第13話 物騒要塞
【前回のあらすじ】
唐突に登場し、特にろくな活躍もしないまま終わった、ライバル社[ツーヨーイン]に盗まれた、社長の大切なものを取り戻すため、箱人間とムムムさんは出動!
しかし何が盗まれたものなのか、わからないので、帰る事になった。
「グォォォォォン」
頭が紫の球体で、腕がハエ叩きのカマキリのような巨大な兵器が、エリザベスたちの空き家の庭をノシノシ歩いていた。
その様子を、部屋の窓から覗くエリザベス。
机の上に置いてあるタブレットが言った。
「ナンカ、箱人間サント、ムムムサン、特ニ何モセズニ帰ッテ来マシタガ、良インデスカ?」
「……別に。
箱人間は適当に選んだ奴だから、何も期待してない。
ムムムさんは向こうが選んだ事だから、知らんけどな」
「ナルホド」
「とゆうより、早く近況報告をしろ」
「ハイ!現在ノ近況報告デゴザイマス。
本の虫→[ヨーワーイン]管理の図書館勤務。
彼ノオ陰デ、本ガ昨年ノ5倍以上借リラレタソーデス」
「あいつは読書を強制してくるからな。
本読まない奴は生物じゃないとか言ってくるし」
「ソーデスカ。
すしサン、現実くんサンハ、シッカリト、任務遂行シテイルソーデス」
「そりゃ良かった。やはりすしは使えるな」
「田中→[ヨーワーイン]のゲーム会社[ゲーマーイン]の開発したゲームのバグチェック。
最近仕事ニキテイナイソーデス」
「どうせプラモ作ってんだろ。あいつの事だし」
箱人間メイドが入れたコーヒーを飲みながら、庭にいる紫の兵器たちを眺めるエリザベス。
物騒空間とは大違いなほど、のどかだ。
木が数えられるほどしか生えていないため、ビルがよく見える。
都会の公園とは、こんな感じなのだろうか。
この庭は、物騒要塞と呼ばれている、先ほどの紫の兵器たちが警備している恐ろしい場所である。
この要塞によって、侵入者を防いでいるのだ。
しかしエリザベスにとって、物騒要塞は、1体1体が違う見た目の、紫の兵器たちを眺める事ができる、動物園のような場所である。
これが強者の余裕か。
「……もう1時か。
昼飯にしよう。近況報告は後で頼む」
「了解デス。オ食事、オ楽シミクダサイ」
エリザベスは部屋を出ると、食堂へ向かった。
タブレットはあくびをすると、眠りについた。
物騒要塞の1番奥にある倉庫には、いつもイスがいた。
木でできた簡易的な小さなイスで、目のような穴が背もたれに空いている。
趣味が無いので、こうしていつも倉庫に閉じこもっては、面白そうなものを探していた。
しかし肝心な事に、彼は上に何か乗っていないと移動できないようだ。
そのためいつも、座る部分にはビー玉が乗っていた。
「今日も面白いものねーかなぁ」
晴れた日は、よく倉庫の前でひなたぼっこしている。
もはやこれが趣味という。
兵器たちがそんな事お構いなく、イスの前に通る。
「はぁ、今日も良い日だねぇ」
そんな時、突然爆音が聞こえた。
ズドカァァァァァァァァァァァァァァン
「え⁉︎⁉︎」
イスが要塞の入り口の方を見てみると、紫の兵器たちが誰かと戦っていた。
「ハァ⁉︎」
兵器たちが戦っているのは、黒スーツを身に纏った男たちで、銃で戦っているようだ。
兵器たちは何も考えずに突撃しては、腕に装着されたハエ叩きを振り下ろす!
イスは怯えた。
「(え、なんで⁉︎⁉︎なんでわかったの⁉︎⁉︎⁉︎
この家は日本中探しても、アルビノの生物兵器と、ヨーワーインの人しか知らないのに!)」
よく見てみると、どうやら黒スーツの男たちは、日本人とは違った顔をしていた。
どこの国の人かは知らないが。
「(まぁ、兵器たちなら勝てるでしょ………)」
イスがホッとため息しながら、下を見た。
…………ビー玉が消えていた。
「え」
「I want you to come with your uncle for a moment.」
「ファ⁉︎⁉︎⁉︎」
背後から、重々しい声がしたかと思うと、突然黒スーツの男たちにイスは持ち上げられて、そのまま庭の外にある車に乗せられてしまった。
イスが目を覚ますと、暗い部屋にいた。
「……んっ………ここどこ?」
どこからか波の音が聞こえてくる。
そして声もした。
「(何か聞こえる。
なんて言ってんだろ……)」
「Is that wood-carved chair useful for anything?」
「I don't know. Well, it's going to be useful.」
「(僕、英語わからない……)」
「As expected, it will be a luggage storage. After all, that chair is a member of the biological weapons of albinos, right?」
「That's right! There's no way you'll regret bringing him to America!」
「(ん……?あ、アメリカ?)」
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