第17話 隠れて過ごした500年

【前回のあらすじ】

無事イスを救出し、帰還した本の虫、箱人間、ムムムさん。

イスには、助けてくれて感動して出てきた涙と、本の虫にいじめられた涙が出ていた。

その頃、ヨーワーインでは、アメリカによって、とんでもない事が起きたのではと、社長と高橋で話し合っていた。



「日本時間午後2時頃、アメリカ首都、ワシントンD.C.で、謎の生命体[UMA]が現れた事が、わかりました」


「ブッ⁉︎⁉︎⁉︎」


テレビの前に座っていた高橋はコーヒーを吹き出す!


「ハァ?UMA⁉︎⁉︎……確かに」


「現地の警察によりますと、赤い本を被ったミミズと、箱から人間の手足が生えた怪物。

それと喋るイスと浮遊しているボールがいたとの事です。

4匹は近くにあったボートに乗り、現在も逃走しています」


「……ヤバいな、アルビノの生物兵器の存在がバレたら、うちの会社だけでなく、彼らも危ない!」


高橋は吹いたコーヒーを拭くと、すぐにスマホで調べてみた。





「………やはり………」


Twitterでは先ほどのアメリカの事件で話題になっていた。

中にはUMAをアメリカに送ったのは私だとふざけた発言する人もいる。

しかし皆んな、本の虫たちの存在を怖がっていた。


「(下手に挽回しようと発言すると、逆に炎上してしまう。

社長に相談して、少し様子を見よう。

夏休みには、異世界転生体験プロジェクトという企画もあると言うのに)」


彼は少し社内を巡回する。足を動かすと、少し頭が働きやすくなるそうだ。


開発室につけられた窓から、中を見ると、その異世界転生プロジェクトで使用される機械が開発されていた。

あの機械は、異世界に人間を送る事ができる転送システムなのだ。


「(あの企画を大無しにしたくないからな)」



テレビがある部屋に戻って来ると、ニュースは次の話題を報道していた。

高橋はまたコーヒーを淹れる。


「東京都新宿区、市谷甲良町いちがやこうらちょうの中小企業に、謎の動物が侵入したとの事です」


画面が防犯カメラの映像に変わる。

映っていたのは、箱人間とムムムさんだった。


「ブッ⁉︎⁉︎⁉︎」


またコーヒーを吹いた高橋!


専門家は、アメリカの事件のUMAと、この映像に映っている生物は同じものだと言う。

高橋の汗が、コーヒーにポトッと垂れた。


「(ヤバい事になった)」


息が荒くなってきた。目が血走る!


「一応、社長とエリザベスに知らせた方が……」


高橋は携帯の電源を入れて、エリザベスに電話をかける。


プルプルプルプル…………



ガチャッ



「あ、もしもし」


「なんだ?……高橋か」


エリザベスが電話に出る。


「はい高橋です。

あの、箱人間と本の虫とムムムさんとイスが、外部の人間にバレてしまいました!」










「は?」


「本当に、申し訳ございません!」


「……………ちょっと来てほしい」


「え?」
















高橋はエリザベスたちの空き家へやって来た。


久しぶりに来たが、相変わらず古い見た目で、カビが生えている。

ここだけ時間の経過がおかしいような印象を受けた。


「エリザベスさ〜ん!」


高橋はエリザベスを呼ぶために声を上げる。

すると、家の縁側で、白いペンギンが翼を振った。エリザベスだ。


高橋はそそくさと彼に近寄る。


「遅れました!」

「座れ、隣に」


「え」

「早く座れ」


高橋はエリザベスの隣に座った。

箱人間メイドが、フグの煎餅とお茶を、トレイに乗せて持ってきた。


「ごゆっくり おくつろぎ くださいませ」


「すみません……」


高橋はお茶をすする。エリザベスが何か言おうとした。

高橋は慌てて啜るのをやめる。


「ハァ」


エリザベスがため息する。セミの声にかき消され、よく聞こえなかった。


「………俺はぁ、今まで、約500年もの間、ずっと人間から隠れて過ごしてきたんだ」


「そうですか。……申し訳ございまs」

「お前のせいじゃない」


エリザベスが言葉を放つ。




少しの間、沈黙が続いた。セミの声だけが響く。

蒸し暑い時間帯なので、高橋から汗が自然と出てくるはずだ。

しかし、なぜか今は出てこない。

エリザベスのこの緊張感が、逆に汗を出させないのか?


エリザベスが口を開いた。


「箱人間とムムムさんが悪い。

あいつらが、しくじらなければ起こらなかった話だ。

やはりあいつらはダメだ」


「すみません。ムムムさんは我々が頼ったばかりに」


「謝る必要は無い。

そうだ、田中が俺に相談してきたんだ」


「え?」

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