第30話 恐怖の図書館

【前回のあらすじ】

助けに来た救助隊に襲われたタブレット。

彼は雪だるまとサイコロに助けられ、雪だるまは2階に。

サイコロとタブレットは地下へ降りて行った。

救助隊は二手に分かれて、彼らを追いかける様子を、高橋は窓から見ていた。



恐る恐る窓から中へ入る高橋。


木でできた床が血まみれだ。いるだけで気分が悪くなる。

そして、殺意に満ち溢れている。


そこにいるだけで体が震えてきた。

物騒空間では無いので、寒さを感じるどころか、むしろ夏の暑さを感じるが、その殺意を感じたのか、セミの声が聞こえない。


一応、音より少し遅い程度のスピードで走る事ができる靴を履いているのだが、やはり恐ろしい。


我々は、触れるべきではない存在に触れてしまったのかもしれない。



「どうされました?」


箱人間メイドが話しかけてきた。高橋は驚く。


「え⁉︎あ、すみません、勝手に入っちゃって………」


「いえいえ、それよりも、なぜこんな所へ来たのです?

今は戦争中なんです。早く会社か家に逃げた方が……」


「エリザベスさんに、謝りたいと思いまして……」


「え、エリザベス様ですか?」



箱人間メイドは辺りを見渡すと、そっと喋りかけた。


「私がご案内します。ついて来てください。

幸い、物騒空間内の敵は現実様が片付けられております。

むしろ空き家の方が危険です」


「なるほど……了解しました。

お願いします」


メイドは壁にかかっていた時計を捻る。


すると、壁に穴が空いて、そこから寒い風が吹いてきた。


「え」


「どうぞこちらへ」


2人は中へ入る。

なんとそこは、物騒空間の吹き抜けの場所だった。

冷たく、凍える風が強く吹いている。

冬よりも寒い。そして謎の恐怖感がある。


箱人間メイドがミニスカートで、よく耐えられている事も怖いが。


「この辺りはまだ敵がいません。

早く行きましょう」


2人は白いなんとも言えない素材の足場の廊下を歩いていった。


このような廊下が何本も縦横無尽に伸びているのだから、悍ましい。



上の方には、ピンクのカップケーキに緑の一つ目がついた奴や、青いフグがいた。

一つ目がついた黒いドラム缶が浮いている。


「彼らは………?」


「手下です。あの青いフグこそが、煎餅の材料です♪」


「そ、そうすか……」


「あ、下へ落ちるととんでもない事が起きますよ。

下では現実様が戦っております」


「え、マジすか」


2人は、ちょうどそこにあったエレベーターを使って、上へ上がっていった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



その頃、サイコロとタブレットは地下へ続く階段を降りていた。


上の方から、救助隊の足音が聞こえてくる。


「ヒッ、早ク逃ゲマスヨ!」


「わかってるよ!」



2人は薄暗い廊下に辿り着いた。


蝋燭ろうそくが壁にかけてあるレンガ造りの廊下で、不気味だ。


サイコロたちもあまり来た事が無い。

なんてったって、この廊下は 本の虫が1日中引きこもっている図書館へ続く廊下だからだ。


迫り来る暴言が2人の恐怖心を煽る。


「は、早く行くぞ!」

「OK!」


2人は廊下の奥へ奥へと走る!

その後ろを救助隊が走る!










やがて、広い空間に出た。


蝋燭の光がほとんど無いため、辺りは真っ暗闇である。


苔が生えたレンガ造りの遺跡のような本棚で溢れており、そのそばには、布の床の長い回廊があった。


図書館というより、地下に建てられた、巨大な宮殿を彷彿とさせる。


タブレットとサイコロは、視界が悪い、隅の方にあった池の近くに隠れた。



その後すぐに、救助隊が現れる。


「なんだここは……」


「暗いな、ライトを頼む」


「広っ、なんかすげぇ幻想的だな」

「だよなぁ」






ズドォォォォォォォォォン


突然、隣の隊員が消えた。


「え?」



足元には、本が散らばっている。


「え」


「ちょ、見ろ、お前!」

「ん?」





目の前にあるレンガ造りの塔の頂上にいたのは、本を被ったミミズだった。

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