第32話 東京出兵

【前回のあらすじ】

本の虫はやって来た救助隊の半数を一瞬で一掃。

残りは黒木と運良く生き残った少ない隊員たちのみである。

彼らと本の虫の戦いが、始まる!




その場にいた隊員全員が本の虫を撃った!


バァァァァァン

バァァァァァン


バァァァァァン


本の虫は視認できない程のスピードで銃弾を避ける!

あの うねるミミズのような体で、図書館内を動き回っているようだ。

しかもここは暗いため、敵の姿を捉える事も難しい。


黒木は目を凝らした。


「(よく見るんだ……よく見ればわかる……)」









いた!本の虫!


彼は柱と柱の間にかかってある紐の上にいた!


黒木は銃をそこに撃つ!


バァァァァァン!!!





銃弾は本の虫の目を潰した!


ブシャァァァァァァァ



「ァァァァァァァァァ、痛てぇぇ!

何しやがる!この、タコぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」


突然 黒木の足元から、毒の沼が湧いてきた。

泡が大量に出ていて、触れただけでアウトなのがよくわかる。


「うわっ⁉︎」


「その沼はどこにでも出現させれるんだ。

不意打ちできる、便利な技なんだよなぁ。

貴様らのような、読書しない奴のために、作ったのだ」


本の虫の拳は青くなり、図書館中を飛び回った!

本当にいきなりで、黒木は一瞬戸惑った!


目の前で何が起きているかわからない!

ただ音だけが聞こえた。



ズバァァァァァァァァァァァァンズバァァァァァァァァァァァァンズバァァァァァァァァァァァァンズバァァァァァァァァァァァァン



触れたもの全てが本に変わってしまう拳で飛び回っているため、図書館の至る所が本に変わっていく!


陣殺本輪じんさつほんりん

俺の体に触れただけでも本となる!

自由自在にうねる体で暴れるぜ!」


本の虫の叫び声と、隊員たちの悲鳴が聞こえる!


黒木はすぐ近くにあった池の中へ潜って、隠れた。


目から上だけを出して、様子を見る。


「(なんなんだよ、あれ)」


「……ウワ⁉︎⁉︎ニ、人間!」

「⁉︎」


なんと池に生えている草むらの中から、タブレットとサイコロが出てきた!


「……⁉︎……もうバレたか!ならば力ずくで……」


サイコロのが黄色の目を出すと、そこから電気を放った!

ちょうどここは池なので通電する!


黒木は急いで銃を撃った!


ズドォォォン ブシャァァァァァァァ


「ぐわっ⁉︎」


サイコロは血を流しながら消滅していった。

タブレットは焦る!


「ヒッ⁉︎サ、サイコローー!

……ヨ、ヨクモヤッテクレタナ!」


彼の画面は虹色に変わった。黒木は銃を撃つのを躊躇う!


「(……⁉︎……なんだか、撃てない……精神的に)」


「精神攻撃ダ!ドーダ⁉︎」


「…………ゔっっ、ゔっ」


「今ノウチニ、逃ゲルゾー!」



タブレットは草むらから出ると、一目散に、飛んで逃げた!

黒木はハッとした。


「(……あれ⁉︎……俺は……⁉︎

……タブレットはどこへ⁉︎)」


彼は池から外を見ると、出口に向かって走っているタブレットを確認した。

どうやら充電切れだと、浮遊する事が難しくなるらしい。


黒木は今がチャンスと悟り、池から上半身を出そうとした!


その時!



ブシャァァァァァァァァァァァァァァァァ


手をつこうとした場所に、毒の液体が飛んできて広がった。

黒木は勢いよく振り下ろす手をギリギリで止めた!


「(危ねぇ。そうだ、本の奴がまだいたんだ。

先にあいつを……)」


辺りを見渡すと、粉砕された砦や回廊が崩れており、瓦礫や本が散乱していた。

この本が、仲間が変化したものなのか、元からあった本なのかによって、戦況は大きく変わる。



肝心の本の虫は、図書館全体に張り巡らされた紐を伝って、毒の塊を放っていた。


床は毒の沼で、とても足をつけられる程スペースが空いてない。


隊員たちは、崩れかけている回廊の上から銃撃していた。

本の虫はヒラリと躱す。


「(紐さえ切れれば、安全地帯を無くせる……)」


黒木は比較的、毒沼の影響が少ない場所を手探りで探した。

地下なので日光が届かず、更に蝋燭や松明たいまつ、ライトを使うと本の虫にバレる可能性がある。

そう安易に使うと逆に不利になる。



「痛ッ!!」


思わず彼は声を出した!毒沼に指が触れてしまったらしい。

火傷よりも熱い傷が、体中に響く。


「この毒は溶解液か」


タオルを出して指に巻いて、冷やしてみる。

痛みは和らぐが、傷は紫色に汚染されていた。




なんとか、黒木は少し高い所に辿り着いた。

ここは毒沼の影響が少ない。

彼は本の虫が乗っている紐に向かって撃つ!



ズバァァァァ…………





「貴様ら、読書は人生を豊かにする行為だ。

テレビ?スマホ?ラジオ?……ダメだ!!!!

そんな邪道、この俺の神の拳が、捻り潰す!

本は銃よりも強し。ペンなんかよりも強し。

活字文化こそが、この世の原理であり、掟であり、法則であり、そして神の域であーーーる!

だから、神の域に干渉できる読書は神!異論は認めん」


本の虫は紐の上で、銃を向ける隊員たちに説教していた。







パチッ


「⁉︎」



突然、紐が切れて、本の虫は落下した!


「は?」


「今だ撃て!!!」


黒木が唖然あぜんとしている隊員たちに叫ぶ!

彼と隊員たちは銃を連射した!!!




「(……は?……終わるのか?本の歴史が。

俺は皆んなに本を読んでほしくて、布教してただけなのに、銃に負けるのか?

……いやいや、本は世界最強だ!この世界で1番強いのは、なのだ!)」




落下しながらそんな事を考えていた本の虫は、急に体勢を変え、両手に本を生み出す!


「「⁉︎⁉︎」」


「己、愚民共ーーーー!○ねーーーーーー!!!!!!」



その本から、超巨大な暴言の具現化したような文字が、大量に発射されたッッ!


ズドォォォォォズドカァァァァァァァァァァァァァァン


ドンガラガッシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン



回廊が崩れ、隊員たちが毒沼に落ちていく!


本の虫はミミズのような胴体を伸ばして、遠くにあった木造の廊下にしがみつく!


「ふう、暴言ミサイルで敵がいそうな場所を破壊しておいた方が良いな。

紐は1本切れたくらいじゃ、俺を倒す事はできねぇよ」


本の虫は悠々とそこで読書を始めた。

周りには隊員たちが血を流しながら倒れている。

本棚に潰されたり、本に変えられたり、毒沼に溶かされたり。





一方、黒木は毒の影響が少ない、砦の上で寝転がっていた。

苔で覆われている汚い砦で、壁には頭蓋骨がかけてあった。


「ハァ、ハァ、ハァ……。

(あのミミズしぶとすぎだろ。周りを見てみたが、残っているのは俺ぐらいしかいない。

なんで、こんな所で………)」



その時、どこからか声がした。





入り口の方からである。


応援が来たのかと思い、黒木は起き上がった!


「(やっと来た!待っていたよ!)」


黒木は砦から上半身を出して、入り口の方を見てみた。


「………?」


















そこにいたのは、ロシアの国旗をつけた兵士たちだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る