第33話 愚民

【前回のあらすじ】

本の虫と交戦していた救助隊。

隊員たちが次々とやられていく中、黒木は、ある集団を目にする!

それは、ロシアの兵士だった!




本の虫は入り口の方を見た。


「(ロシアの国旗が服についている……。

もしや、ロシア兵だな?)」


読書をやめると彼は、ロシア兵たちのいる入り口付近へやって来た。


「Эй, ребята, вы читаете книгу?(おい貴様ら、本を読んでいるか?)」


本の虫は兵士に話しかける。兵士たちは言った。


「Вышли какие-то насекомые! Жук с фиолетовой книгой на голове.

(なんか虫が出てきたぜ!紫の本を頭につけた虫が)」


「Книга? Я его не читал.(本?読んでないね)」


「Что?(は?)」



本の虫の目つきが鋭くなる。兵士たちは笑った。


「Эй, этот парень зол! Извинись перед кем-нибудь.

(おいこいつ、怒ってんぞ!謝ってやれよ、誰か)」


「Эй, дураки, если вы не читаете, это значит, что я сделаю это с вами.

(おい愚民共諸君、読書しないという事は、俺にやられるという事だ)」


本の虫は拳を上げた。しかしロシア兵が銃を撃つ!




本の虫の姿はいなかった。兵士たちは慌てて彼を探す。


すると直後、毒沼が噴水と化した!

毒の液体が噴き出す!!!


「Ух ты!?︎. Что-то вышло!(うわっ⁉︎なんか出た!)」


「Успокойся! Если вы уйдете, вы сможете справиться!(落ち着け!離れればなんとかなるから!)」


兵士たちは沼から少し離れた。


本の虫は怒鳴る!


「Эй, ребята! Это трусливо! Подойди сюда на минутку! Вот почему звери, которые не читают...


Люди, которые читают, не делают таких трусливых вещей.


Ты придешь во время вторжения, но ты думаешь, что сможешь победить меня, сделав это?


Этот кулак Бога, рука настоящих перемен, может быть превращен в книгу независимо от живых существ!


(おい貴様ら!卑怯だな!少しこっち来い!これだから読書しない獣共は……。

読書している人はそんな卑怯な事しない。

貴様ら、侵攻中でイキってんだろうが、そんな事してて俺に勝てるとでも思ってんのか?

この神の拳、本変邪消の手は、生物無生物問わずに、本に変える事ができるのだぁ!)」


本の虫は高笑いした。黒木は気づく!


後ろが疎かだ。今なら不意をついて倒せるかもしれない。


銃を手にし、背後へ向かう。


幸い、彼がいる木造の廊下は、すぐそこの階段から繋がっていた。


黒木は音を立てずに、慎重に歩き始める。

息すらも、勢いよくするとバレる。危うい。


本の虫はまだ説教していた。


「Те, кто не читал книгу, одинаковы независимо от того, существуют они или нет. Это бессмысленно! Итак...(本読んでない奴らなんて、存在してもしてなくても同じようなものだ。意味無いのだ!だから……)」


本の虫は顔の前で毒の塊を溜める。放って兵士たちを一蹴するつもりだ!

黒木は急ぐ!




しかし木造なのが悪かった!


少し急いだだけで音が鳴ってしまった!



「は?」


「⁉︎…」


本の虫は彼の方を向く!


黒木は咄嗟に銃を撃った!!



ズバァァァァァァァァァァァァン





「ファァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッッッッッッッッッッッッ⁉︎⁉︎」


銃弾は毒の塊に直撃し、本の虫の顔の前で破裂したッ!


ブシャァァァァァァァァァァァァァァァァ


顔が毒まみれになる。

そして一瞬、本の虫の動きが止まった。


「!……今だ!!!!」



黒木は銃を構えて、引き金を引いた。


ガチャッ……


「(あれ⁉︎)」


銃弾が出ない!弾切れだ!


「(ならば、投げろ!)」



黒木は回転をかけて、銃を投げた!!




ビュンビュンビュンビュン…





ブシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ


銃がぶつかった瞬間、本の虫の頭と胴体が、バラバラになって吹っ飛んだ!!!



「ハァ⁉︎⁉︎⁉︎は、破壊されたッ、心臓がぁァァァァァァァァァ!」



ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ


ボトッ



沼の上へ落ちた本の虫の上半身。彼は激怒した!


「ハァァァァァァァァァ⁉︎

読書してねぇ獣に負けた⁉︎読書してて頭も良いし、強い俺が⁉︎

な、な、なんでぇぇぇぇ⁉︎⁉︎」


黒木は廊下から、下を覗く。

毒の沼の上で、本の虫が怒鳴っていた。

まるで狂人のようだ。


「おいテメェ!貴様ァァァ!お前!

俺は負けてなァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァい!

だいたい本読んでねぇ奴は、生きている価値無し!

だからここで○ぬべきだったんだよ貴様は!

どうして暴力を振るうんだ!読書して少しは頭を良くしろ!

この、愚m」


本の虫は言い終わる前に消滅した。

それと同時に毒沼が消える。

黒木はため息をついた。疲労感が一気に込み上げてきた。


「ハァ、ハァハァ、ハァ。

(ヤバい、ロシア兵にバレる。隠れないと……)」


木の柱に掴まりながら、ボトボトと歩いて、少し座る。


敵はもういないと思うが、一応警戒しておく必要があった。





その様子を、使い魔を通じてタブレットが見ていた。

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