アルビノの生物兵器 エリザベス 〜弱小企業の過ち〜

まめでんきゅう–ねこ

本編

第0話

2023年、6月。


弱小企業[ヨーワーイン]の吉田よしだ社長が、倉庫を漁っていると、謎の古い本が出てきた。

明治に作られた本なんかよりも、もっと古い。

少なくとも江戸時代は軽く超えるほどの古さで、懐かしさなんてものは感じられない。


「ん?何これ。こんな本あったっけ」


その古い本の表紙には、

化白鳥一味録ばけはくちょういちみろくいち』と書かれていた。


「(化白鳥?……なんだそれは)」


紐で縛られただけの本を開いた社長は、解読できるのか知らないが、本を読んでみた。









およそ9割の事が全くわからなかったが、社長は1つだけ、なんとかわかる文を見つけた。


『はたもとには、白きだるまのごとき形の鳥の率ゐる、物一味あなり。

その鳥の名はエリザベス。みづからの事をアルビノの生類兵と名乗りており、氷、ほど、重力、ほどを操るが能ふさう。

他にも、箱に人の手足の生えし物の怪や、すし、白き人、本を頭に乗せし蚯蚓みみずなど、この世にあべきなき生類が、彼をしのべり。

エリザベスは神にて崇められ、裕福なるよすぎしけれど、その事に嫉妬せる貴族が、彼を殺害せむと騒動をおどろかしき。

すゑ、エリザベスの圧勝。されど彼はその後、人の前にさまを見せずなりてけり』


翻訳するとこうである。


『どうやら日本には、白いだるまのような形の鳥が率いる、妖怪一味がいるそうだ。

その鳥の名前はエリザベス。自身の事をアルビノの生物兵器と名乗っており、氷、時間、重力、空間を操ることが可能だそう。

他にも、箱の中に人間の手足が生えた化け物や、すし、白い人間、本を頭に乗せたミミズなど、この世に存在するはずのない生物が、彼を慕っていた。

エリザベスは神として崇められ、裕福な生活をしたそうだが、その事に嫉妬した貴族が、彼を殺害しようと事件を起こした。

結果、エリザベスの圧勝。しかし彼はその後、人の前に姿を見せなくなってしまった』


「え、エリザベス?」


まだ続きがある。


『彼はほどを操りて、異ほどの家生みいだし、そこにゐたりき。

その異ほどの名は、[物騒ほど]。

吹き抜けの円柱のほどに、廊下が縦横無尽に伸び、風冷たく、そこなるばかりに心の壊れむ、まさに物騒なるほどなりき。

一番下は溶岩に埋め尽くされおり、落ちば果て。

あまりにも危ふければ、神にて崇むるわたりも、中に入る事たゆたふべくなりしため、エリザベスは仮の家を作りきめり』


翻訳するとこうだ。


『彼は空間を操って、異空間の家を生み出し、そこに住んでいた。

その異空間の名前は、[物騒空間]。

吹き抜けの円柱の空間で、廊下が縦横無尽に伸び、風が冷たく、そこにいるだけで精神が壊れそうな、まさに物騒な空間だった。

1番下は溶岩で埋め尽くされており、落ちたら最後。

あまりにも危険すぎて、神として崇める人々も、中に入る事を躊躇うようになったため、エリザベスは仮の家を作ったようだ』


『その仮の家のかたは、武蔵国むさしのくに浅草』


「……浅草……?」


武蔵国とは今の東京都のこと。仮の家は浅草にあるようだ。














「………もし、そのエリザベスとやらを仲間にできたら、有名になれっかな?この会社」

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