第33話、アメノトリフネ発艦

「で、どうする大将たいしょう?」

「大将はめてくれ。もちろん打って出る、神を相手に後手ごてに回ってはいけない」

「……かった。だけど、せめて何か準備じゅんびでもしておくべきではないか?相手は神なんだから油断は出来できないだろう?」

「ああ、たしかにそうだろう。けど、それにかんしては剛三さんやフユさんが今まで色々と準備してくれていたらしいからな。だから、まあいまの所僕達が準備する必要は無いだろうと思う」

 そう、準備というのなら今までずっと、剛三さんやフユさんが準備を着々と進めてきた筈だ。だからこそ、今更僕達がするべき準備は無い。

 全てのインフラが内部ないぶのみで完結可能な人工島アメノトリフネ。それは全て、文字通りこの日の為に着々と準備がすすめられてきた結果だろう。

 技術レベル的に数世代先は行っているこの人工島はまさしく、人類が宇宙うちゅうへ進出した先を見据えた技術の集大成しゅうたいせいだ。その技術を惜しげもなく流用して先の戦いに臨むという事は即ち、神がそれ程の超常ちょうじょうの存在だという証。

 なら、これ以上の準備はむしろ時間のロスにひとしいだろう。

 それを伝えると、納得したのか赤司は笑みを浮かべて頷いた。

「そうか、なら俺から何も言う事はない。ならせめて、派手はでにぶっぱなそうぜ」

「ああ、フユさん居るんだろう?そろそろ船をしてくれ」

『はいはい、了解了解———アメノトリフネ、発艦はっかんします』

 そう言って、直後。広場ひろばが、いや、人工島全体が大きくれた。

 人工島、アメノトリフネが本来の機能システムを全て発揮する時がたのだろう。

 直後、広場の奥の壁面に巨大な立体モニターがうつし出された。それは、人工島の外の光景だ。幾つものモニターに映し出された外の景色けしきは、中々混乱が広がっているのが理解出来た。

 まあ、流石にこれも想定の範囲内だろう。事実、フユさんはこんな状況でもかなり落ち着いている。いや、むしろこの状況もたのしんでいるような気がする。

 というか、よく見たら異能者の一部いちぶもかなり楽しんでいる?というより、テンションが爆上ばくあがりしているような……

 まあ、良いか……

「ともかく、これからが本番だ。全ての因縁いんねんを払拭する為に、そして平凡な日常へと帰る為にも、さっさとわらせるぞ!」

「「「「「おうっ‼‼‼」」」」」

 そうして、僕達は神の玉座ぎょくざに向けて出港しゅっこうした。

 人工島……いや、星海船アメノトリフネその本来の機能。次元航行型反重力戦艦としての機能の全てを駆使して、僕達は今地球を旅立つ時が来たんだ。

 少しわくわくしてきた、というと不謹慎ふきんしんだろうか?まあ、決してうそではないのは事実だろう。実際、少しだけわくわくしているのは本当だ。

 大丈夫だ。全て上手く行くさ。そう、僕は信じている。

 皆が一緒いっしょに居れば、きっとうまくいく。僕一人ではないのだから。きっと上手くいくだろう。

 そう、信じて。僕達は今日、母なる惑星ほしを旅立った……

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