第31話 読書しろ!

【前回のあらすじ】

タブレットとサイコロが逃げ込んで来た場所は、本の虫が1日中引きこもっている、巨大な図書館だった!

その後、すぐに救助隊が現れる!

果たして、彼らの運命とは⁉︎

……アニメみてぇだな。



「おいお前ら」


目の前にあるレンガ造りの塔の頂上にいたのは、本を被ったミミズ、本の虫は言った。


彼の手には、本があった。読書していたらしい。


「あまりうるさくするなよ。

今疲れてんだから、大人しく本を読ませてくれ」


本の虫は柵に置いてあるカップを持って、コーヒーを飲む。

そして言った。


「ところでお前ら、本読んでるか?」


「え」


隊員たちは困惑した。いきなり捕獲対象に、本を読んでいるか聞かれるとは思いもよらなかっただろう。


しかも目の前の生物は、逃げようとも隠れようともしない。


時々、手元の本をチラッと見るだけで、その場から動かない。



「(本なんて全然読まない……)」


「(読書か…2年くらいしてねぇw)」


「えー、あんま読んでねぇな最近。

まず家に本が無い……」


空気も読めない隊員の1人がそっと呟いた。


「は?」


本の虫の目つきが変わる。声も変わった。

手にある本を持ち上げて、そっと言った。


「何が楽しい?本を読まないで、何が楽しいのだ。

読書こそが最高の至福であり、神の域であり、この世の掟だろう。

そんな素敵で無敵な本を読まない、だと?

貴様ら、肝が据わってんな」


パタンと閉じた本を、隊員に投げつけた!


ブシャァァァァァァァ!!



瞬く間に血が飛んだ!


「え?」


「貴様、運が良いな。本も読んでない癖して」


その場で突っ立っている隊員は、周りを見ると、ほぼ全員血を流して倒れていた。

かなり後ろの方では、まだ隊員は残っていたが、前線は彼ただ1人。


「え⁉︎………」


「貴様、名は?」

黒木くろき……です」


「ほう」


本の虫は塔から降りてくると、こう叫んだ!!


「貴様には地獄を見せてやる。本を読まなかった罰だッ。

本変邪消の手、でな」


彼の拳が青くなると、一瞬で距離を詰めて、黒木をぶん殴ってきた!


「は⁉︎」


黒木は背中を反らして、本の虫の攻撃を避けた。

救助隊の一員なので、こういう敵からの攻撃を想定した訓練は受けていたので避けれたが、一般人なら間違いなく避けれなかっただろう。

そもそも視認できない。気がついたらもう目の前に本の虫がいたのだった。


もの凄い音が図書館に響く。


本の虫は言った。


「ほう、今の攻撃を避けるとはな。

貴様、そんじょそこらの一般人じゃねーな?

今の攻撃は当たるだけで本に変わる神の攻撃なのに」


「そりゃ救助隊なので、こういう訓練は受けてますよ……銃弾を避けるとか……。

そ、そんな事よりも、読書してない事は謝りますから……戦いはやめましょうよ」


「黙れ愚民!

貴様らが先にここへ来たんだろうが。

エリザベスの野郎は少し頭で考えた方が良いな。

敵を家に招待するとか、アホにも程がある。

それに加えて、まさか本を読まない奴らが来るとはな、心底うんざりした。

ここにいる貴様ら、俺は読書しない奴には厳しいぜ」


彼の頭をくっついた本がぐるりと回転し、おもてを向いた。


そこに、毒の液体がまるでボールのように現れ、だんだん大きくなる!


「(何か来るぞ……絶対)」


黒木は身構えた!本の虫の毒の液体は、いきなり弾き、黒木の方へ!



「⁉︎」



ズバァァァァァァァァァァァァン



毒の塊は気づいた時には、回廊にぶつかっていた。

回廊のレンガは布ごとドロドロに溶けてしまった。


「……⁉︎」


黒木は思わず振り向く!本の虫は笑った。


「ふん、読書をしろ!

しなければあの回廊みたく溶けるぞ」


救助隊員たちは、その一瞬、全員同じ事を思った。





「こいつは悪だ」

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