第34話、次元の狭間にて(割と呑気な異能者たち)

 神域までの道中。次元の狭間はざまにて僕はフユさんにい掛けた。

「えっと、フユさん―――」

「あら?お義母かあさんと呼んでも良いのよ?」

「……お義母さん、えっと?あとどれくらいで神域にきそう?」

「んー、あと主観時間で30分25秒というところかしらね……おおよそ半時間という所かしら?」

「そうですか、ありがとうございます……」

「ええ、それより貴方もほかの異能者達と会話かいわでもしてきなさい。コミュニケーションはとっても大事だいじよ?」

「そうですね。ありがとうございます」

 そう言って、僕は他の異能者達の所へと向かった。異能者達はそれぞれかたまって歓談している所だった。アキもそうだ、他の異能者達とたのしそうに笑いながら話しているのが見て取れる。

 アキと話しているのは、男の子一人と女の子一人の二人組だ。どうやら三人で固まって話しているようだ。

 そんなアキだったが、どうやら僕に気付きづいたらしい。僕へ手招てまねきしている。

 取り合えず、そっちの方へとかう。

「どうした?アキ」

「さっきお母さんと何か話していたみたいだけど、何かあったの?」

「いいや、別に。あとどれくらいで到着とうちゃくするのかをいてきただけだよ」

「そう……」

 アキは端的にかえすと、少しだけ表情をかげらせた。恐らく、一時神に操られて僕を傷付けた事をまだいているのだろう。やっぱりそう簡単に割り切れる話ではないのかもしれない。けど、何時かはその後悔をらしてやりたいと思う。

 アキの事が大好だいすきだから。あいしているから。

 そんなアキの様子を見て、どう思ったのか?傍に居た女の子の異能者が悪戯っぽい笑みで僕に向かって言った。

「あ~、駄目だめだよ?女の子はかせちゃ。特に、好きな女の子は大切にしなくちゃいけないんだよ?」

「分かっているよ。僕だってアキの事は大好きだ。だから、大切たいせつにするさ」

 そう言って、アキの肩をき締める。アキは少しだけ顔を赤くめた。どうやら照れてしまっているらしい。うん、かわいい。

 そんな僕達を見て、女の子のとなりに立っている男の子は興味深そうな笑みを浮かべそっと女の子を抱き寄せた。

「おお、そりゃ俺達もけてはいられないな。どうだ?この戦いがわったら今度こそ結婚けっこんしないか?」

「ふふっ、そうね。でもそれって死亡フラグではないかしら?」

「ははっ、死亡フラグなんてへしってやるよ」

「やだ、カッコイイ……」

 ……この二人、付き合っているのか?

 ともかく、どうやらこの二人はかなりしたしい関係らしい。それも、結婚を考える程の仲らしい。

 まあ、ともかく……

 僕は周囲をながめる。他の異能者達も、たのしげに歓談している。其処に悲壮感や緊迫感などありはしない。むしろ、楽観的な空気くうきが流れている。

 うん、思ったんだけど異能者達って割と呑気のんきだよな?大丈夫だろうか?

 そんな事を、僕はふと思った。

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