第32話、意外とノリがいい異能者たち

 全ての真実しんじつを話し終えた。異能者のみなはざわついているものの、どうやら理解出来なかったものは一人も居ない様子だ。

 むしろ、理解したからこそ困惑こんわくしているのかもしれない。

 事実、そこかしこからどうする?とか、俺は……とか聞こえてくる。かなり困惑しているのは間違まちがいないだろう。

 さて、これからどういう反応がかえってくるのだろうか?と返ってくるならそれで構わないだろう。けど、実際じっさいはそうならないだろうと僕は考えている。世の中はそれほど甘くはないだろうし。

 さあ、どう来るのか……?そう思ってっていると。

「俺は、お前達にいていくぜ!」

 そう言って、真っ先に手を上げた男が居た。その男の顔を、僕はおぼえている。

 確か、赤司あかしりゅうと言ったか。あの後どうやら生きていたらしい。そして、それに続くように次々と手が挙がってゆく。どうやら赤司に触発しょくはつされての行動らしく、それからも次々と挙がってゆく。

 やがて、全ての異能者が賛同さんどうした。いや、まさか全員が賛同するとは流石の僕も思っていなかった。

 恐らく、集まって数人程度かとそう身構えていた。それが、何故なぜ

「えっと、お前達は本当に良いのか?これはあそびではないんだぞ?生きるか死ぬかの云わば本気の戦争せんそうに向かうにひとしいんだ。それを―――」

 僕の言葉に、赤司は片手でせいした。どうやら、彼には彼なりの言い分があるようで不敵な笑みを浮かべながら僕をじっと見ている。

 そんな不敵だけど、何処か本気を感じさせる表情に僕は思わず気圧けおされた。

「そもそも、俺はお前によってすくわれたんだ。だから、お前に付いていくのも当然の話だろう?お前達はどうだ?」

 話を振られた女の子の一人。彼女は少し考えた後でこたえた。

「私達は以前、昼間のカフェで二人が仲良なかよく話しているのを見て、そんな二人の姿を良いなと思ったからいて行くの」

「あ、俺もそれは見たわ」

「俺も俺も!」

「私も見た!良いよね、仲睦なかむつまじくて~」

 そんな半ば呑気のんきとも取れる会話をつづける異能者達。それにしても、どうやらあの時のカフェでの会話を複数人にかれていたらしい。それも、全員異能バトルロイヤルに参戦していた異能者達。

 これは、少しどころかかなりずかしい。アキも同様なのか、少し顔が赤い。

 そんな僕達に、赤司はともかくと前置まえおきをして言った。

「俺達はお前達の姿に希望きぼうを得たんだ。それだけは間違まちがいないんだ。だから、そんなお前達の選択に付いていくのに文句もんくは無いさ」

「お、おう……そう、か…………」

「ああ、そうなのさ!だから、これからよろしくな大将たいしょう!」

 そう言って、赤司は僕に笑い掛けた。他の皆も、同じように笑っている。

 うん、いやまあそれにしても……

 思ったんだけど。みな、まあノリの良い奴等やつらだよな?

 そんな事を、ふと現実逃避げんじつとうひぎみに考えていた。いやまあ、現実逃避だけどさ。

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