第1話 アルビノの生物兵器を訪ねて

東京都板橋区。ここにとある弱小企業の本社が立っていた。


名前は[ヨーワーイン]。

欲が強いが中途半端な吉田社長が起業した、とにかくなんでもやる会社で、扱った分野はかなり広いが、どれもこれも中途半端なため、あまり有名ではない。


以前、空飛ぶ車を作り、売り出そうとしたが、量産が難しく、社長が飽きたため、この話はなくなってしまったこともある。


まさに中途半端を具現化したような会社だった。

日本でも指折りの技術力だというのに。


「皆んな!エリザベス、って知ってるか?」


社長が部屋に入ってきた。

部屋の隅には扇風機が回っており、クーラーもついていた。風鈴も窓についている。

しかし従業員は皆んな、汗を垂らしながら、団扇うちわを構えていた。

イライラしながら、従業員の高橋たかはしは聞き返した。


「エリザベス?イギリスの?」


「いや違う。アルビノの生物兵器だそうだ」

「話が見えてこないです」


「この本を読め!読めばわかる」


社長は高橋に、先ほど見た古い本を渡した。


「なんですこの本。どっから持って来たんですか……」

「なんか倉庫にあった。興味深くないかね?」


「……………いやぁ、胡散臭うさんくさい」


「でもこんな本、日本のどこ探しても見つからないだろぉ?レアな品には違いない。

それに、浅草にそのエリザベスがいるのならば、探してみる価値はあるだろ」


「昔の人の本ですし、わからないですよ?

ってか、物語かもしれません。竹取物語みたく、これは空想上の話なんじゃないすか?」


「え」

「え(そこで詰まるか⁉︎)」


竹取物語あれって物語だったのか⁉︎空想上の話だったのか⁉︎」


「はぁ?」

「いや、俺は信じないぞ!あれは実話だ!実話に違いない!」


「そうですね、実話ですね」


高橋は雑に受け流しながら、団扇を置いて水を飲んだ。

社長はまだ諦めないようだ。


「も、もしエリザベスを見つけたら、高橋、お前をそれ相当に昇格させてやる」

「…………」


「給料アップだ!2倍だ!」

「…………」


「………お前、3倍が良いのか?」

「(別にそうじゃねーよ)」


「………じゃあお前は企業戦争で負けたいのか?」

「…………いやぁ、もう負けてますし」


「違う。負けと思うから負けるんだ。俺らはまだ負けてない」


「その頭じゃ幼稚園児にも負けそうですね」

「いや勝ってみせるわ!とにかく、早く!見つけてこいよ!」


「……こんな感じで今までやってきましたよね?

空飛ぶ車もこんなノリで作って、飽きたからやめて……。

どうなんです?」


「………た、確かに」


「俺は行きたくありません。なら、社長が探しに行けば全て解決するじゃないすか」


「いやぁ、俺仕事あっから」

「部下に仕事を押し付ける仕事ですね、わかります」


「と、とにかく見つけたらマック奢る!」




















「……………わかりました」


高橋は上着とバッグを持って部屋を出ていった。

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