第21話、在住体育教師のルーシェ先生

 昼過ぎ、僕達は手続てつづきを済ませて病院をた。

「いや、それにしても何で見舞みまいに来た奴が病院でたおれるなんて事に?」

「……それはまあ、おいおいはなすよ。それよりも秋山さんはもうある程度の事情を秀からいているんですか?」

「ああ、まあな……」

 歯に物がはさまったような物言いだった。やはり、警察官けいさつかんとはいえ一般人である秋山さんからしてみれば異能者いのうしゃだの神だのという話はあまりにもオカルトが過ぎるのだろうと思う。

 まあ、とはいえ今後の件に介入かいにゅうしてくるのだとしたらこの程度は知ってもらわないといけないのだろうけれど。

 流石に何も知らないままにこれからの一件に介入してこられるのは僕達としても困る訳で……

 だからこそ、この際にられたのはある意味では行幸ぎょうこうなのだろう。行幸なのだろうけどやはり僕個人としては微妙びみょうな気持ちなのは確かだった。

 ……まあ、今はこの際どうでもいだろう。それより、今はこれからの事だ。

 僕は先程からスマートフォンをいじっている秀に目を向けた。

「……で、何か分かったのか?」

「ああ、第三星海高等学校在住体育教師、ルーシェ=エル=ハイブラッド。金髪に青い瞳をした西欧系せいおうけいの青年で生徒達からはルーシー先生とばれているらしい」

「金髪に青い瞳の体育教師……ああ、そう言えば居たなそんな教師」

 高校に入学した当初、入学式でジャージ姿が似合にあわないなと密かに思っていたのを思い出した。そうか、あの先生せんせいがルーシェ先生か。

 まあ、ジャージ姿が似合わないだけで性格自体は非常に体育会系だったのを覚えているのだけど。

 ———もし、私の授業に文句もんくがあるのなら迷わずってくれ!私が直々に相手をしようではないか!

 ちなみに、この発言はつげんに秀は密かに笑いをこらえていたのを覚えている。

 見た目は金髪に青い目をしたさわやかなイケメン。だけど、中身はかなりの体育会系の熱血教師。それがルーシェ=エル=ハイブラッド先生だった。

 しかし、どうして其処そこまで思い出せるのに今まで意識いしきに上ってくる事が無かったのだろうか?そんな事を、ふと疑問ぎもんに思う。

 まあ、相手は元とはいえ天使だ。僕達に悟られないよう偽装ぎそうする手段があるのだろうと納得なっとくするしかない。まあ、とはいえそれで納得しきれるかどうかは流石に疑問があるけれど。

 ……そう言えば。

「そう言えば、秀。お前は心をむ異能があったよな?ルーシェ先生はどう見えていたんだ?」

「……ああ、うん。どうも今思えばあの先生、心が読みにくい部分ぶぶんがあったのを覚えている。今考えてみれば結構不思議なんだが」

「……ああ」

 そう言えば、今考えてみればルーシェ先生は僕でもよく分からない部分があったのを思い出す。僕の異能は相手のクオリアを知覚ちかくする特異体質だ。けど、そんな特異体質でもルーシェ先生はよくからなかった。

 だとすれば、やはりルーシェ先生は自分の事をさぐられないよう最低限の偽装はしていたのだろうな。

 そう考えながら、僕達は秋山さんの車にり込む。

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