第16話 最悪な展開の予感

【前回のあらすじ】

イスを探しについにアメリカに降り立った箱人間、本の虫、ムムムさん。

喧嘩っ早く、本狂信者の本の虫は、最近読書していないただの通行人のアメリカ人を何の躊躇いも無く殺害。

まさに狂った宗教の信者のようだった。

更に逃走しようとした黒い車も殴り倒し、事態を悪化させてしまう!!

しかしその車からは、探していたイスが出てきたのだった。


「「イス⁉︎⁉︎」」「ムム⁉︎」


「え、皆さん、ありがとu」←イス

「○ね」

「え?」


ズバァァァァァァァァァァァァン


本の虫はイスに殴りかかった!


しかし、イスは消えていた。


「⁉︎」


「おい、いい加減にしろ」


箱人間がイスを背負っていた。本の虫が殴る直前に、イスを助けたようだ。


「そいつはぁ、本読んでないんだぞ!」

「自分の趣味を人に押し付けるな!」


「やだ」

「こいつ救えねぇ」


「ムムッムムームッム!」

「あ?」「ん?」「はい?」


ズキュン!


「ぐわっ!」ブシャァァァァァァァァァァァァァァァァ


箱人間は足から血を垂らしながら、その場でうずくまってしまった。

イスが転げ落ちる。


「大丈夫ですか箱人間さん!」


「撃たれた」

「え⁉︎」


本の虫はビルの方を指差した。

なんと、警察がもう動いていたようだ。

通報がいつだか知らないが、到着までがかなり早い。相当発展しているらしい。


警察は銃を構えて、生物兵器4人に言う。


「Raise your hand and put down your weapon!(手を上げて武器を下ろせ!)」


「「「「(武器なんて持ってない……)」」」」


黒スーツの男たちも、車からボロボロの状態で出て来た。


「Do you want to tell the group leader?(組長に伝えますか?)」


「No, we will deal with it alone.(いや、我々だけで対処する)」


黒スーツの男たちは無線で会話しながら、銃を構える!


ついに2つの勢力に挟まれてしまった生物兵器4人。

箱人間が垂れてくる汗を、腕で拭いた。


「チッ、仕方ねぇな」


箱人間の両腕のてのひらから、2mほどの巨大な箱が出てきた。


「箱怪物たちが囮になっている間に逃げるぞ!」


彼は3人にそう叫ぶ。

掌から出てきた巨大な箱2つから、今度は箱人間と同じように、筋肉がついた人間の手足が生えてき、そして目と口も現れた。


「「グォォォォォン!!!」」


箱怪物と呼ばれたその箱2つは、雄叫びをあげると、警察と黒スーツの男たちに向かって、車よりも速いスピードで走ってきた!


「What is this guy!(なんだこいつ!)」


「If you shoot, you can manage!(撃ってりゃなんとかなる!)」


警察が銃を一斉に撃つ!

しかし箱怪物は特に怯む事無く、警察官1人を強靭な腕で掴んだ!


「Help me! Help me! Someone!?(助けて!助けて!誰かっ!)」


「(……仕方ない……)」


箱人間は少し申し訳なさそうに、その警察官を見ながら、すぐ近くにあったボートに乗った。

帆がついた小さなボートだが、かなりスピードが出る優れものらしい。


本の虫とイス、ムムムさんはすでに、そのボートに乗っていた。

箱人間も乗り込む!


「少し遅くなっちゃったな!すまん!」


「いえいえ、わざわざ助けに来ていただき、ありがとうございます」


イスがお礼を言った。本の虫は興味なさそうに本を読み始める。


「おい船酔いすんなよ……」


4人を乗せたボートは、そそくさとアメリカを出ていった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「失礼します、社長」


その頃、高橋は、社長室に入った。

昼下がりの蒸し暑い時間帯で、外からはセミの声が聞こえていた。

もう夏になるのかと実感させられる。


窓が大きく、白いカーテンがあるゴージャスな部屋で、この会社の雰囲気に合わない。

おまけに植物が部屋の隅に植えてある。


中央の長い机とイスに、吉田社長が座っていた。

高橋は尋ねる。


「お聞きしたい事があるんですが、その、ライバル社[ツーヨーイン]に盗まれたものって、なんなんですか?」


「ん?」


社長は言う。


「それはな、[追跡バッジ]というものだ」


「追跡……バッジ?」


「つい最近開発した瞬足と同じ時期に開発したものでね、特定の生物を追跡する事ができるんだ。

元々ゲームに使用するはずだったが、さすがにやめて、今のバッジとなった」


「そうだったのですか。

………あ、そういえば、盗んだ相手はツーヨーインではなかったそうです」


「え?じゃあ誰だよ……?」


社長は急に汗をかき始めた。この部屋は冷房が効いていて、すぐにここまで汗をかく事は無いと思うが。


「(そういや、イスが攫われたから、箱人間と本の虫、ムムムさんがアメリカへ行ったんだっけ)」


「何か、思いあたる節があるん?」


社長が腕を組んでいる高橋に尋ねる。

高橋も汗をかいてきた。冷房がついた部屋とは思えないほどの量だ。


「もしかすると、アメリカの人間の仕業かも………」

「え⁉︎⁉︎」


「イスが攫われたらしいので、箱人間と本の虫、ムムムさんが助けに行ったんですよ。

ですが、イスは攫われる直前までエリザベスたちの家にいた……。


普通、エリザベスたちの家は我々とアルビノの生物兵器のメンバーしか知らないはずです。

なのに、アメリカが知っていたのは、もしかしてその追跡バッジのせいなのでは……と」


「だがなぜ彼らはバッジをつけたのかね?

とゆうかアルビノの生物兵器の存在が、アメリカにバレてるのかね?

そもそもバッジの事を知っているのもおかしい。

まだ公開してないんだぞ!」


「裏切った奴が、この会社の中にいるのでしょうか………」


「その可能性は十分ある。今後、周囲の目に気をつけるように」


「はい」

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