第3話 メイド
【前回のあらすじ】
アルビノの生物兵器という謎の集団を探す事になった会社員の高橋。
浅草の捜索に悪戦苦闘したのだが、とうとうアルビノの生物兵器のメンバーと思われるすしを見つける事に成功した。
後を追った結果、謎の空き家に辿り着いてしまった高橋。この後どうする気か⁉︎
高橋は、空き家の前で立ち往生していた。
さすがに中に入るのはまずい。しかし、中に入る必要がある。
インターホンを押してみようか?……いや、目の前の家は、何年前のものなのかすらわからない。インターホンがあるとは思えない。
じゃあどうする?……せめてノックぐらいはしといた方が良いだろうか?
「(………いや、こんな所で何時間もかけるのはさすがにキツい!
早く入るぞ!」
汗をタオルで拭いて、ボトルの水を飲み、冷静さを取り戻した高橋は、咳払いをして、中に入る事に。
ガラガラガラガラ
「…失礼します………」
玄関の扉を開けると、長い廊下があった。……意外と綺麗。
玄関には靴がちゃんと並べられており、少し感心した。
外から見て左側には、大きな鏡と靴箱が。
右側には、棚とクリスマスツリー、植木鉢、カレンダーがあった。
カレンダーは3月のままだし、クリスマスツリーが、まだ飾られている。
礼儀正しいのか、正しくないのか……よくわからん家だ。
廊下の奥には部屋と階段があり、階段の横には、『芸術は自爆だ』と書かれた紙が貼られていた。
そして、なぜか……別に良いのだが、掃除機の音がする。
「すみませーーん!」
掃除機の音でかき消された声を、もう一度大きな声で言う。
しかし誰にも気づかれない。
「………入りますからねー!お邪魔しまーす!」
高橋は玄関の扉を閉めると、靴を脱いで綺麗に整え、バッグを膝の前に降ろした。
「(結構綺麗な家だな…木造建築の感じが良い……。
ここが仮の家だろうか?……まだ確定はしてないが)」
掃除機の音はどんどん大きくなる。近づいてきている証拠だ。
「すみませーーーん………」
高橋は廊下に扉があるのを見つけた。
ガラッ
恐る恐る開けると、蓮の葉が浮いている部屋に出た。
……人の気配は無い。
「(……いないか)」
高橋が扉を閉めようとしたその時!
「ど、どちら様です?」
背後から声がした!高橋は咄嗟に振り向く。
「あ、すみません!お邪魔しております、ヨーワーインという会社の者でございます、高橋です。
あなた様に用がありまして、先にお邪魔させていただきました」
彼の目線の先にいたのは、ロボット掃除機だった。
「え」
しかもあの有名な、ルンバだ。
ルンバは高橋の姿を見て
「あ、あ、ど、どう、も⁉︎⁉︎」
「(………ルンバ⁉︎)」
いや、どちらも震えていた。
高橋はルンバが喋った事に驚き、ルンバは人間がいる事に驚く。
ルンバは廊下の奥の方へ向かった!
しばらくして、ルンバが帰ってきた。
「(帰ってきた……あれ、もう1人いる?)」
ルンバがいる所に、ハイヒールを履いた人間の
「(良かった、
先に失礼しております、ヨーワーインという会社の者です、高橋です。よろしくお願いします。
あなた様方、アルビノの生物兵器に用がありまして、ここへ参りました」
「だそうです、
ルンバが
「え、箱人…間?」
今まで足元しか見ていなかった高橋、上を見てみた。
なんと、箱人間メイドと呼ばれる人は、頭が直方体の箱だったのだ!
その顔には、えくぼがついた、への字の逆のような口と、黒い
そして驚く事に、下半身は普通の人間と同じようだ。
腕や足はボディビルダー顔負けの美しい筋肉で構成されている。
身長もとても高い!
箱人間メイドは言う。高橋は気づかれないくらい、ゆっくりと後退りした。
「おやおや、お客様とは珍しい。200年ぶりですわ。
ルンバ、こういう時は、しっかりとおもてなしをする必要がございます。逃げてはなりませんよ?
お茶を注ぎますので、そこの部屋でお待ちください」
高橋は、さっき入った部屋とは向かい側の部屋で待たされた。
「(なんだったんだ今の奴。箱?人間?箱人間?)」
すぐに逃げ出したいが、追いかけてきそうで怖い。仕方なく彼は、大人しく待つ事にした。
やがて、扉を開けて、箱人間メイドが入ってきた。
「お待たせしました。紅茶とクッキーでございます」
「あ、ありがとう…ございます」
「何かお気に召さない事がございましたら、なんなりとお申し付けくださいませ」
箱人間メイドは、扉を閉めて、出ていった。
高橋は紅茶もクッキーも飲まずに、ただじっと、箱人間メイドが閉めた扉を見つめていた。
「(……本当にここ、アルビノの生物兵器いんのか?
いや、ここはメイド喫茶なんだ!そうだきっと!
ルンバは最新モデルなんだ!そうだきっと!
なるほどぉ、全て謎が解決された。なら安心できるわ)」
高橋は紅茶を飲んで、クッキーを食べる。
紅茶は独特の苦さがあって美味しく、クッキーは独特の甘さがあってとても良かった。
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