第11話 窃盗し返し

【前回のあらすじ】

暗殺の仕事を選んだエリザベスは暗殺を実行。

一瞬にして全てを消すその姿は生物兵器そのものだった。

他のアルビノの生物兵器メンバーも、着々と仕事を進めていた。



エリザベスとすし、現実くんが行った暗殺の件は、翌日すぐにニュースで報道された。

高橋はそのニュースを見ていた。


「昨日夜2時頃、新宿区しんじゅくく歌舞伎町かぶきちょうの路地裏で、安倍あべきよしさん、三浦みうら太郎たろうさん、氷川ひかわ鳴門なるとさん、葛飾かつしかあつしさんが、○亡しているのが、近隣住民によって発見されました」


「(エリザベスがやったのかな)」


高橋はポテトチップスを食べながら、会社の小さなテレビを独占して見ていた。

すると同僚が駆け寄って来た。


「なぁ高橋、ついに新しい商品が開発されたぞ!」


「おお晴輝はるき、例のあれ?」

「そう」


晴輝と呼ばれたその男は、開発室へと高橋を案内する。


この会社の開発室は、窓が無く、部屋全体が白い壁と床と天井で覆われている、非常に殺風景な部屋だった。


床にはルンバが1台いて、落ちたゴミを吸っていた。

そしてそのルンバが言う。


「あ、おかえりなさいませ、晴輝様」


「ただいま〜。

んで高橋、これが新しい商品[瞬足しゅんそく]」


晴輝が、机に置いてあった靴を持ち上げ、高橋に見せた。

赤いZと逆Zの模様が印象的な、スポーツ用品店にありそうな靴である。


「パクリじゃね?」


高橋が小声で言った。


「え、いや、この靴は履くと音より少し遅い程度のスピードで走る事ができるんだ!

これほどのスピードで動けるようになる靴なんだよ!

……Zの模様は…まぁ、なんつーか、その場の勢いでつけた感じさ」


「そ、そうか」


「試しに履いてみる?」

「遠慮しとく」


結構あっさり断られて、晴輝は困惑した。


「少しくらい悩んでくれよ……。

あ、そうだ、この前ライバル社になんか窃盗されただろ?」


「えマジ?」


晴輝は真剣な顔で話す。どうやら本当のようだ。


「ああ本当さ。

うちのライバル社[ツーヨーイン]の奴らが、会社内ここに侵入してきたんだよ!」


「マジすか」


「マジです。その窃盗されたものは社長の大切なものらしいんだけど、どうしようかって悩んでるんだよ」


晴輝が腕を組んで考える。高橋はボソッと呟いた。


「アルビノの生物兵器に頼めば?」

「え」


晴輝は聞き返す。


「良いのか?アルビノの生物兵器にこんな事を頼んじゃってさ」


「まぁ良いんじゃね?…で、頼むの誰にする?


「ってかまず誰がいんのか知らんけどさ」


「うーん」


高橋は名簿を見ながらコーヒーを飲んだ。


「うわコーヒー臭っ」

「え」

「嘘です」


「………………ムムムさんとかどう?」

「え、ふざけてんの?」


「いやそういう名前なんだが……」


高橋はムムムさんのプロフィール(写真付き)を見せる。晴輝はまた困惑した。


茶色い球体に、線のような縦に細い目と、横に細い口。

そして鼻は無く、代わりに顔の中央には、ムムムと書かれていた。


「マジじゃん」

「ほらな。

彼、空飛べるみたいだからさ、結構良いんじゃねって」


「プロフィールにはムムムとしか喋れないと書かれているが……」


「いや、言葉は通じるから、なんとかなると思うよ」

「じゃあ良いか。彼に頼るよ」

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