第19話、勝利の為の策

 目をますと、其処は治療室ちりょうしつだった。剛三さんの居た部屋とはまた別の治療室らしくこの部屋に居るのは僕一人だ。

 一体どれほど時間がぎたのだろうか?状況次第では、呑気にている暇なんて無いだろう。起き上がる為に、身体からだに力を入れる。だが、その瞬間背中から胸にかけて鋭い激痛がはしった。

「ぐっ……ぁ……‼」

 起き上がる事が出来ず、ベッドの上で僅かに悶絶もんぜつする。どうやらまだ傷が塞がり切ってはいないらしい。胸に巻かれた包帯からじわりと血がにじんでくる。

 激痛に悶絶していると、治療室の入口から看護婦ナースが入ってくる。僕の様子に驚いた看護婦が慌ててけ寄ってくる。

「な、何をしているんですか!勝手に身体をうごかさないで下さい!ほら、傷口が開いているじゃないですかっ!」

「っ、けど!僕にはこんな所でのんびりしている……ひまなんて、っ⁉」

「ああもう、これ以上動くと本当に死んでしまいます!黙って此処で大人しくしていて下さい!」

「ぐっ、でも僕は……」

 看護婦とめている間、恐らくそれを聞きつけて来たのだろう。秀が治療室へと入ってきた。僕の様子を見て、ほっと溜息をいた後で僕に言った。

「とりあえず今は黙って安静あんせいにしていろ。何があったのかはこれからゆっくりと聞くからさ」

「し、しかし秀!僕は今のんびりとしているひまなんて……」

「そんな身体じゃあ、どの道ろくに動く事なんんて出来ないだろう?安心しろ、一応方法が全く無い訳じゃないからな」

「……方法?」

「ああ、だから今は大人しくゆっくりとしていろ。一体何があったのかをその間に教えてくれよ」

 そう言って、秀は僕をベッドにかしつけた。

 恐らく、秀なりに僕を気遣きづかっているのだろう。けど、おそらくはそれだけではないだろうと思う。恐らくは方法があるのも本当ほんとうだろう。

 だからか、僕は大人しくベッドに寝た。そして、医者いしゃを呼びに出た看護婦を他所に僕は秀に僕の体感した出来事を話した。

 ・・・ ・・・ ・・・

「…………そう、か。かみめ、剛三さんのむすめを実質人質に取ったな?」

「ああ、だから僕はこれから神と戦う為に動かなければならないんだ。早く動かないとアキが―――」

「だから、今はてって。大丈夫だ、方法が無い訳じゃないから。それよりも今はお前がこれからどう動くつもりだったのか、そのさくを聞かせて貰えないか?」

「……まだ、細かい部分はめていない。けど、一応考えている部分ぶぶんもある」

「それは?」

 尋ねる秀に、僕は話し始めた。

 僕のかんがえる、策とも呼べない策を。

「まず、人工島アメノトリフネの全てのシステムを掌握しょうあくする。剛三さんの言っていた事をそのまま聞く限りでは、全ての異能いのうに振り回される者達を解放するのが目的だったんだろう?だったら、異能バトルロイヤルで死亡した異能者も含まれている筈」

「……ああ、アメノトリフネには人工島内で死亡しぼうした異能者を蘇生そせい処置するシステムが組み込まれている。もちろん、それだけではないがな……」

「そして、異能バトルロイヤルに参加さんかしていた全ての異能者達と話し合い全ての事実と共に協力をあおぐ」

「だが、それでは協力きょうりょくしてくれない者達だって出てくるかもしれない。それこそ、最初のお前達のような者だってるかもしれないぞ」

「ああ、そうだろう。だけど、其処は何とかして見せる」

 其処は何とかして見せる。例え、どれほどの数を相手あいてにしようともそれでも神を相手にするならこの程度はこなさなければならないから。

 その程度、熟せなければ全知全能のかみは超えられない。

「まだ、細かい部分は全然詰めてはいないけど。それでも今度は僕の方から仕掛けてやるんだ。僕の異能の全てを駆使しても、神の予測ぜんちを超えてみせる」

 そう、僕は決意と共に宣言せんげんした。

 神の全知すべてを超える為、今此処で全てを話す訳にはいかないけど。それでも必ず僕は神を上回うわまわって見せる。

 さくで神を超えて見せる……

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