第23話、考察

 さて、此処ここでどうしてアキは神にあやつられてしまったのか?どうしてアキだったのだろうか?それを今、考察こうさつしてみようと思う。

 支上アキ。その異能いのうによって、異能者達から死神しにがみの呼び名で呼ばれていた異能者の少女。万物を殺傷する死の象徴たる刀を生成せいせいする異能を保有する、死の異能者。

 けど、今思えばどうしてそのような異能が彼女に発現はつげんしたのだろうか?

 此処で考察の材料ざいりょうになるのは、天使てんしがアキの母親の支上フユに言った発言だ。天使は言っていたという、支上アキは全てを死をとおしてしか見る事が出来ないと。そしてそれは全て神の掌の上の出来事なのだと。

 もし、それをそのままけ取るとしたらアキは神に何か仕掛けを施されていた形になるだろう。だが、それは一体何だ?アキは一体神に何をされた?

 初めてった時、支上アキのクオリアは僕にはどう見えていた?彼女のクオリアは真っ黒な黒墨くろずみのような死にり潰されたように見えていた。全てが死という事象を通してしか見る事の出来ないすでに死んだ世界。

 もしそれが神の思惑通おもわくどおりなのだとしたら、どうしてわざわざそうする必要があったのだろうか?どうして、アキだったのか?

 其処は全くからない。だが、きっとアキである必要があったのだろう。

 では、アキは一体何をされたのか?アキは神に何をされて操られたのか?

 もし、アキに死の異能が宿やどったのが神の思惑通りなのだとすれば。もし、神がアキのクオリアに何らかの仕掛しかけを施していたのだとすれば。

 それこそが、アキが操られた原因げんいんなのではないだろうか?

 もし、神が全てを知った上で全てを仕組んだのだとすれば。もし、本当に神が全てを掌握した上で全てを仕組んでいたのだとすれば。

 僕とアキの出会であいすら神のの上だとすれば。それならば、それこそが―――

 いや、馬鹿馬鹿しい。それこそ妄想もうそうも甚だしいだろう。もし、僕とアキが出会うべくして出会ったのだとしても。それでも僕とアキがかれ合ったのは僕達の意思いしでしかないだろう。

 僕は僕だ。そして、アキはアキだ。だったら、それは決して神に仕組まれたからではなく僕達が望んで決めた事なんだ。

 僕のやる事は決まっている。僕のやるべき事は最初から決まっている。

 全てをわらせるんだ。僕が、この手で……

 僕自身が、僕の意思で……

 そして、必ずアキはり戻して見せる。

 例え、相手が全知全能ぜんちぜんのうの神だったとしても。例え、自分が全知全能ならぬ卑小ひしょうな身であったとしても。それでも、僕がやって見せる。

 全てを取り戻して、今度こそ日常にちじょうに戻るんだ。必ず、僕自身の手で……

 それが、僕が決めた僕自身の覚悟かくごだから……

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