよ、拡散しとこ)」


カシャッ


彼はスマホで撮影した。

しかし撮影した時に生じる音が、ロシア兵の耳に届いてしまった!


「......!?︎ Все в этом! Распространите сеть! Захвати это!

(……⁉︎上だ!網を広げろ!捕獲するんだ!)」


「ヤベ、バレた!」


スマホの虫は一目散に逃げる!



その直後!彼の体が縦に真っ二つに切れた!

ロシア兵たちは驚く!彼らの仕業では無いようだ。



すると突然、壁が崩れ始め、外から巨大な箱人間が現れた。


いや、普通の箱人間ではない。腕は1本だけで、足は無い。

そして、浮遊していた。


驚くべき事は、その巨大な体。

10mはある。


「Что это за огромное существо...!(なんだあの巨大な生物は……!)」


「おう、お前さんたち、さては異国人だな?

スマホの虫は使えねぇ。俺がお前さんらの相手してやんよ」


箱人間は重い声で言った。

どうやらスマホの虫を切ったのは彼らしい。


彼は指からレーザービームを放った!


「⁉︎」


地面ごと粉々にしながら進むビームに被弾した戦車は次々と真っ二つに切れていく!


「ふはははははははは、見ろ、戦車と人がゴミのようだ!

お前もこうなるべきだったな、スマホの虫。

だがお前は敵を石化させる能力しか持ってないからな!

本の虫の下位互換だろう!部屋でスマホ見すぎだ!

Twitterやりすぎだ!少しは表に出ろTwitter廃人!」


彼は崩壊しかけているスマホの虫に言った。


「いや、あ、あ、あ、あの、すいません。

本の虫とはあんま喋った事無いのでわからないっす………」


「ふん、少しはコミュ力をつけろ陰キャ」


「ふ、浮遊箱人間ふゆうはこにんげんさん、すいません。

……早く復活できるよう、頑張ります」


恥を晒されながら、スマホの虫は消滅していった。

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