日常24(歳三、権太他)
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この日、歳三は朝から靴を洗っていた。
バケツに水を汲み、じゃぶじゃぶと。
秋葉原のダンジョンで靴が人の血肉やよく分からない油、粘液、体液などで汚れてしまったからだ。
何事もまずは足元から。
身だしなみはしっかりと。
歳三の脳裏に友人、金城権太にまつわるとあるワンシーンが想起される…。
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『あら!?あらあらあら?
そんな事を言いながら権太は頬を突き出し、激昂した時生戌級探索者は拳を振るう。しかし勢いよく殴りかかったはいいものの、権太は見かけによらぬ機敏さを見せ、背後に回り、時生の靴紐を踏みつけて背中を軽く押した。
『ファファファファ…足元がお留守ですよ時生さん。分かりましたか?このように転んでしまうわけです。ちなみに人型モンスターなどはこの辺につけ込んでくるので、普段からしっかりと身支度を整えておくことですね…』
ねちねち嫌味ったらしい権太の注意はしかし、言っている事だけは正しく、更に…
『ほら、立ち上がってください』
権太から差し出された手を弾こうとした所、ぐっと握りしめられてしまう。
──つ、つええッ…!
ぎりりと握りしめられるその握力は時生の表情を歪めさせ、ニタニタと嗤う権太の表情との比較は彼我の実力差が暗に示しているかの様であった。
『ほうほう、我慢できましたか。少し強く握ったつもりなんですが。素質自体はあるのかもしれませんね。メンタルがタフなのは良い事です、これからも頑張ってくださいよ』
最後にそんな事をいってリリースする。
これがまたよくできたもので、最後に承認欲求を軽く満たしてやることで体育会系的な人間関係をうまく構築しているのだ。
権太などはこの一連の人心掌握手順に『DV彼氏プロトコル』などと言う酷い名称を付けている。
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くん、と歳三が靴の匂いを嗅いだ。
「臭い!臭ぇな…なぜ…?」
愕然とした歳三。
そして何を思ったか、タバコを取り出して火を点け、中敷きに煙をふきかける。タバコの匂いで足の匂いを押し流そうという肚であった。
この余りにもしょうもない振舞いは、とても47歳の成人男性のモノだとは思えないのだが、これが概ね佐古歳三という男の普段の顔である。
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変な時間に起きたので馬鹿みたいな更新をします。15分で書きました。
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