第5話 物騒空間

【前回のあらすじ】

突如現れた人間に戸惑う箱人間メイドは、主であるエリザベスというペンギンの元へ行き、指示を求める。

その指示は、その人間である高橋を○す事だった!

そんな事も知らずに、高橋は別の箱人間メイドに、エリザベスの元まで案内されるのだった。



「ここでございます。物騒空間の入り口は」


「ハァ……そうですか」


2人は扉の前に来た。大人2人分ほどの大きさを誇る扉で、ノブそのものが、握り拳ほどの大きさだ。

高橋は絶句した。


「(すげぇデけぇ)」


「ここから先は、危険性がありますので、ご注意ください」


「え?落ちる?」


箱人間メイドは、聞き返す高橋なんか気にせずに、扉を開けた!








扉の先は、青タイル張りの円柱の空間だった。


「え」

「どうぞこちらへ」


足場は白い直方体で、縦横無尽に並べられている。

風が冷たく、強い。そこにいるだけで、恐怖で足が震えそうである。


高橋は少しの間、息をしていなかった。その場でずっと立ったままだった。

箱人間メイドに声をかけられるまで。


「………高橋様?」

「え、あぁすみません。行きましょう」


2人は白い直方体の上を歩いた。高橋は下を覗いてみる。

下の方は真っ暗で、何も見えなかった。


「この下には何があるんですか?」


「マグマを保管している倉庫があります。

蓋を開けるだけでマグマがどんどん溢れて、今に私たちがいる場所も、飲み込まれてしまいますよ」


高橋はゾッとした。箱人間メイドが笑う。


「すみません。私たちの性質上、驚かさずにはいられませんので」




いつのまにか、黒い正方形の前に来た。


「この正方形はエレベーターでございます。

どうぞお乗りください」


「え、あぁはい」


高橋は落ちないよう、ゆっくりとエレベーターの正方形に乗った。

箱人間メイドに背中から押されないか心配しながら乗ったが、特にそんな心配はなかった。


高橋が乗るとエレベーターは光り出した。

壁や天井なんかは一切無い、まさに本当の正方形なのだ。


「ご安心ください。このエレベーターは落ちそうになると、落ちた人をエレベーター中央に転送するシステムがございます」


箱人間メイドが乗ると、いきなりエレベーターは上に動いた。

どこからともなく聞こえる歯車の音は、機械感を感じさせる。












ピコピコーーーン


音が鳴ったと同時に、高橋の視界に白い正方形が現れた。

その先には扉がある。


「5階、エリザベス様のお部屋でございます。どうぞこちらへ。

あまり緊張せずに、リラックスしてください。そう頭の固い方ではございませんので」


箱人間メイドがそう言いながら、目の前の扉を開けた。

高橋は身構える!







扉の先には、またタイル張りの大広間があった。


そして、その中央には、あの筋肉ムキムキ箱人間メイドがいた。



「「え?」」


「………高橋様……すみません」

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