第37話、神との決着

りゅう!全力で神にほのおを‼」

了解りょうかいだ‼」

 赤司劉の異能いのう、炎により神は数百度もの高温の炎にさらされる。だが、この程度の火炎などそもそもかないだろう。それは僕だって理解りかいはしている。だからこそ僕は続く手を打つ。

 まだまだ、僕たちの攻撃はわってはいない。

「全員総攻撃‼一斉に攻撃こうげきを‼」

 天使たちをふくめ、異能者たちの一斉攻撃が神に炸裂さくれつする。だが、もちろんこの程度で倒れる神ではないだろう。

 実際、神はこの程度の攻撃で痛痒つうようすら感じていない。恐るべきことに、神にとってはこの程度の攻撃などぬるま湯にすらひとしいだろう。

 だが、分かっている。この程度の攻撃せめはそもそも攻撃にすらならないことなど最初から理解しているはずだ。

 だったら、僕はまだまだ手はゆるめない。

「アーリカ……」

 ぼそっとつぶやく。そのこえとともに、僕は一瞬にして神の背後へと転移てんいする。

 そう、これこそが本命ほんめいだ。怒涛どとうの攻撃はそもそもブラフでしかない。すべては神の意識を僕からそらすために……

 だが、やはり神も一筋縄ではいかないのだろう。転移する事をあらかじめんでいたのか僕を真っ直ぐ見ていた。

「やはりそう来たか。その程度ていどは読んでいたよ……」

 そう言って、神は剣を僕に向けて振るう。だが、それこそ僕はあらかじめ予想していたことだ。

 僕が背後はいごに転移すれば、それをねらって僕に攻撃してくるだろう。それくらいは僕だってあらかじめ予測よそくしていた。だから……

「ああ、だからこそユウキは俺が……」

「私たちがまもる」

 そう言って、僕に振るわれる剣をはじいたのは、秀とアキの二人だった。

 ああ、そうだ。僕には親友シュウと愛すべき彼女アキが居る。だからこそ、ここであきらめるわけにはいかないんだ。そのまま、僕は神にけてお構いなしに手を伸ばす。

「……くっ」

とどけっ‼」

 そうして、僕の手は神に―――

 ・・・ ・・・ ・・・

 そこは、一面万華鏡の世界だった。万華鏡まんげきょうのようにいろ鮮やかな世界だった。

 その世界の中心に、僕と神は立っている。今、世界の中心に僕と神は立っているのだろうと思う。そうだ、此処は……此処こそがこの世界の中心ちゅうしんなのだろう。この世界の真の中枢部なのだろう。

 そう思い、僕はあらためて神と向き合う。

「ついに、此処まで来たか……。まさか、この俺のクオリアにまで到達とうたつするとはさすがに思ってはいなかったぞ?」

「…………本当に、そうか?」

「?」

「神よ、万象のしゅよ、本当にこの僕がここに到達とうたつできないと思っていたのか?」

「…………」

 それはちがう。そう、僕は断言だんげんする。

 僕は、それは絶対に違うと断言した。断言できるだけの根拠があった。

「神よ、本当は薄々うすうすとでも僕が此処ここに到達できると思っていたのではないか?だからこそ、神は僕を自身の後継者こうけいしゃとして認識したのではないのか?でなければ、神ともあろう存在が僕にここまで執着しゅうちゃくする意味がないからな」

「……………………」

「それに、神がそんな存在をもとめたからこそ僕が生まれたんだろう?いや、正確には僕が生まれながらにこんな異能さいのうを宿して生まれたのは神がそう望んだからだ」

「…………やはり、そんな異能はおまえはらないか?」

「ああ、要らないね。そんな異能なんて無くても。そもそも、誰かに管理かんりなんてされなくても僕たち人間は勝手かってに生きていく事ができる。僕はそうしんじている」

 僕たち人間は、神に管理されなくちゃ生きていけない程になさけない生き物ではないはずだろう?

 少なくとも、あいつらはそうだったし。僕だってそうだ。

 僕たちは、そんな情けない奴になんてなりたくない。なり下がりたくない。

 だから……

「神様も、安心して僕たちを見守みまもっていてほしいんだ」

「そう、か……」

 そう言って、神はようやく安堵あんどの笑みをらした。

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